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第6話 ピンチはチャンス、じゃあ大ピンチは?

覚悟ガンギマリです。

 ガロウウッド達は近づかずに尻尾をこちらに思い切り振った、その瞬間に何かがこちらに飛んでくる。


「ッ!遠距離攻撃もできるのかっ!............?」


 ヒカリは幸い反射的に寝そべり全て回避した、が後ろからミシミシと音が鳴る異変に気づく。

 それが放ったモノが当たった場所から棘のある木が食い込む様に生えていた。触れたモノや周囲から魔力を吸い取り生える種だ。


「種か、身体に埋まれば体内が裂かれるっ、って危ねぇ!」


 気を取られている隙に一匹が飛びかかるが剣で下から大振りに切り上げて攻撃を防いだ。


「がう゛うっ!」


 被弾した雄は跳ね上がって着地すると少し後退りする。


「ほんの少し樹液みたいなの漏らすだけでピンピンしてやがる............なあ?多分、この辺はお前達の縄張りなんだろ?出てっくからよ、命のやり取りはやめよ?」


「ぐら゛あ゛!ばぅ!ばうば!」 「「!がる!うぅ゛!」」


 聞き入れる様子は無く雌が両サイドに回り、雄が同時に正面から噛みつきに来る。


「縄張りは命と同義の獣に説得は無理か............」


(チクショウ、魔力のアドバイスを思い出せ............)


 ヒカリは手に己の魔力を流すイメージをする、カートリッジに己の魔力を込めれたならば何かしら起きる筈だと信じ。


「おおっ!カートリッジの中に赤いモノが渦巻いているっ!なんとかなれーっ!!」


 そう言いながら前方3方向から迫る魔物に向けて薙ぎ払う様に斬りつけた。その瞬間刃が触れた瞬間に小規模の爆発が起こり互いに少し吹っ飛ぶが、彼女は地面に剣を突き刺し立て直す。獣は想定外の爆音と衝撃に怯む。


「これが魔力を単純に放出すると爆発するって言っていたやつか、見たところ刃は無事で助かった............」


(ただ今の私程度ではデカめのクラッカーを眼前でやったに過ぎん、次の手を............)


 そう考えた彼女はカートリッジに再装填するとすぐ様剣を、怯んでいる魔物に向けて投擲した。


「爆ぜろッ!」


 「ぐばぁ!?」 「ぐぎゃ!」 「ぶる゛!」


 剣を中心に爆発し3匹を離れ離れにすると一匹に向けて走り出す。


「あとは一匹ずつ鉄拳制裁タイムだ!」


 また好きな漫画のセリフを言う程には余裕がある彼女はガロウウッドの首を掴むと地面に押し付けて走り始めた。鉄拳制裁はどこに。


「摩擦で削れろッ!!!」


「ぐりぃぐりぃいい!!」


 必死にもがく雄は抵抗虚しく、秒速50メートル近くの人間離れの速度で顔面をザラザラの地面に押さえ付けられ悶絶。そのまま目の前にあった巨大な岩にぶつけると岩は砕け魔物は埋もれ生き絶えた、摩擦熱で遺体に火が点く。それを見て悲しそうな顔をする彼女は元の位置に戻る為に振り返る。


「............痛い殺し方してごめんな。あと2匹は............えっ?」


 その前にはガロウウッド2匹とを容易く掴み捕食する木の巨人がいた、その眼を見ればわかる。人型だが意思疎通は不可能。


 バリボリバリッ!バリィ............ガキッゴキッ!!


 遠方の戦闘音の他に捕食音が鳴り響く。


「こいつァ創作物で言うところのトレントか............?どう見たって序盤の化け物じゃねぇよ............」


 アッシュよりもデカい、木の葉を服の様にしている刺々しい化け物は興味がヒカリに移った。


「バゴギバルゥ............」


「なんか言っているけど友好的じゃねぇな............攻撃する気無いからどっか行ってくれよ............」


(クソッ、剣を拾ってから攻撃すりゃあ良かった............奴の足元の近くにあっては拾えんぞ............)


 情けない事を言いながら次の手を考える。


(さっきの燃えた魔物の遺体を利用するか?いや、あの木質からして火は燃え移らないだろう............ダメだ、私の足の速さに賭けて剣を拾うッ)


 そう判断してからすぐ様に魔物が反応する前に走り出す。


「取るッ、がぁッ!足が攣ったっ!」


 過負荷で足がもつれて転んでしまう、転がって魔物の近くに寝そべってしまった瞬間に彼女は思い切り蹴り上げられた。


「ズダガ!」


「ぐふっ............」


(い、痛いっ。息が出来ない、苦しい............)


 そのままアッシュの家にぶち当たり彼の家はもう廃墟状態に。ただ彼女は運が良かった、飛ばされた先は武器庫部屋だった。


「ゴフッ............これでも私の血はほぼ流れないか、嬉しいねぇ。すごく頑丈(タフ)だな。............!ここは武器庫!何か拾わなければっ............」


(ダメだ、基本はグリモアだしタイトルが読めない............っ!デカ過ぎて気が付かなかったがこれ槍か?)


 オークでも持つのは大変そうな槍を担ぎ魔物に向けて投擲する。


「穿てッ!」


(一か八かだ、だが金属製だ。貫ける筈に違いない............)


「ギギクガッ!!シャッ!!」


 魔物は自分の身体に穴を開けて回避するとまた樹木が折り重なった身体に戻る。槍は後方の地面にぶつかり折れて転がっていく。


「なっ、なんだよ!反則だろッ............ん?うわっ!」


(槍脆いし避け方キモいし勝ち目無いし............?これさっきの種か?)


 相手の無法さと無力さに憤っていると手元に種子が何粒か転がってきた。ヒカリはそれを慎重に触ると魔力が吸われて発芽した。


「これは使えるぞ、足止めして逃げれさえすれば良い。情けないがショベルだがシャベルだか知らねえが倒さねえといけねぇ奴がいるんだっ」


 己の魔力を流すイメージの反対を想像して掴むと発芽せずに持つ事に成功。


「や、やった!ってもう目の前まで来てるッ!!同じ木同士仲良くしやがれッ!」


「グギギグガガ!!?」


 崩れた家の中で魔力を注げるだけ注いだ種子は爆発する様に発芽し木の魔物に絡みつく。


「グガゴゴゴッ!ギガ!?」


 己の身体とガロウッドの木かわからなくなり己の身体までも傷つけてしまい困惑する魔物。それを好機と見て足を引き摺りながら剣を回収しに行く。


「はぁはぁ............あの俊足は鍛えないと持続して使えねぇ............剣を拾って2人の元に............うっ!??執着する奴は嫌われるぜ............」


 木の魔物は動けずとも多数ある腕を伸ばし彼女の足に絡みつき肌を突き刺そうとしてくる。だが枝木は刺さらない彼女自身は焦り過ぎて気づいて無いが頑丈な為に傷を負っていない。経験の無さからの判断ミスをしてしまう。


「し、仕方ないっ足ごと魔力で吹き飛ば............」


(この世界なら足の再生も出来るはずだし腹が裂けるより痛くは無い筈、それに最悪魔法製の義肢とかあるだろう............)


 その刹那、巨大な円盤が目の前を通り木を切断した。ライラの斧の変形斧だ。


「逃げろォ!!」


 叫びながらライラが走って来る。その後方には血塗れのアッシュもいた。


「そいつはドルボルだっ!森のドンであり木々の長!勝つのは厳し過ぎるッ!前方に向けて走れ!」


 そう言いながら大破した家を回収しつつ追い討ちの拘束魔法放つアッシュ。


「チェーンバインド!大好きな地面とキスしてろ」


 そう言うとドルボルの足元から次々と鎖が出現し地面に倒れる様に縛りつけた。


「グググ!!」


「走れっても足壊しちゃってさ............2人だけでって............うおっ!ライラ!??」


「ぐらあ゛あ゛!!失わない゛っ゛もう゛ッ゛」


 怒鳴りながらそのまま巨躯のヒカリ担ぎ走り続ける。アッシュは後方で何か唱えながら後を追っている。


「奥義ッ炎獄と鉄鎖の応酬(アヴェンジチェーン)............これで周りの木々も燃えて、優先順位が俺らから森の消火に移るぞっ」


 魔物は大量の燃える鎖に拘束された、そして鎖は四方に広がり火を広める。アッシュの思惑通りに行き一行はなんとか森を抜けて野原の道に辿り着くと崩れる様に座り込む。


「すまねえ、ライラ。ありがとう」


 その声に反応して彼女の顔に手を添えるライラ。


「友達だから気にしなくて良いのよ............オエ゛ッ............うぅ、反動が酷いみたい。少し休まないと無理............ね」


 ライラは脱力し手は落ち、鼻や口から血を出し倒れてしまう。


「ライラッ!大丈夫かっ。それにアッシュも血塗れじゃねぇか!医者を探さねぇと!」


「俺は強い。それに、さっき見せた回復する術がある上にオークは頑丈だから気にするな。だがライラがマズい、内臓が傷ついているに違いない。しかも、俺は他者を回復させる術が無いっ!更に絶望的なのは近い町はここから約20キロ先だ、それも治療所なんてあったか記憶に無い」


 アッシュはまた魔法陣の上で座り回復を始めながら言う。効率を突き詰める為に話す時間で少しでも回復しようと考えたのだ。


「............クソッ」


(こんな為に転生したのか?死ぬ前に女の子を救ったんだ、こっちの世界でだって死んででも救わなきゃ何が世直しだ。............!そうだ、魔力があると傷の回復もするみたいな事も言っていたな!)


 なんとか思いついた策をアッシュに話す。


「なあ?魔力があれば、魔力が大量にあれば自己治癒が強まるみたいな感じのこと言ったよな?」


「ああ、生命の源でもあるからな。だが魔力を移すには専用の道具か、送る魔法と受け取る魔法を使わないといけない。そのままでは攻撃になる」


「無理やり送る方法があるじゃないか!私の真名魔法(トゥルーネーム)で!」


 それを言った瞬間目を見開いて思い出すアッシュ、だがそれと同時に少し躊躇いを感じる表情をした。


「魔法を借りた時に強制的にお前の身体から魔力を貸主に渡す。それは妙案だがお前が危険だ、魔力を渡し続ければ死ぬ回復速度もわからないのに連続してやれば死にかねん。それに恐らく真名魔法を借りるのが1番効率が良いが、ライラのバーサークは発動する度に己に大なり小なり負荷がかかる。つまりだ、魔力を減らし続けながら自傷魔法を使い続ける拷問だ。他を探............」


 そう止める彼を無視してライラの胸に手を当てた。


「子供1人救えねぇで何が世直しだ、何が下剋上だ。なぁにィがデミゴッドだッ。上等だ、前世だって自己犠牲で死んだんだ今世でも同じ死に方でも良いかも............なッ!!さあ、サバイブさせてやるっ真名魔法!!バーサークッ!!!!」


 再度、身体に刻まれた腕の模様。そして消えるとまた浮かぶ模様。誰よりも生きたいヒカリは強欲に他者を生かす為に死を借り続ける、反動で明確に身体に影響が出ても。


「う゛お゛お゛お゛お゛!!!」


 アッシュは自分の傷で意識朦朧とした、この拷問的状況のせいで彼女の悲痛な叫びが何時間にも渡って響き渡った様に感じた。気がつくと色々な場所の血管破裂により血塗れ、片腕の骨と筋肉が飛び出て動かなくなっているヒカリがライラに覆い被さる様にいた。

 ライラは顔色が良くなっており意識は誰が見てもあった。成功だ。


「ム、ムラサメ!生きているかっ!この程度で神話のデミゴッドは死なないぞ!」


 半分ないくらい回復した彼は彼女を労る様に寝かせて心音と呼吸を確かめた。


「............出来したぞ、お前が生きてこそライラは真に救われる。俺が悪いんだがな............こんなところで座っている場合じゃない、早く移動せねばッ」


 息はしていた、脈もあった。一旦は安堵するアッシュ。

 アンチェインウルフを再始動させると同時に馬車を召喚し2人を乗せてアッシュは1番近くの町を目指したのであった。その最中にライラとの共闘を思い出す。

なんとか助かったね。

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