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悪妻の定義とは?  作者: 尾木 愛結
本編
19/26

< 18 >

 本日は私ーーリューディア・マルヴァレフトの十八歳の誕生日である。


 十六歳でクリスティアン様と結婚して、マルヴァレフト公爵夫人になってしまったが、伯爵令嬢から公爵夫人として立場が変わったくらいで基本的な事は変わっていない。

 十七歳で嫡男のスティファンを産み、現在は一児の母親となったが毎日が充実している。


 特に誕生日の夜会を開くわけではないが、公爵邸の使用人たちが張り切っているのだ。



「奥様、少し相談が……」



 この邸の料理長を務めるルーカスが言葉を濁す。



「珍しいわね」



 彼に促されて厨房の奥にある貯蔵庫へ足を進める。そこには公爵邸で提供する料理の食材に保存食、貴重な調味料のストックが置かれている前世でいうパントリーだ。

 保冷や冷凍が必要な食材には魔法付与がされている冷凍冷蔵庫、常温保管で可能な食材は木箱の中にある。

 ニンニクやハーブ類は壁の木枠に吊るされ、棚の上には瓶詰にされた調味料が並んでいた。


 ルーカスは私を冷凍冷蔵庫へ誘った後、その扉を開く。



「まあ、見事に何もないわね」



 ルーカスが開いた冷凍冷蔵庫の中が空っぽだった。

 その隣にあるもう一つの冷凍冷蔵庫の中を確認すると、中にはぎっしりと種類別に肉が詰め込まれている。

 


「もしかして空っぽなのは魚介かしら?」


「その通りです」


「クリスティアン様も魚介類がお好きだから……わたくしが在庫の確認を怠っていたのが原因ね。貴方に迷惑をかけてしまうなんて申し訳ない事をしたわ」



 サルメラ大森林への視察は定期的に行う必要があるので、魔獣肉の在庫は常に豊富な状態だ。

 ユリアも魚介が好きでウイット漁港へ出向く事はあるが、公爵邸から近いサルメラ大森林と比べてウイット漁港へ向かう頻度は低い。


 私の空間収納に食材は残っているが、それを出してしまうと実家への土産に困る。



「ユリアは知っていたのかしら?」


「いえ、仕事の事は話題にしません」


「そうね……クリスティアン様の許可が取れ次第、ウイット漁港へ向かうわ」



 公爵邸の料理人が食材に関して相談をするのは、ウイット漁港で捕れた魚介を流通していないのが理由である。同じ公爵領であるが魚介は痛みやすく、肝心の調理法を知らなければ焼くだけの干物しか流通しない。


 生で食べられる魚の種類やイカにタコは、ウイット漁港の街では当たり前だが公爵邸のある領都サンタヴオリ地には馴染みがないのだ。知られているのは乾物か干物の類だろう。



「ルーカスが特に欲しいのは何かしら?」


「そうですね、タコと貝類は多くても問題ありません。いえ、余りそうな程に多いくらい必要です。あとは白身魚と赤身の魚は同じ量が欲しいですね。これらはフリッターやグリルに合う魚ですので、邸内の使用人たちに人気がある料理なんですよ」


「それは嬉しいわね! それじゃ、ウイット漁港へ向かう為にも、張り切ってクリスティアン様にプレゼンしなくちゃ」


「助かります」



 ルーカスと別れた後、クリスティアン様の執務室へ向かう。



「クリスティアン様、少し時間を頂いても良いかしら?」


「リューディア」


「奥様、こちらへ」



 クリスティアン様の執務室はとても広い。

 二人の侍従と事務官が三人いるのと、更に若執事であるトピアスや護衛騎士も室内に控えているので、私の執務室とは比べようもない大所帯と言える。


 トピアスに促されて執務室の入口付近にあるソファに腰を降ろす。


 執務室の奥は資料保管室と給湯室がある。

 トピアスは給湯室の方へ向かい、ワゴンに茶器セットを乗せて戻ってきた。


 ゆっくりとお茶を飲みながらクリスティアン様の手が空くのを待つ。

 それぞれが自分の役割の為に動いている。執務に必要な資料を揃える者、処理された書類を整理する者、クリスティアン様へ渡す領民の嘆願書を清書して書類にする者。


 人数が多いのに執務室の中は紙を捲る音、文字を書くペンの音しか聞こえてこない。

 静寂に近い静けさだ。


 私の執務室にはユリアしかいない事が多い。

 専属護衛騎士であるエーヴァとイェンナの二人は、基本的に騎士団の駐在所にいる。私が外出をする時は傍にいるけれど、ほとんどユリア一人いれば済む。


 家政婦長のヘルガは邸内の備品の管理と、下級使用人の教育が主な仕事だ。

 侍女頭のミカエラは、まだ幼いスティファンについて貰っている。乳母一人だけでは心配でミカエラに頼ってしまった。メイド頭のウルスラは邸内の掃除の管理で、他のメイドが掃除した場所を隈なくチェックするだけで重労働だろう。


 他の貴族夫人より侍女やメイドの数が少ないのは自覚している。

 あまり大人数を従えるのも面倒なので、私は実家にいた頃からユリアと護衛の二人しか傍に置かなかった。

 そんな事をつらつらと考えていたら、目の前にクリスティアン様がいる事に驚く。



「物思いに耽っている姿も良いが、目の前にいる俺に目を向けて欲しいな」


「クリスティアン様……執務中にお邪魔して申し訳ありません」


「それを承知で訪れたのだから、急ぎの問題だろう?」


「はい。これからユリアを連れてウイット漁港へ向かいたいのです。わたくしの管理不足で魚介の在庫が空になってしまい、料理長から先ほど話を聞いて確認して参りました」


「ああ……在庫が空になっていたのか」



 クリスティアン様がぽつりと呟く。



「わたくしの空間収納に在庫はありますが、実家のアールトネン伯爵家に渡す予定でしたので。クリスティアン様は魚介がお好きですし、侍女のユリアも魚介に目がないので補充したいと思います」


「そうだな、まだ領都では魚介の流通が少ないままというのがネックになってしまったな。調理法を知れば流通もスムーズになるが、まだ手をつけていなかったのが悔やまれる」


「わたくしが店舗を開業しても宜しいのであれば、調理スタッフを見つけて立ち上げたいわ」


「リューディア考案の飲食店なら繁盛するだろう。ウイット漁港近郊だけではなく、この領都でも魚介料理が浸透するのは喜ばしい事だ」



 そんな事を言いながらクリスティアン様が私の耳に触れる。

 彼が通話専用の魔道具に魔力を注ぐ。



「執務が立て込んでいてリューディアと共に行けないのが残念だ。それとコイヴレフト侯爵の行動についての詳細が分かってきた。父と兄を消しただけでなく、自分の娘まで亡き者にしたのは許されない行為だ。その話は夜になってから知らせよう」


「では……わたくしは今夜のクリスティアン様のお腹を満たす分の魚介を集めて参りますわね」


「それは楽しみだ」



 クリスティアン様が私の頬に口づけると、執務の続きをする為に机の方へ戻った。

 私はソファから立ち上がり、トピアスにテーブルの上を片づけるように告げてから執務室を去る。その足でユリアを呼びつけ、空間魔法でウイット漁港へ移動した。


 いつもなら護衛の二人を引き連れて行くのだが、今回はユリアと二人の方が動きやすい。

 必要な買い出しを済ませたら戻る予定なので、護衛を連れて人数が増えると無駄な時間がかかってしまう。



「奥様、今回は大量にストック致しましょう!」


「ええ、そのつもりよ」



 ユリアは大好きな魚介にテンション爆上がりである。

 浜辺の方では屋台が連なり、食欲をそそるような香ばしい香りが漂う。



「タコと貝類は余るほど欲しいそうよ」


「分かります! タコは色んな料理に合うし、貝は料理の素材だけではなくスープの味を広げる素になるので、それらは魚より大量に必要となります」


「先に早めに店じまいをする所から見て行きましょう」



 海沿いに沿って連なっている露店の店じまいは早い。そういった露店の方が新鮮な魚を扱っている。

 ウイット漁港の中心部にある街には大きな市場があり、そこは夕方まで営業しているので最後に回す。


 ユリアと一緒に歩いていると、店じまいを始めようとしている男性が目に入った。



「ユリア、あの露店」



 私が言い終わらないうちにユリアが走り出す。

 露店の店主とユリアが話合っている。



「奥様、ここにある商品は状態が良くないようです」



 店主が困った表情をしているので、こっそり鑑定で状態を確認してみる。

 魚の状態が悪いというのは傷がついた物であり、素材自体は悪くない。こういったものは身を解した調理に向いているだろう。


「ご主人、ここにある魚を全て頂いても? ただ表面に傷があるだけで素材自体は悪くないわ。これはしぐれ煮にするから問題なく調理に使えるから気にしないで」


「本当ですか?」


「ええ、正規の価格でも問題ないわ」


「有難い……本当にありがとうございます」


「ご自宅用の物は省いて、売っても良い物だけ頂くわ」



 私の言葉に店主が涙を浮かべながら清算を始める。

 魚の大きさは小ぶりだが、前世のマグロ並みのサイズだ。全部で三十八の魚を空間収納へ入れていく。

 これだけ買っても所持金の金貨五枚にも満たない。

 魚一匹で銅貨七枚の価格設定のようだ。



「有難う、また来るわね」


「はい、お待ちしております」



 その場を離れて次の露店へ向かう。



「奥様、タコとイカがあります!」


「ついでに味見をしましょう」



 露店先でイカ焼きをしている。



「ご主人、イカ焼きを二つ下さい」


「はいよ、毎度あり」



 木製の串に刺して焼いているので、とても食べやすい。



「このイカ、とても美味しいわ!」


「タコは沢山欲しいですが、イカも良いですね」


「ご主人、在庫は如何ほど?」


「そうですね……タコは五十くらいで、イカは八十ほど残っています」


「それを全て頂くのは難しいかしら?」


「とんでもございません。こちらとしては非常に助かります」


「では、頂くわ。清算をお願いしても?」


「有難うございます!」



 露店の店主が在庫を抱えて戻ってくる。木箱の中には新鮮なイカとタコが積まれていた。



「タコが四十九でイカは八十二あります。全部で銀貨三枚と銅貨九枚ですね」


「では、銀貨四枚。美味しい串焼きを頂いたのだもの」



 タコとイカを空間収納へ納め、イカ焼きを味わって口にする。

 ユリアとイカ焼きを堪能してから、再び次の露店へ足を向けた。



「ここは貝専門の露店ですね。ハマグリやホタテが見事です」



 大振りな貝が鎮座している露店の前で、ユリアと料理の話で盛り上がる。



「ご主人、ここにある貝を全て頂くのは可能かしら?」


「ここにある商品全てですか? 結構な量がありますが……」


「大丈夫よ」


「奥様は空間収納の持ち主なので、持ち運びに関しては問題ないと思います」


「そうですか!」



 店主の表情が和らぐ。



「ハマグリ二十三、ホタテ十六、アサリ八十二、サザエ十二、ミル貝四十一、ムール貝三十七、イタヤ貝六十二、トリ貝四十六、マテ貝五十三、タイラ貝二十八、バイ貝二十五、アワビ八、ホッキ貝二十四、パーナ貝十三、ホンビノス貝三十七で……お買い上げ金額は銀貨六枚と銅貨五枚になります」


「ホタテとサザエ、それにタイラ貝とバイ貝は、中央の市場でも取り扱っているかしら? まだ十分な数には満たなくて……貝類を大量に欲しいと料理長に言われているのよ」


「それでしたら、左側の端にある露店も同じような種類の貝を扱っているので、そこを確認した後に市場へ向かえば安心かと思います」


「そうね! 助言をありがとう」



 露店の店主に貝の代金を渡してから、案内された露店へ向かった。

 大振りの貝はともかく、小ぶりな貝の数が足りない。小ぶりな貝はダシに使うので、数が少ないと料理長がメニューを考える時に困るだろう。


 指定された露店を覗いてみると、先ほどの露店より商品が充実していた。

 他の露店よりも場所が離れている為、客足がここまで伸びないのかもしれない。



「ご主人、ここにある商品を全て頂いても?」


「あ! マルヴァレフト公爵夫人ですよね?」


「わたくしの事をご存知でしたか?」


「勿論です。奥様が廃棄する貝殻を回収して下さるおかげで、露店の売り上げが良くなったんですよ」


「まあ! そういえば……ここでしたか」



 調理済みの貝殻は作物の肥料の素材になるのだ。

 貝殻の処分に悩んでいると言うので、回収ボックスを預けて定期的にアールトネン伯爵領へ運んでいる。破棄する貝殻でも使い道があるので、きちんと料金を支払うのは当たり前だ。


 この場合、数というよりキロ単位の重さで料金価格を設定しているらしい。

 こちら側は貝殻の処分に困り、アールトネン伯爵領では肥料の素材が欲しいのだから、相互でウインウインの関係だ。



「破棄する存在の貝殻だったのに、それが数週間分の売り上げになるとは想像も出来なかった。これも奥様の知恵のおかげです。それで今回は食材としての貝をご所望ですか?」


「ええ。邸の料理長に頼まれて魚介の買い出しに来たのよ。特にタコと貝類は豊富に欲しいと言われているの」


「そうでしたか。タコは……三十八あります。貝類は陳列しているのが全てになりますね」


「ここにはタコがあるのね! 勿論、タコも全て頂くわ」


「ありがとうございます! 本日の売り上げだけで数週間分になるので助かります」


「それは光栄だわ。ホタテとサザエの数が足りなくて困っていたのよ」


「ホタテは五十七あります。サザエの方は二十六ですが、やはり少ないですか? 他だと大体八十ずつ揃えていますが、数の方は大丈夫ですか?」


「それぞれ八十ほどあるのね! とても助かるわ。ホタテも十分な数ね」


「お役に立てたようで良かったです」


「邸にいる使用人も含め、魚介料理が好きな人が多いのよ。その代表がわたくしの侍女のユリアね」


「わたくしは奥様と初めてウイット漁港へ来て以来、魚介料理の虜になりました」



 店主とユリアの話を聞いていると、ここの露店での売り上げが悪い原因を察した。



「もしかして、ここは立地が悪いのかしら?」


「そうですね……割と距離が離れているので、ここまで足を向ける人は少ないかと」


「まだ計画段階なので詳細は話せないけれど、もし定期的に店舗へ卸す話がきたら受けて貰える?」


「勿論です!」


「その話が正式にきたら魚も欲しいの」


「どんな魚ですか?」


「白身と赤身の魚を同じくらい」


「ありますよ」


「え?」


「魚は自分の趣味で捕まえているので、ここには置いていませんが裏にあります。客に欲しいと言われないと出していませんが」


「奥様、邸に戻ったら計画を進めましょう!」


「そうね!」


「あの?」


「わたくしが住む領都サンタヴオリ地では、ウイット漁港の魚介の流通が少ないのよ。商会ブースに並んでいるのは乾物か干物がメインで、新鮮な魚介を取り扱っていないから、わたくしが直接こうして買い出しに来るしかないの」


「旦那様が奥様考案の飲食店を始めたら繁盛するのでは?と、そこから話が盛り上がったんです」


「それは……こちらとしても願ってもない話です。もし実現するなら奥様の為に全力で尽くします」


「わたくしも話だけで終わらないように計画を練るわ」



 露店の店主は父親から店を受け継ぐ前は、ウイット漁港にある騎士団に所属していたらしい。更に詳しい話を聞いた所、公爵邸にいる料理長ルーカス・プルックの長兄だった。

 そういえば彼はウイット漁港の出身である。



「ユリア……彼はあなたの義理兄じゃない。どうして教えてくれなかったの?」


「ルーカスと結婚する時に挨拶へ伺ったけど、彼の両親としか顔合わせをしていないので……兄弟の話は聞いていましたが、わたくしは式を挙げていませんし会う機会もありませんから存じませんでした」


「そうだったのね。悪かったわ」


「彼女が弟の妻になった女性でしたか。こちらこそ存じあげずに申し訳ありません」


「改めてユリア・プルック、わたくしの専属侍女をしております。彼女の実家はスヴェント子爵家。わたくしの実家であるアールトネン伯爵家で代々執事や侍女を務める家系ですの。わたくしの結婚を機に実家から離れましたが、彼女の忠誠は信用に値しますので安心なさって下さい」


「そうでしたか。こちらこそ結婚を諦めていた弟が素敵な女性と結ばれたと聞き、両親ともども安心していたのです。私の家も代々マルヴァレフト公爵家に仕える家系ですので似たような立場ですね」


「ルーカスのご実家であるなら、ますます計画を練らないといけないわね」


「わたくしは味見担当を務めさせて頂きます」


「ふふふ、ユリアは本当に魚介料理が好きなのね」


「彼と結婚した理由がソレですから」


「ユリアは魚介料理を作るルーカスの腕に惚れこんで口説き落としたわね」


「弟を口説き落とすとは……その手腕は素晴らしい」


「そうだわ。連絡をする場合、どちらへ送った方が良いのかしら?」


「私は基本的にこの場にいる事が多いですが、月に一度は実家に顔を出します」


「では、こちらに魔法便を送るようにするわ」



 名残惜しいが買い物の途中なので、そのまま露店を離れて別の場所へ移動する。まだまだ買い足りない物があるので、他の露店を見ながら買い足していく。


 予算は金貨五枚分なので不足分を買うだけの余裕がある。



「そろそろ中央市場の方へ向かいましょう」


「そうですね、ここでしか手に入らない調味料や保存食も欲しいですね。娘への土産も見て回りたいです」


「わたくしもスティファンとユアンにお土産を渡したいわ」



 私とユリアはウイット漁港の中央市場へと瞬時に移動した。

 まだ時間が午後を過ぎたばかりのせいか、人であふれ返っている。どの売り場も人をかき分けないと商品の確認が出来ない程だ。



「ねえ、ユリア。少し休憩がてらお茶にしない?」


「はい、奥様。この混雑は歩きにくいですね」



 ちょうど目に入った軽食の店へ入る。

 市場の人込みと比べて店の中は閑散としていた。運良くランチタイムを過ぎていたおかげで、ゆっくりと過ごせそうである。


 喉を潤す為のお茶と焼き菓子を堪能した後、再び市場へ戻って買い物を済ませた。

 邸へ戻ると料理長のルーカスの元へ向かう。



「ルーカス、待たせてしまったかしら? 食材を出す場所は貯蔵庫の方が良いわよね?」


「先に白身の魚を一尾とタコを三つ頂けますか?」


「そうね。下準備に必要なのね」


「我儘を申して申し訳ありません」


「いいのよ、気にしないで頂戴」



 ルーカスに指定された調理台の上に魚を一尾、そしてシンクの方にはタコを三つ置いてから貯蔵庫の方へ向かった。冷凍冷蔵庫の方に貝類を入れた後、魚は時間停止の付与がされている拡張袋へ。

 袋の中へ入れた魚の種類と数をメモしなくても、袋の中に手を入れると頭の中に詳細が浮かぶようになっているのだ。

 魔法って本当に便利だと思う。


 この日は私の誕生日を祝う為に、料理長が腕を振るってくれたのは言うまでもない。

 夫のクリスティアン様からは素晴らしい贈り物を頂き、実家の家族から魔法便で誕生日プレゼントの山が届いた。


 クリスティアン様からのプレゼントは、お揃いの腕輪で複数の魔法付与が施されている一品。

 実家から送られてきたプレゼントに関して、勿論、お茶会や夜会で自分が広告塔になって宣伝する物だった。母が元気になったおかげで祖母は張り切っている。


 六十八歳とは思えないほどパワフルだ。

 祖母に引っ張られるように母も自分の事業を始め、社交と両立しているらしい。父はそんな母を応援しながら、相変わらず研究に専念しているようだ。


 兄は義理姉と良い関係でいるらしく、義理姉は次の子を妊娠して現在は四週目に入っている。

 双子の姉たちは結婚してから実家へ手紙が届く程度だが、それぞれ幸せな結婚生活を送っているようだ。このまま平穏な日常を送れるこそが、私が求めていた誕生日プレゼントと言える。


 


 


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