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第5話 物語序盤なのに平気で強いモンスター

旅が始まり一旦休憩する一行。

 今日はもう夜だった事もあり村からそれなりに離れた場所で野宿する事にした。それに狼の維持にも多少魔力を使い続けるのでアッシュの回復時間も必要だ。


「この辺りだな」


 野原の木々の間に良い感じの広さの空間を見つけた彼は地面に両手を付く。


「何すんの?」


 とライラから貰った水を飲みながら軽い感じで聞いているヒカリ。


「俺が自宅に帰る事なく出発したのを疑問に思わなかったのか?魔法でいつも家を持ち運んでいるんだよ」


 そう言いながら前方の地面に巨大な魔法陣が出現するもかなり大きな家が召喚された。


「すごい芸当ね、生活必需魔法の中でも面倒な方よ。ちなみに遊牧民はこんなに大きくないけど家を持ち歩く魔法は必須技能よ」


「生活必需品みたいなノリの魔法の部類あるんだ............」


「あら?鏡を出すのもそれに分類されるのよ?だから既に貴女は見ていたって事ね」


 そう呑気に話しているとアッシュは地面に手をついたままから崩れて倒れそうになる。


「おいおい!大丈夫かよ?」


「ああ、豪華な家を出すのは下手な戦闘より疲れるんだ............そして警備の代わりに俺の狼に任せる」


「?そいつ出していると疲れるから休むんだろ?」


「アンチェインウルフと言ったよな?文字通り鎖から狼を解放すると俺から魔力を貰うのでは無く、その辺の動物を喰らうか大地から魔力を吸収する状態にできる。ただ欠点があって力が半減し俺から約50メートル離れられない、そしてアンチェインの状態で狼がやられると俺の真名魔法は暫く使えなくなってしまう」


 大したデメリットじゃないのになんで、そんなに深刻そうに言うのだろうと思う彼女。


「なんだってそんなに深刻そうなんだ?お前の狼を余裕で倒せる奴なんてこの辺りにいるのか?林道から少し外れたトコだぞ?」


「何故私の居た村が見捨てられた場所かという理由にも繋がるのだけれど、この辺りはシンプルに治安が悪い上に魔物や普通の動植物もすごく危険なの。それのせいで私は程良い外敵と戦えず未熟だったの、王の策略の通りね」


 それを聞いてヒカリはつくづく思う、この世界はかなりハードだと。それに治安の悪さの原因の一つのオーク集団はいないのだからマシになっているのでは?とまたも楽観的に考えた。


「こんな穏やかな雰囲気なのにか............」


(つまりアレだな?RPGゲームで例えるなら木の棒持ってレベル5くらいなのに中盤の村からスタート的な?雑魚相手に無双もさせてくれないかっ!神に近い概念は私をどうしてこんな場所に飛ばしたんだよっ!?恋愛シミュレーションゲーム系異世界に連れてって〜............)


 ヒカリはこの世界で生き残れるかという不安は募るばかりだ。だが安心しろ、最終回では流石にきっと良くなる。


「そうだ、この穏やかさが気を緩ませ死が迫る状況に追い込まれる。早く家に入れ、今更取って食っちまう事は無いのだから」


 アッシュがドアを開けて招く。


「デケェドアだなぁ〜」


 少し見上げ言う。


「俺の身長が大体320センチだからな」


 推定3.5メートルだったアッシュは自己申告によると3.2メートルらしい。恐らく威圧感と靴底の厚さで更に大きく見えたのだろう


「私の2倍以上............それよりもあなた方がドアの前にいると大きさがよくわからなくなるわ............お邪魔します」


 かなり見上げてから入る。



 205センチと320センチと144センチと差がすごい為にライラから見たら2人とも大きいのである。

 そして2人は中に入るとハーブの芳香剤か虫除けの様な匂いがする。そして家具がめちゃくちゃに大きくライラは1つの椅子で横になれそうだ。


「すげぇな!この旅は快適で楽勝だな!」


「椅子と私の身長あまり変わらない............」


「この家はできれば使いたく無いがな、力を消耗するから危険なんだよ。ライラは身体でも洗ってくれ、あとムラサメはこっちに来い、良いモンをくれてやる。礼だ」


 キョロキョロしているライラを置いて彼について行くと武器や本などが保管されている場所に通された。


「お前だけ武器が無いのは心配だからな、それと平均的な人間には重く大きいので使いこなせないが俺には小さ過ぎる武器がある。これだ」


 そう言うと拳銃のリボルバーの様に中折れしている剣を渡された。


「確かに2メートル越えの私なら使えそうだけど、これは何?弾でも込めるの?カートリッジ?」


「それはアルカナセイヴァーだ、剣と救世主のダブルミーニングな名前の武器だな。そこに色々なモノを込めれる、込めたモノによって効果は変わる武器だ。つまり、使えない魔法も数回使える。だが1番の利点はそこでは無い、俺の真名魔法の力をカートリッジに込めた場合、俺不在でもお前はアンチェインウルフを使える」


 やっと主人公の武器っぽいのが出て喜ぶヒカリだが何故持っているか疑問に思う。


「こんなモノをどこで?この世界では普通の武器なの?」


「いやカートリッジに魔力や魔法を込める技術はあるが剣と一体化しているのはそれしか知らない。そして入手経路は簡単な話だ、俺を殺しに来た奴が持っていて返り討ちにした時に命と代わりに奪ったモノだ。あいつは恐らく鍛冶屋だとかシュベリ王室直属の技術者が作った試作品を使ったんだろうな。あいつは両手で持っていたが俺にとっては爪楊枝でお前にとっては片手剣と言ったところか」


「要はプロトタイプかぁ、いいねぇ。じゃあ、自分の魔力でも入れてみ............魔力ってどうやって出すの?」


 心は男児で厨二病。


「やめろ、お前の貯蔵量をミスって全部放出したりしたら家が爆発する。このグリモアを見ろ、10歳くらいのガキが自衛の為に学ぶモノだ、実践練習は絶対に外でやれよ。一つアドバイスするなら自身の魔力を感じて放出したい部位に道を繋げる様な感じだ」


 と入手したが全く使ってないのがわかるほどピカピカの本を渡してきた。


「ありがと!えーっと............知らない文字が多いんだけど、これ似たの見た事あるなぁ............あれだ、魔法文字ってやつか!」


「そうだ、そういえばそれすらもまともに読めないのか............じゃあ、これも持って行け。自分にガキが出来たら使おうと思っているから、それはさっさと学習して返してくれ」


 結婚願望とかあるんだぁと思いつつ先ほどより対象年齢の低い本を渡された。


「ああ、綺麗に読んでさっさと返すから安心して」


 そしてパラりとページを捲っていく日本語の五十音順の様に魔法文字が一文字ずつ並んでいる。


「発音がわからないとダメじゃない?」


「指でなぞれ、それでわかる。それより今日はもう寝ろ。俺のせいで疲れているだろう?だが湯を浴びてから寝てくれよ。今ライラが終わった頃だろう」


「おっけ〜。じゃあ、ありがたく使わせてもらうね」


 そうしてシャワー浴びてヒカリは出た。


「ふぅ、異世界って身体洗えなさそうなイメージだったから良かった。でも風呂に浸かりたいなぁ............」


 と上裸でアッシュに使っていいと言われた部屋に向かうも突然地面が激しく揺れた。


「おー震度4かなぁ」


 と呑気に日本人マインドで廊下で立っているとライラの悲鳴が聞こえたので向かう。


「おいどうした!?」


「いや、今かなり揺れたよね?それに、服を着てっ!もう身体は男性じゃないんだからっ!!」


(あー!怖かったのに今度はこっちが恥ずかしいよぅ............)


 顔を赤くして照れながらも、即座に手のひらから魔法陣を出し系のような物を出して高速で編み上げてブラジャーと頑丈なピチピチの服を作り強制的に着せて来た。


「うおっ!??すげぇ、ありがとう!魔法の天才じゃん!!」


「真名魔法は戦闘用なのに素質はこう言う方面だからね、これで守護者としての給料をピンハネされても稼げたから............とにかく貴女の服ってよく考えたら全く無いから作っておくわ」


(あなたにはなんでか色々としてあげたいと思うのよね、見つけた時も何故かやっと出会えたというか変な感情が湧いたし不思議ね)


 ともう揺れの事を忘れたタイミングでドスドス走る音がこちらに近づく。


「アンチェインが攻撃されているっ!あの振動は何者かの襲撃だ!」


 そうアッシュが焦ると家の壁を突き抜けてアンチェインウルフが転がってきた。家の一階の前面の殆どが吹っ飛んでしまう。


「この傷はガロウッドかっ。同じ狼型だから縄張り争いに発展してしまったか............すごくマズい」


 ウルフの身体には太い枝などが刺さっており、足はトゲトゲの枝が刺さって身動きがし難い状態でやられたことがわかる。


「マズいってなんで?そんなに強いの?2人が頑張れば一匹くらい勝てないの?」


 楽観バカは2人が強いからなんとかなるだろうと思っている。


「こいつらは群れる、そして俺はウルフがやられたから真名魔法とそれに関連する力は使えない」


「そして一匹の強さは一般的な兵士の5人分とも言われているの。群れは雄一匹に雌四匹で動く............ほら、もう手前にいるわよ」


 壊れた壁の向こうには赤く目が光る樹木が絡まって形を成している狼がいた、体高はライラ並だ。あちらは警戒しながら横に広がって動き始める。


「囲まれるっ!真名魔法(トゥルーネーム)バーサーク!!ヒカリッ!早く私に触れろォ!!」


 腕をクロスさせ発動。ライラは近くにいる彼女とハイタッチをする為に手を伸ばした。


「わかっ、うわっ!!ライラァァ!!!」


「ぐう゛あ゛あ゛!!」


 ガロウッドの雄は賢い、ライラに雌二匹をすぐ様行かせて攻撃。彼女は体が小さく軽い上に不意打ちで踏ん張る事ができず、後ろの木製の壁を突き抜けて闇夜の森に吹っ飛んでいく。


「クソッ、子供のライラに加勢する。お前は1人で粘れ。素質はあるんだ、中の下レベルの魔物はやれる筈だっ」


 そう言いながら後ろに走っていく。ヒカリは嘘だろっ!?って顔で声も出ず手を伸ばす。


「っ!?こっち3匹なんだけどっ!!魔法まだほんの少し読んだだけなんだけど!!!!............仕方ない」


(普通は下の下からレベリングなんだよっ!肉体が特別なペナルティだよな、これ)


 と大声で泣きそうになりながら喚く。だがここで自分がやらねばライラもアシュグリムも危険だと判断すると、身装填のアルカナセイヴァーを持ち覚悟を決める。


「はぁ、やるだけやるさ。様子見してないで来なよ、早く来いよ。早く(ハリー)早く(ハリー)!!」


(漫画の真似している場合じゃねぇけど自身を鼓舞しなくてはキツい。木?に対して普通に考えるなら対人用の剣では不利だ、なるべく殺したくも無いし何か考えなくては............)


 そう言いながら剣を片手で構えた。ガロウウッドは3匹全てがヒカリの思いと反して殺意に満ちていた。


「ぐるうわあああ!!」「ばうっ!」「ばるっう!」


 ソロでの初陣が始まる。

ちなみにガロウッドは餓狼とウッド合わせた名前です。

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