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六月の半ばに入ると領地から王都へ移動してくる貴族が増え始め、元から王都に住んでいる貴族たちと茶会や夜会に勤しむようになっていた。
いよいよ姉二人を伴っての茶会。
マリアンネの茶会の件では、姉二人に対して厳重注意だけで済ませた。
双子の姉カタリーナの方は、祖母の再教育の成果が出ているようなので、そのまま現状維持を続けて欲しい。
祖母が王都へ滞在している間だけ、姉二人も伯爵邸に滞在する許可を与えている。
あくまで居候という立場でしかないので、祖母が王都を引き上げる際には姉も領地へ戻るか、再びキーヴェリ子爵邸へ移動するかの二択だ。
姉たちにとって初めての高位貴族しか出席しない茶会である。
祖母が目を光らせて準備をしている事だろう。
その茶会だがアーヴィッコ侯爵夫人が主催を務めているけれど、ニスカヴァーラ侯爵夫人とエルヴァスティ公爵夫人の二人が、今回の茶会を面白がって企画と趣旨を考えたらしい。
私はお二人の顔は知っているが、個人的に話をした事がなかった。
クリスティアン様の友人の奥様というのも、前回のアーヴィッコ侯爵夫人の茶会で初めて知った事である。
「リューディア、とても綺麗だ」
私の頬を指で撫でながらクリスティアン様が呟く。
ようやく長期に渡る領地の見回りが終わり、クリスティアン様の仕事が落ち着いたのだ。
魔獣を討伐する騎士団の隊長職を、パーヴァリ・ムルタラ伯爵令息へ全権を移行させ、クリスティアン様の仕事は領主の執務と領産商品の販路事業である。
私と共同で亜空間で栽培している薬草を使った新たな商品。
絶滅種で希少価値のある薬草は、サルメラ大森林の魔獣討伐ポイントである湖周辺に自生している。
それを定期的に見回って回収しているので、不法侵入をしていた人物はさぞ悔しがっているに違いない。
おまけに結界を三重にし進入を阻止している上に、監視用の魔道具まで設置しているのだ。
この薬草がクリスティアン様の父親と兄が亡くなった原因だろうと予測している。
クリスティアン様は極秘で調べているようだが、私も協力できる事があれば尽力を尽くしたい。
これまで領主の引継ぎや見回り、騎士団隊長の引継ぎも重なって多忙を極めていたが、ようやく午後のお茶の時間を二人で過ごす余裕まで出来た。
それ以外の雑務とも言えなくはないが、半年後に結婚式を挙げる予定なので、招待客の選別やドレスの発注にお披露目の夜会の準備があって、結婚式が終わるまで細々とした雑務は終わらない。
クリスティアン様が本邸に帰宅するようになり、彼に相談できるようになったのは嬉しい事だ。
本日の茶会用のドレスは綿ローンで作ったドレスである。
柔らかく透ける素材を利用し、青銀色の生地を三枚重ねて作ったのだ。濃い色を下にして上は淡く染めた生地で、更にその上にはレース生地を重ねて縫ったものだ。
無地の生地の上にレース生地で覆う事により、柄が入っているように見える。
ドレス生地は実家のアールトネン伯爵領産に限るだろう。
装飾品はマルヴァレフト公爵領の鉱石が一番だ。
品質が良く加工しやすい。
鉱石の土台は全てプラチナであり、石の色は紫紺色で統一している。
化粧はユリアの力作と言っても過言ではない。
まだ十六歳という若さを強調した薄化粧だが、公爵夫人らしく上品な仕上がりとなっている。
「クリスティアン様に褒めて頂けて嬉しいですわ」
「俺はリューディアと結婚できて幸せ者だ」
「まあ、ふふふ」
「旦那様、奥様、そのくらいで……お時間が迫っていますよ」
ユリアの言葉で我に返る。
今から茶会へ行こうとしていた事を思い出す。
「美しく着飾った妻を送り出すのは辛いな」
「クリスティアン様も後からいらっしゃるのでしょう? ご招待されているのがクリスティアン様と親しい方の奥様と聞いてますわ。奥様をお迎えに旦那様方もご挨拶されるのかしら?」
クリスティアン様も別の集まりに招待されている。
既に正装に着替えているクリスティアン様の装いは、軍服っぽいデザインの服装だ。黒い生地に肩と胸には青銀色の飾り紐が、左胸の部分にはマルヴァレフト公爵家の家紋が刺繍されている。
クリスティアン様の正装姿は滅多にお目にかかれないので貴重なのだ。
こちらは男性だけの集まりのようだが、おそらく集まる予定の顔ぶれも高位貴族の中でも上級だろう。
「そうだなーー俺の周りは独占欲が強い者ばかりだ。妻を迎えに行くのを口実に茶会へ乱入し、その傍を離れたがらないだろうな」
「まあ! そんなに素敵な旦那様たちなの?」
「俺以外の男を褒める言葉は控えるように」
「クリスティアン様……わたくしの旦那様が一番素敵だわ」
「それは光栄だ」
玄関ホールでイチャイチャとしていると、ユリアと護衛騎士の二人が咳払いをする。
「あの、そろそろ向かわなくては遅刻なさいますよ」
「そうね! クリスティアン様、それでは後ほど」
「ああ、楽しんで」
私は三人と一緒に空間魔法で王都のアーヴィッコ侯爵邸へ移動した。
前回とは違う庭園の景色に溜息が零れる。
この時期に咲く花々で彩られ、とても美しい光景だった。
アーヴィッコ侯爵邸の専用転移陣へ到着したと同時に、執事が茶会の場所まで案内をしてくれる。
ほとんどの貴族の家に転移陣はないが、侯爵家以上の貴族の邸には空間魔法で訪れる人間が多々ある為、アーヴィッコ侯爵邸にも専用の転移陣があるのだ。
これは前回の茶会の時に場所を確認していたので把握済みである。
私やクリスティアン様のように空間魔法で訪れる人間は少ないが、魔鉱石に転移魔法を付与した魔道具があるので、資産のある高位貴族たちは馬車で移動するより魔道具で移動するのだ。
転移魔法が付与されている魔鉱石の大きさにより、人間数名から馬車ごとの移動が可能である。
祖母も魔鉱石で移動しているのだが、基本的に馬車に乗って移動する事が多い。六十後半という年齢の事情を考慮し、馬車の座席に座って移動した方が体に負担がかからないのだろう。
アーヴィッコ侯爵家の執事を先頭に、私とユリア、その背後に護衛騎士の二人が進んで歩く。
美しい白薔薇のアーチを潜り抜けた先に、茶会の場があった。
本日の茶会の趣旨は姉二人に高位貴族の茶会の基本を学ばせること。
そのついでにアールトネン伯爵領産のドレス生地のお披露目、そしてマルヴァレフト公爵領産の鉱石と炭酸水。
サルメラ大森林の奥地に炭酸水が湧き出る場所があったのだ。
まだ炭酸水は社交界で広まっていない。新たな事業として炭酸水に目を付け、ノーマルな炭酸水に果汁を入れたジュースを、この茶会で紹介するつもりなのだ。
「ごきげんよう、アーヴィッコ侯爵夫人。ご招待して頂き光栄ですわ」
「マルヴァレフト公爵夫人、ごきげんよう」
主催者のアーヴィッコ侯爵夫人を見つけて挨拶を交わす。
本日の彼女の装いも素敵だ。淡い翡翠色のドレスに濃淡の琥珀色の刺繍糸で、無地の生地に家紋の花をモチーフに華やかなデザインに仕上げている。
華やかなデザインのドレスだが、彼女が身にまとえば上品さと貞淑さが漂う。
彼女の隣にはニスカヴァーラ侯爵夫人とエルヴァスティ公爵夫人が立っている。王女殿下と王太子妃殿下の姿がないので、最後に登場する予定なのかもしれない。
それでも目の前の二人は大物なのだ。
「マルヴァレフト公爵夫人、こちらはニスカヴァーラ侯爵夫人、そしてエルヴァスティ公爵夫人」
「初めましてエルヴァスティ公爵夫人、ニスカヴァーラ侯爵夫人」
「初めまして、マルヴァレフト公爵夫人。主人から話は聞いているわ」
エルヴァスティ公爵夫人がにっこりと微笑む。
彼女は確か十二歳だったはず。彼女も青銀色のドレスで身を包み、美しい金髪を後ろで一つに結い上げ、大粒の真珠で縁どられた髪飾りをつけている。
どこか落ち着いた印象を持たせる青灰色の瞳。
立ち姿だけでも洗練されている。
「初めまして、マルヴァレフト公爵夫人。わたくしも主人から聞かされているわ。あのマルヴァレフト公爵の心を射止めた夫人にお会いするのを楽しみにしていたのよ」
ニスカヴァーラ侯爵夫人が悪戯っぽい笑みを浮かべながら告げる。
彼女の年齢は二十三歳。
藍色の落ち着いたデザインのドレスに、淡い金色の髪はハーフアップにされ、髪を飾る髪飾りは金細工に藍色の石がはめられたものだ。陽に反射して煌びやかである。
「そうそう。マルヴァレフト公爵夫人の茶葉が美味しいと評判ですわよ。そのお茶を頂くと体調が良くなると聞いているわ。わたくしの主人もお茶を愛用しているのよ」
ニスカヴァーラ侯爵夫人の旦那様は、王宮で宰相補佐をされているはずだ。
宰相職となれば体力より精神面の方が疲労感は強いだろう。
「あら、わたくしの主人も同じだわ。特に体力の消耗が激しい時に頂くと疲れが取れるみたいだわ」
エルヴァスティ公爵夫人の旦那様は、マルヴァレフト公爵領と並ぶ広大な敷地面積を持つ領地のご子息。彼の父親が現役の為、まだ爵位を継いでいないが実務はクリスティアン様と似たようなものだろうか。
「あの茶葉に秘密があるんですの?」
カトリーナ
二人同時に問われ、軽く頷いて答える。
「茶葉に使われている原料に体力の回復と、微量ですが癒しの効果があります。その原料を見つけたのは偶然でしたが、マルヴァレフト公爵領の騎士団員たちの回復に役立てそうと思いましてーー」
「まあ、とても素晴らしい考えだわ!」
「本当ね」
他人に認められると嬉しくなってしまう。
ほっこりした気持ちでいたら、姉二人の姿が視界に入ってきた。
二人の装いは祖母が仕立てさせたドレスだろうか。
姉カタリーナは淡い金色のドレスに白の総レースをあしらったもの。
妹カトリーナは蜂蜜色のドレスに琥珀色に染めた総レースをあしらったものを着て、二人とも珍しく清楚な装いだ。
見知った顔が一人もいないせいか、どこか落ち着かない感じに見える。
「あら、例の方がいらっしゃいましたわね」
「ああしていると上品なお嬢さんなのに……勿体ないわ」
高貴なご婦人たちは姉二人を見ながら話が進む。
私は三人に場を離れる旨を告げて姉二人の方へ向かった。
「お姉様」
「リューディア」
「リューディア、いるなら早くに声をかけなさい」
姉二人は主催者への挨拶もまだ済ませていないのに、私の顔を見たらいつもの調子に戻ってしまったようだ。
「まだ主催のアーヴィッコ侯爵夫人へ挨拶を済ませていないのでしょう? あちらにいらっしゃるわよ。それと手土産は執事か侍女へ渡したのですか?」
私の言葉に姉二人が同時にきょとんとした顔を浮かべる。
「手土産? 茶会の終わりに頂くお土産の事かしら?」
「いえ、主催者の方へお渡しする品ですよ。まさか何も持たずに参加されたのですか?」
祖母が何か持たせると思っていたが間違っていたようだ。
「どういう事?」
「招待されたのだからお土産を持参するのがマナーよ。祖母様から何も言われていないの?」
「あ! 出がけに何か言っていたような気がするわ」
「それよ! 馬車に乗せたまま? それとも持って来ていないの?」
「どうだったかしら? タリ―は覚えている?」
「トリ―が話を聞いていなかったから、わたくしが執事に馬車へ運ばせるように告げて積んでいるわ」
手土産を馬車へ積んでおきながら、その存在を忘れていたようだ。
「お姉様、通常であれば茶会の場へ来る前に、主催者の家の執事か侍女へ先に渡しておくのがマナーですよ」
「これまで手土産なんて茶会の帰りに頂く事しかなかったわ」
「そうよ。これまで何も持たなくても何も言われなかったわ」
「それは言われなかったのではなく、言えなかったーーの間違いですよ。これまでお姉様たちに意見を言えるような立場の方が主催されるお茶会へ参加された事がないからです。招待を受けられたら手土産を持参するのは、主催される相手の爵位は関係ありません。招待をされてもてなされる側なのだから、手土産を持参するのは基本的なマナーですよ。そして主催側も手土産を持参された方にお礼として土産を渡されるのです」
「……知らなかったわ」
「わたくしも」
「こんな事は六歳の時に参加する王宮の茶会で学んだはずですよ。そして学院の初等科で学ぶ淑女教育の基本でしたわよね? 中等科でもおさらいとして試験があったと思うのですが……」
「覚えていないわ」
「そうね、全く記憶にないわ」
姉二人の言葉に深い溜息をつく。
「まずは……馬車から手土産を運んで渡さなくちゃいけないわ」
「この邸の執事に頼む事は出来ないの?」
「他家の馬車の荷物を使用人が勝手に持ち出せると思っているの? お姉様が指示を出さないと運べないわよ」
「もっと早くに言ってくれれば……」
「祖母様は出かける際に言ってらしたと思うわよ。それを聞いていなかったお姉様の落ち度ね」
「それより……ここの主催者って誰?」
「アーヴィッコ侯爵夫人よ。あちらにいる……翡翠色のドレスを着ている方が主催者の方ね。その傍にいる方たちが、エルヴァスティ公爵夫人とニスカヴァーラ侯爵夫人」
「ちょ……大物じゃない。そんな茶会だなんて知らなかったわ」
カタリーナが雰囲気に押されたように弱気な発言をする。
「さっきお話したけど、とても気さくで優しい方だったわよ」
「他に話やすそうな方はいないのかしら」
「アーヴィッコ侯爵夫人は、お姉様の学院時代の同級生じゃない。話しやすそうと言えば……カイヴァント伯爵夫人とコティペルト伯爵夫人のお二人かしら?」
「一人も面識した覚えがない相手だわ……」
「アーヴィッコ侯爵夫人はライアン伯爵家の令嬢よね? 彼女なら学院時代に面識はあるけど……まさか侯爵夫人になっているとは思っていなかったわ」
カトリーナが不満げな声で呟く。
おそらくクレーモラ侯爵令息を追いかけまわしていた時に、アーヴィッコ侯爵夫人と面識したのだろう。
「マルヴァレフト公爵夫人、それと……アールトネン伯爵令嬢のお二方、ごきげんよう」
カイヴァント伯爵夫人とコティペルト伯爵夫人の二人が連れだって現れた。
二人のドレスは色違い。
前世の日本で言う双子コーデというものだった。
薄茶色の無地の生地にクリーム色の総レースが合わさったドレス姿のカイヴァント伯爵夫人。淡い緑色の無地の生地に生成り色の総レースが合わさったドレス姿のコティペルト伯爵夫人。
髪型もお揃いで二人の仲の良さが伺える。
「ごきげんよう、コティペルト伯爵夫人、そしてカイヴァント伯爵夫人。素敵な装いね!」
「ふふふ、ありがとう」
「ご、ごきげんよう。初めましてコティペルト伯爵夫人にカイヴァント伯爵夫人」
「あらあら、初めましてではございませんが……ごきげんよう」
コティペルト伯爵夫人が意味深な笑みを浮かべる。
確か、最初の婚約者のケラネン伯爵令息で、二人はコティペルト伯爵夫人と面識があったはずだ。
「今から馬車へ置いて来た忘れ物を取りに向かう所でしたの」
「そうだったのね。お引止めして申し訳ないわ」
「それでは、少し失礼しますわね」
姉二人を促して馬車の方まで急ぎ歩く。
私の背後にユリアと護衛騎士の二人が続いているが、姉二人の侍女と護衛の姿がない。
「お姉様の侍女と護衛は?」
「馬車に残っているわよ」
お茶会の場まで付き添わないなんて、侍女として有り得るのか?
護衛も対象である主人の傍にいないのは護衛と言えないだろう。
「お姉様たちは侍女と護衛に付き添われていないのですか? 普通の令嬢であるなら、茶会の場に侍女が付き添うのが当たり前なのですがーー護衛も同じですわよ」
「いつも侍女と護衛は馬車に残っていたわ。これまで一度も茶会の場まで付き従った事はないわね」
「侍女として務めを果たしていないじゃないですか。護衛にしてもそうだわ。何の為の護衛なのかしら……これは仕事放棄と取っても良い案件よね」
「どうして? 侍女と護衛に付き従われるなんて邪魔じゃない」
姉二人は意味が分からないといった風だった。
これまで下位貴族の茶会しか参加していなかった弊害だろう。
一般的な下位貴族は邸内で回る使用人が主で、外出先まで付き従う侍女や護衛を雇う余裕がない。これが裕福な家であれば使用人の数も多いと思うが。
「そういえば……祖母様とリューディアは、常に侍女と護衛が侍っているわね」
「それが当たり前なのです。万が一の備えとして、侍女と護衛は常に主の傍にいるものですよ。これが当たり前じゃないのが下位貴族。裕福な家であれば侍女と護衛は付き従っています。令息であれば侍従と護衛ですね。アールトネン伯爵家は使用人の数も多いし、お姉様たちの専属侍女や護衛騎士もいるのに……彼らに仕事をさせていなかったのかしら?」
「常に自分の傍に侍女や護衛が侍っているなんて窮屈じゃない?」
「逆に彼らが傍にいない方が不自然だわ」
同じ家に生まれてきたのに、なぜ姉二人と認識が違うのか。
「この際だから侍女と護衛にも仕事をさせたら良いわ。その為に同行してきたのだから、お給金分を働かせないと彼女たちの為にならないわよ」
「ええ、そうするわ」
姉たちが乗って来た馬車まで辿りつくと、中で休憩していたらしい侍女と護衛に手土産を持たせ、アーヴィッコ侯爵家の執事を見つけて土産を渡してから茶会の場へ戻った。
姉二人の傍に侍女が二人と護衛が二人。
彼女たちもようやく本来の仕事が出来てホッとしているようだ。
茶会の場へ戻るとゲストとして訪れた、アイナ・ハーヴィスト王太子妃殿下と、ヘルミーナ・クヤラ王女殿下の姿が視界に入る。王太子妃殿下は鮮やかな青銀色のドレスを纏い、王女殿下は青碧色のドレスを纏っていた。
ドレス生地は虹色に輝く素材で、これまで見た事もないような高級品。
装飾品は自分の瞳の色の鉱石。
さすが王族といった装いである。
最高級品で誂えたドレスに装飾を纏い、その場にいるだけでオーラが違う。
「な……王太子妃殿下と王女殿下?」
カタリーナが二人の存在に気づいて息を飲みこむ。
私もこの二人を間近で見るのは初めてである。王太子殿下と国王陛下にはデビュタントの時に、一度だけ挨拶を交わした事があるくらいだ。
その時に王太子妃殿下と王女殿下は近くにいなかったのである。
「お姉様たちは先に主催者であるアーヴィッコ侯爵夫人へ挨拶ですよ」
「そうだったわ……」
王族の登場に気おくれしているようだ。
「アンタはこういった茶会ばかり出ていたの?」
「さすがに王族が参加されている茶会は今回が初めてですが、現在いる方たちが主催の茶会へは良く参加します」
「そう……」
姉二人は足取り重くアーヴィッコ侯爵夫人の方へ歩き出す。
「ごきげんよう、アールトネン伯爵令嬢のお二人」
「ごきげんよう、アーヴィッコ侯爵夫人。本日のお茶会へのご招待、有難う存じます」
姉二人が綺麗な礼をする。
体幹がしっかりした綺麗な礼だった。
祖母の努力の賜物だろう。
二人がアーヴィッコ侯爵夫人へ挨拶の言葉を交わしたのを合図に、本日の茶会が幕を開いた。




