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悪妻の定義とは?  作者: 尾木 愛結
本編
21/26

< 20 >

 クリスティアン様との濃密な夜を過ごした翌朝、マルヴァレフト公爵領の領都サンタヴオリ中心街の外れにある領主館へとやってきた。


 外門は土台が石製のブロックが積まれた形で、その上に鋼鉄の柵で囲んでいるオシャレな門である。

 門の入口にはマルヴァレフト公爵家の家紋が刻まれ、本邸に比べたら小規模な敷地であるが、さすが公爵家の別宅と言わざるを得ない。


 門の隙間から見える領主館は、日本の明治時代に建てられた洋館のような佇まいである。



「素敵な邸ね」


「手狭だが家族で過ごすには十分な広さだろう」


「あーあぅ」


「スティファンは気に入ったようだ」


「あら、わたくしも外観だけで気に入ったわ」



 今日は家族三人だけの外出。

 本来ならクリスティアン様の侍従二人と、専属護衛騎士三人。


 私もユリアと専属護衛騎士の二人を伴って行動するのだが、今日だけは家族団らんで過ごす予定なのだ。それにスティファンの外出デビューも兼ねている。



「中に入れるのかしら?」


「勿論、鍵を持ってきている」



 クリスティアン様が空間収納から鍵束を取り出し、門の鍵を開けると私の手を引いて門の奥へと歩き始めた。無人のままだと言っていたが、庭の手入れをしているのか全く荒れていない。



「あら? もしかして魔道具か付与魔法?」


「庭の管理は魔道具がオートマで作動している。花壇の花の水も魔道具が行っているはずだ」



 クリスティアン様の言葉に頷く。

 この邸の庭を含む敷地内には防犯を兼ねた結界が張られ、血族以外の者が立ち入れない仕組みとなっている。本邸もそうだが、邸を建てた者の技術の凄さに溜息しか出ない。


 防犯を兼ねた結界に、庭を整備する魔道具。

 おそらく邸内にも魔道具と付与魔法が施されているのだろう。


 クリスティアン様のエスコートで邸内に入る。

 玄関フロアはロビーのように広く、真正面には二階へ続く階段。


 フロアの左側には待合室に応接室、それとダイニングにダンスフロアが続く。

 右側には化粧室っぽい感じの小部屋に、使用人用の休憩室なのか小さなテーブルと三脚の椅子が置かれている小部屋。


 その隣に厨房と食糧庫があり、玄関フロアの正面奥には日当たりの良いガラス張りの部屋。

 ここでお茶を飲んだり、家族団らんで過ごす部屋っぽい。


 二階は主に夫婦の部屋と子供部屋らしき部屋があるのみ。



「どうだ?」



 邸の中を一通り見て回ったが、この場所を食堂だけに使うのは勿体ない。

 二階の部屋を従業員用の寮に改装し、一階の部屋を全て店舗に使うのもアリだと思う。



「そうね……二階部分は従業員用の寮に改装して、一階の部屋は食堂と軽食の店舗に分けて、余った部屋は茶葉や洗髪剤といった雑貨の店舗、そしてアールトネン伯爵領の布や糸の店舗も作りたいわ」


「魚介を使った料理の食堂は分かるが、軽食とは?」


「軽食で焼き菓子と炭酸水を提供するのよ。勿論、炭酸水だけではなく、お茶も宣伝するわ」


「リューディアの頭の中では決定事項なのだな」


「この素敵な建物の中で食事とお買い物が出来るのよ。マルヴァレフト公爵領にいながら、アールトネン伯爵領産の生地と糸が購入できるとなれば、地元のご婦人だけではなく観光客も利用して下さると思うわ。それよりも、この国で初めての商業施設となって、ますます茶葉と炭酸水の評判は上がるわよ」



 まだ商業施設がない。

 商店街や露店が集まるマルシェの存在はあるが、一つの建物に飲食店や雑貨といった店舗が入ったものは、この国では今のところ存在していないのだ。


 店舗が密集しているので買い物するには不自由しないけど、買い物エリアと飲食店が離れている為、買い物の途中で休憩するには、場所を移動しなくてはいけないのが不便といった所だろう。

 この邸が商業施設になるなら、利便性を重視する人にとって重宝するに違いない。



「妻がご機嫌で何よりだ」


「ふふふ」



 邸の中の構造を頭に叩きつけ、改築する部分を練る必要がある。



「ずっと使われていなかった邸を存分に活用してくれ」


「こんなに素敵な建物なのに……ずっと使われていなかったのが勿体ないわね。別邸というだけあって、立地場所も良いけれど。わたくしが別邸を建てるとしたら、長閑で自然が溢れる場所が良いわ」


「そういった場所が良いのか?」


「ええ、スローライフを目的とした場所だもの」


「スローライフ?」



 クリスティアン様にとって聞きなれない単語なのか、意味が分からないといった表情で聞き返された。



「スローライフと言うのは……執務や忙しい日常から離れて、普段とは違う長閑な場所で時間を気にせずゆっくり過ごす事かしら?」


「初めて聞いた言葉だ。そうだな、初めて聞いた言葉だがスローライフは素晴らしいと思う。日常から離れてゆっくり過ごせる場所と時間を作りたいものだ」


「例の件が落ち着いたら家族旅行も良いわね」


「そういえば二人で旅行をした事がなかったな。二人で外出しても公務か社交シーズンの交流のみか」



 クリスティアン様は公爵位を引き継ぎなしで受け継いだばかりだったし、私も執務に慣れるまで時間を要した上に、実家の事業に新規商品の開発。

 更に幻の薬草を発見してから多忙を極めたのだ。

 そんな中、呑気に旅行する時間すらなかったのである。



「二人きりでの旅行は、子育てが終わってからの方が時間が取れるわ」


「そうだな。爵位を子供に譲った後に、二人で色んな場所へ旅行に行こう」


「楽しみね」



 別宅を出てから領都の方へ移動した。

 ちょうど昼時だったので、領都で人気の高いレストランへ足を運ぶ。


 レストラン街は肉料理がメインの店舗が多く、魚介を扱っている店舗が見当たらない。肉料理の店舗ばかりなのは、魔獣が豊富という事が大きいのだろう。

 この世界は魔獣の肉が中心である為、家畜と言えば牛型魔獣や魔鳥が一般的である。

 魚介も魔獣の類なので漁師は最高ランクの冒険者並みじゃないと無理な職業だ。


 飲食店が立ち並ぶ道筋から逸れると、市場やマルシェのエリアとなっている。野菜専門店に果物専門店、小麦粉を始めとする穀物専門の店。

 肉屋が大半を占めているのは気のせいではない。

 ほぼ塊肉しか売られていないが、一般客用に小分けにして売っている店舗も存在している。


 その間にパン屋があるけれど、パン屋で売られているのは大まかに二種類しかない。黒パンと呼ばれる日持ちがするパンと、日持ちしない主食用の白いパンのみ。


 パンが二種類しかないのは物足りない。

 普通の白いパンも美味しいけれど、私はフランスパンといったハード系のパンを好む。アールトネン伯爵領にいるパン職人を呼び寄せて、こちらにもパンを広めてみようか。


 そんな事を考えながら、昼食を取るレストランの中へ入った。

 店内は落ち着いた雰囲気の内装で、利用している客の装いを見ると富裕層が多い。

 貴族が利用するような豪華さではないが、質素ながらも上品な内装でゆっくり食事が楽しめそうな空間だ。


 こちらへ向かって歩いてきた従業員の一人が、クリスティアン様に深々と頭を下げる。身なりから想像するに、この店舗の支配人か責任者だろうか。


 外見だけでは判別つかないが、それなりに年齢を重ねた紳士に見える。



「領主様、こちらへどうぞ。個室へご案内いたします」


「ああ、すまない。案内を頼む」



 クリスティアン様と彼は顔見知りなのだろう。

 彼に案内された個室は豪華な部屋だった。店内の内装と似た雰囲気ではあるが、壁には美しい絵画、天井にはシャンデリア、窓傍にある台の上には立派な花瓶に生けられた美しい花々。


 床も至高の作品と言わんばかりの見事な絨毯が敷かれている。

 テーブルや椅子も見事な細工が施され、成金のような派手さは一切なく、洗練された上質な調度品が豪華さを演出しているのだ。この店のオーナーはセンスが良い。



「ハンス、領主様と呼ぶのは止めろ」


「お客様の前でしたので……クリス、久しぶりだな」


「父上と兄上の葬儀以来か?」


「多分……クリスも慌ただしかっただろうし、こっちの事は気にするな。そして、彼女が嫁さんだろ?」


「ああ、彼女は俺の妻でリューディアだ。喪が明けた早々に結婚したが、それと同時進行で爵位継承と総隊長の引継ぎで時間が取れなかった」


「そうだろうな。弟から話は聞いている」


「リューディア、ハンスはパーヴァリの兄でムルタラ伯爵だ。道楽で始めたレストランの経営者でもあるが、自領の領主もしているから昼食時しかいないんだ」


「クリスから紹介して頂きました、ハンス・ムルタラと申します。今後は当店をご贔屓にして頂ければ幸いです」



 ハンスから丁寧な挨拶をして貰ったので、私もそれに返す。



「初めまして、リューディア・マルヴァレフトと申します。こちらは長男のスティファン」


「ははは。クリスにソックリじゃないか!」


「ハンスの方は子が三人もいて、全員がハンスにソックリと聞く」



 クリスティアン様より年上だが、幼馴染の騎士団長の身内となれば親しいのも頷ける。



「ハンスは俺の教育係でもあったんだ。今は道楽でレストランのオーナーをしているが、かつてはシルヴォラ山の周辺を担当していた騎士団長でもあり、結婚を機に引退してしまったのは残念に思っている」


「妻との結婚の条件が騎士団を引退する事だったからな。オレも引退しなくてはならなかった事を悔しく思うが、その分、こうしてレストランのオーナーになれた。たとえ道楽でも好きで始めた事だから楽しくやっている」


「そうか」


「それでーーお客様、オーダーは如何なさいますか?」


「この店の人気メニューを頂こう」


「あの、スティファンが口に出来そうなメニューはありますか? なければ……そうね、パンがゆを頂けたら助かります」


「離乳食は扱っておりませんが、私が腕を振るってお作り致しましょう。これでも自分の息子三人の食事を作っていましたから、小さなお子様のお口に合うメニューを作る事は可能でございます」


「まあ! とても素晴らしいわ」


「俺とリューディアの大人用の食事と、息子の食事を頼む」


「かしこまりました」



 ハンスが個室から去った後、私は空間収納からスティファン用の椅子を取り出した。前世では普通にあった幼児用の椅子である。これは職人に説明するのが難しく、どうしても欲しくて創造魔法で作り出したものだ。


 この椅子をスティファンが使用しなくなった後に、工房へ持ち込んで生産する予定である。


 間もなくしてワゴンに乗せられた料理が運ばれてきた。クリスティアン様の友人ではなく、このレストランの給仕係の男性だろうか。清潔感のある装いに洗練された身のこなし。


 彼の動き方で教育が行き届いているのが分かる。

 こういった場所では給仕係にも上品さが求められるのだ。利用する客は主に貴族か富裕層の平民。落ち着いた雰囲気に見合わない従業員は、確実に嫌厭されるだろう。


 テーブルの上にカトラリーを並べ、ワイングラスには水と食前酒が注がれる。

 まだ食事が出来ないスティファン用に、オートミールっぽい物が入った器が置かれた。



「こちらは、お坊ちゃま用にオーナーがお作りになられました。素材はカボチャをすり潰したものをミルクで液状にし、大麦を柔らかく煮込んでおりますので食べやすいかと思います。お味の方はオーナーのお子様のお墨付きですので安心して下さい」


「この子は好き嫌いはないと思うのだけど、オーナーのお子様のお墨付きなら安心ね」


「はい」



 給仕係はパンが盛られた籠をテーブルの中央へ、前菜とスープに続き肉料理を順に私とクリスティアン様の目の前に音を立てずに置いた。

 スープから漂う匂いに食欲が刺激される。



「お客様、お食事をお愉しみ下さい」



 給仕係は丁寧な挨拶をしてから退室していく。

 無駄な動きが一つもない。


 

「クリスティアン様、ここは素敵な店ですね」


「ああ、ゆっくりと食事が楽しめる数少ない店だ」



 クリスティアン様は開店当時から訪れていたようだ。

 単独で来る事もあれば、家族や騎士団の同僚たちと共に利用していたらしい。個室があるので内輪だけで食事が楽しめるのは利点だ。


 領主一家が外食をしようものなら、領民も気になって注目するだろうし、食事をする方も領民の目が気になって落ち着かない。たとえ他人の目に注目されるのに慣れていても、食事の時くらいは落ち着いて楽しみたいものだ。


 クリスティアン様と他愛もない会話を楽しみつつ、目の前の美味しい料理を堪能する。

 スティファンも食事が美味しいのか、始終ご機嫌だった。


 美味しい料理で腹を満たした後、再び領都の街を三人で歩いて回る。

 雑貨屋でスティファンの玩具を購入したのち、領主館の方まで戻ってから空間魔法で本邸へ移動した。


 腕の中で眠るスティファンは夢の中らしい。

 あまり手のかからない子だが、これから成長していくうちに自我が芽生えたり、あちこち動き回って探すのに苦労するかもと、もうすぐ訪れるだろう近い未来が楽しみである。








 領主館の改装は色々と練った。

 まず一階部分は食堂と軽食ーー喫茶店の飲食店を広く使いたいので、ダンスフロアだった部屋とサロンを大改造に至る。厨房から近いのが場所の決め手だ。


 玄関フロアの中央にあった階段を封鎖して、その階段をディスプレイ用の展示場にする。

 待合室と化粧部屋だった場所はお手洗い場に、応接室は生地と糸といった手芸用品の店、その隣の部屋には洗髪剤を始めとした生活用品と雑貨の店に改造した。


 二階は従業員用の寮として、部屋を一定の広さに区切って五部屋から十五部屋に増やし、お手洗いと浴室は共同スペースになってしまったが、従業員も住むなら個室の方が落ち着くだろう。


 基本的に独身者向けの個室なので、家族がいた場合は近場の土地にアパートメントを建てた方が良さそうだ。

 ここを開店する前に料理人の教育、そして手芸用品と生活用品の従業員スタッフの確保をしなければ。


 アールトネン伯爵領にいる工場の人間を教育係にするので、特に問題はなさそうだが、料理人に至っては魚を捌けないと話にならないので、ウイット漁港に住む人を数人スカウトしたい。


 内装にもまだまだ手をかけたいと思っている。

 従業員の寮となる個室の内装や家具も揃えたい。やはり寮は家具付きの方が便利だ。特に若い世代であれば家具を買えるほど資産に余裕はない。


 平民は早くて十歳から働きに出る。

 一般的だと十二歳か十三歳の年齢から働き始めるが、家族が多くて家計に困っている場合は別だろう。理由は色々とあるが、大体は体が思うように動けない祖父母がいたり、病弱な親や幼い兄弟を養う為だろうか。


 医療費は意外と高額なので、病人がいれば家計を助ける為に子供も働く。

 私の店舗で働く場合は、教養も身について欲しいので人材は慎重に選びたい。


 執務机に置かれている領主館の図案を眺めながら、頭の中で考えを巡らす。独身寮はともかく、家族がいる従業員や、ゆくゆくは家庭を持ちたい従業員の為のアパートメントの構想を練らなければ。


 支店長は貴族籍を持っている人物にしたい。

 これは難癖をつけてくる相手に対応するには、貴族籍を持っている方がスムーズに解決するからだ。最低でも子爵位で理想は伯爵位だろう。



「ねえ、ユリアの意見も聞きたいのだけど」


「わたくしの意見ですか?」


「ええ……子爵か伯爵の知り合いはいない? それと新婚家庭が暮らすような家は、どういった間取りが理想かしら?」


「貴族籍の知り合い……この邸の中にゴロゴロいるじゃないですか」



 確かにゴロゴロいるけれど、公爵家に仕えている人間をスカウトするわけにはいかない。



「商業施設で働いてくれそうな貴族籍の人材が欲しいのよ」


「そういう意味ですか。それなら伯爵領とか、奥様のご友人に相談した方が宜しいのでは?」


「それも考えたのだけど祖母様に注意を受けたわ。手芸店の方はアールトネン伯爵領の工場から人材を集められたけど、生活用品と雑貨店の店長、それと食堂と軽食の店長は公爵領の人間が理想なのよね」


「確かに……薬草茶と炭酸水は公爵領の特産品ですし、魚介はウイット漁港に住んでいる領民か料理人じゃないと無理ですね」


「手芸店での商品はアールトネン伯爵領の特産品を販売するから、祖母様も販路開拓で許可して下さったのよ。他は公爵領産の商品だから、下手な人材を雇えないし……」



 祖母からはっきりと言われたのだ。

 アールトネン伯爵領産の商品は伯爵領の人間を引き抜いても良いが、マルヴァレフト公爵領産の商品を扱うなら、自領の人間を雇うのが領主夫人としての務めらしい。


 マルヴァレフト公爵領へ来て一年半だが、公爵領にいる主要な貴族との交流をした事がないのだ。

 邸内で働いている使用人は貴族籍も多いが、彼らの家族構成については知らない部分が多い。



「旦那様の侍従のルオッカ伯爵令息、タピオラ子爵令息、事務官のコルッカ伯爵令息、ラムサ子爵令息、ヌオラ男爵令息の兄弟はどうでしょう? 彼らは兄弟が多いですし……その中の誰か一人くらいは、現在の仕事がイヤで職を探している可能性はありそうです」


「ユリア、素晴らしいわ! そうよね、兄弟が多いなら新成人の人もいるかもしれないわ」



 まずはクリスティアン様に話を聞いて面談をしよう。

 邸内で働いている使用人をスカウトするのではなく、彼らの兄弟に視点を向けるに至らなかったのは悔しい。



「あとは家庭を持ちたいと考えている従業員や、既に家庭を持っている従業員の寮かアパートメントについて。貴族籍なら使用人がいる事を前提に考えないといけないけれど、平民の場合は家族の人数によって広さが変わるじゃない? これはアパートメントを新たに建てた方が良いのか、空き家を見つけて買い取った方が良いのか悩み所なのよ」


「わたくしの場合は広さに拘りはございませんが、夫婦の部屋と子供部屋が二つほどあれば十分かと。あまり部屋数が多いと掃除するだけでも大変ですし。貴族は使用人を雇うので掃除や料理はしませんが、平民は自分の手で行いますから」


「そうよね……貴族籍なら小ぶりな邸を与えた方が良いわね。使用人の部屋も必要だから、アパートメントで生活するのは無理だわ。領主館の傍は街の外れにあるから、そこに公園とアパートメントに貴族用の邸を作れば解決しそうね」


「アパートメントは平民専用ですか?」


「部屋の造りは夫婦の部屋と子供部屋が二つ、ダイニングルームはリビングと兼用して貰ってキッチンとパントリー、あとはお手洗いと浴室かしら?」


「それで充分だと思います。子供は二人で一部屋は当たり前ですから」


「家族が増えて手狭になった時に、また考えれば良いわね」



 ユリアと会話をしながら忘れないようにメモに記していく。

 先に従業員をまとめる店長と主任を決めないといけないが、食堂の料理長も決めておかないとメニューを教えられない。



「料理長の知り合いを紹介して貰うか……ウイット漁港でスカウトをするかの二択ね」


「奥様、ウイット漁港へ行くならご一緒いたします!」



 ユリアが目をキラキラさせながら訴える。

 食いしん坊キャラじゃないのに、魚介に関する事になると目の色を変えるのが微笑ましい。



「勿論よ。ユリアを置いて行ったら怖いもの」


 

 私はくすくすと笑みを零しなら頷く。

 後日、ユリアを共にウイット漁港へ行く予定を立て、ちょうど昼食の時間になったので執務室を後にしたのだった。


 





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