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王道異世界転生サヴァイヴ 〜その力をレンタルさせて頂きます〜  作者: 月影光貴


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第10話 人それぞれの苦しみ

 アッシュが目を覚ますと仲良く話す2人がいた。ライラはヒカリの膝にちょこんと座り話していた、短時間で距離が縮まり過ぎであるがヒカリは誰とでもすぐ仲良くなるタチなので見事にそれが発揮されたのだろう。


「............ん゛ん゛。はぁ............マズい寝過ぎた、もう夜だ。ん?お前ら随分と仲良くしているな?」


「ええ、だってヒカリの話が面白いのですもの、科学ってすごいですわ!」


(あなたは惨たらしい死因で亡くなってこちらに来た、不謹慎で最低だけど私はあなたに出会えた事が何故だかものすごく嬉しいの、まるで運命............)


 と謎なくらいにヒカリに惹かれる事と罪悪感は隠して、ニコニコしながら膝の上で笑うライラ。17歳にしては少し幼さを感じる笑みだった。


「私もこの魔法の世界が多少知れて面白かったよ、それに入浴の文化もあるのは安堵したよ」


(なんで、私の上に乗ってんだっ!!良い匂いするし体柔らかいし気が狂うっ!!乗るにしたってなんでそこまで身体を密着してくるんだァ!!!理性が死ぬっ!!!!!)


 悶えるヒカリはそれでも落ちない様に彼女の身体に配慮しつつ手を回しているので余計に気が狂いそうになっている。


「それは良かったわ!明日からは暇な時間は魔法のお勉強をしましょう!でなければ生き残れないわ、昼間の木偶の坊のバカみたいに馬鹿正直に魔法無しで戦ってくれる人間はいないのよ?」


「そうだねぇ............取り敢えずお手柔らかに............」


「ふふっ、頑張りましょうね!」


 そう笑いながら自分の体に置かれているヒカリの手を握る。


「う、うん!」


(いきなり手を繋ぐな!勘違いするっ!俺は恋愛未経験とは言わないけど、ここまでされるとおかしくなるっ)


 そう悶えているとアッシュが言う。


「もう遅いんだ、水浴びして寝ろ。あの傭兵団が来たら面倒だから早朝に出るぞ」


「へいへい。ライラ先に入りな」


(入浴文化はあるがレベルがどの程度なんだろうか、ここは高い宿らしいからまともだといいんだが)


「良いけど、ここのお風呂の型が少しでも水を出す魔法を知らないと入れないわよ?ヒカリは1人じゃ無理でしょう?両性って言っても殆ど今は女性なんだから一緒に入りましょ?」


 突然の提案に少しフリーズする事になるヒカリ。


「えっ?え?えっ!??どういう事???」


(馬鹿言うな!柔らかい尻を私の股間の上に何時間も当てながら座っていたのを耐えた後にライラの裸体なんか見たら死ぬわ!)


「ここお風呂が大きい代わりにケチっているのよ、自分の魔法と壁の魔法陣にリンクさせると、自分が使った水魔法が変換されてその壁からシャワーの様に水が出てくるの、湯船も同じ。この宿に泊まれる客層にそれすら使えない人がいるなんて想定してない様ね」


(正直、勢い余って一緒に入るとか言っちゃったけど、ヒカリを発見した時に裸体だったから一応見たけど大きかったのよね............お父さんとお風呂に一緒に入ったのなんていつか覚えてないけど、あんなに大きいモノなのかなぁ............)


「そ、そうか。発展しきった科学は魔法と変わらないを感じた............昼は汗かいたから仕方ない、一緒に入るか。魔法頼んだよ」


(なるべく見ないで、身体を逸らそう............てか性処理するタイミング無くね?禁欲生活なんて無理だぞ、終電過ぎの帰宅で早朝出勤だってんのに性欲が強過ぎて............まあその話はいい、だが我慢するのは無理だぞ考えなくては............そうだ去勢!!いや、バカが私は!)


 悶々としているヒカリ、その中身は自分がエロいと思えば年齢種族性別問わず無機物だろうが何だろうが欲情する獣なストライクゾーンの広さ。ちなみにアッシュに対してはゴツ過ぎて少し好みから逸れているので欲情していない。


「その科学で発展したお風呂について聞きたいわね、取り敢えず入りましょ〜」


 そう言いながら着替え取り出して行く、ヒカリも後に続く。


「あ!身体を洗うタオルが無いしパジャマもあなたの分無いわね、今作るわ!」


 そう言うとまた魔法で糸を出し空中で細かく手を動かして宙に浮く糸は忽ちタオルの形になり、衣服とブラジャーを作る。ちなみにライラは平然とやっているが職人級である、伊達に魔法製衣服で金銭を稼いでいない。


「出来た!私とあなたの衣服は全部私が作っているから丈夫で魔法にも少し耐性がある便利なモノよ!これで命拾いしたと村人が言ってくれるくらいにはね!」


 誇らしげに白と黒の派手なブラジャー、パンツと自身と同じパジャマを作る卑しい女ライラ。


「す、すごいなぁ............これ攻撃にも応用できないのか?」


(さりげなくペアルック!?あとブラジャー、パンツの感性は現実の勝負下着みたいだな)


 手から出ている小さな魔法陣を動かして糸を操り数分で全て仕立てる事に驚愕しつつペアルックな事にも驚く。


「私の親が金属の様に硬い糸で戦うのがメインだったから可能だと思うけど、ジャンルが微妙に違うからそっちに寄せられるかなぁ............でも出来たら馬鹿の一つ覚えみたいに斧だけの攻撃からも脱せれるわねぇ............」


 そう言いながらドンドン服を脱いで行くライラ、ヒカリはあまり見ない様にしながら自分も脱ぎ2人は浴室の扉を開けヒカリが先に入った。


「っ!!?す、すごいなタイルに魔法陣って想像していたより数が多いな!??しかも広い!」


(さっさと出ないとな............)


「えぇ、下手な水より一応綺麗だからこの浴槽タイプが多いのでしょうね。とは言え飲む為の物じゃないから気をつけてね」


(綺麗な身体............私もこんな悩殺体型だったらなぁ............っ!?う、後ろからでもわかる、ヒカリの股間にぶら下がっているモノが............)


 そう言うと壁に手を当てると壁から温水が出て、2人くらいは余裕で入れる浴槽内は水が渦巻いている。


「す、すげぇ............浴槽のこれは何?」


「洗っているのよ、それが終わると勝手に満杯になるまで水が入るわ。その内に身体を洗いましょ、石鹸はそこに置いてあるから」


「あ、ああ」


(体が引き締まっているな、あまり見ない様にしてもわかる。子供がそこまでして鍛えないといけない世界なんて嫌だなぁ............)


 そうしてさっさと身体を洗いヒカリは外に出ようとするとライラに手を掴まれた。


「あら?入浴は嫌い?リラックス効果があるのよ?それにそちらの世界のお風呂の話も聞きたいわ!」


(なんで私引き止めているのよ!欲望に忠実ね............)


 結局、ライラもヒカリに気があるので止まらない。

 ほぼ初対面のライラと初対面のヘレルから好かれるヒカリ、数少ない異世界転生モノにありがちな要素。だがそんな事考えている余裕の無いヒカリは幸せと焦りを感じている。


「あ、ああ!こっちには互いに深い信頼関係の事を裸の付き合いなんて言葉もあるからな!」


 そして色々あり2人とものぼせてライラはヨロヨロ危ないのでヒカリが支えながら出る。


「ごめんなさい、身体弱いのに長く入り過ぎたわ。とても楽しかったから............」


(こんなにか細い腕なのに安心感がある、それに昼間の怪力はどこから出ているのかしら)


「気にすんな!水分摂って今日は寝よう!」


(ああ!!!風呂の中でも少し触れていたけどガッツリ触っちゃったよ!高校の時に彼女いたけど優しいだけでは女性を満足できないとか何とかってフラれちゃったから、こういう経験は無いんだよ!!)


 煩悩はあるがそれより心配なので耐え切るヒカリ。2人はクールダウンした後に寝る支度をしてベッドに入る。ベッドは4列並んでおり、一番端の壁際のアッシュはさっきまで寝ていたのに、またもう寝ていた。


「アッシュは相当疲れていたんだな、当たり前だけど」


「そうね、私と戦い、あなたと戦い、魔物と遭遇、そしてこの町に運んでと忙しかったでしょう。............じゃあ、おやすみヒカリ」


 そう笑うと目を閉じて眠るライラ。


「ああ、おやすみ」


 そうしてヒカリも目を閉じたが眠れない、色々な事があり過ぎて脳が混乱し続けているのだ。あまりにも眠れないので靴を履き、窓を開けてそこからジャンプして壁を伝い屋根に登り夜空を見る。


「この世界の月は見慣れているな、残業していた時も窓からこうやって月を見ていたなぁ............家族やダチ達は元気かな。俺の葬式、みんな泣いてくれたかな?俺は愛されていたかな。............うぅ゛、クソッ。家族にもダチにも会えないなんて、それに家族を見送るのが辛いと思っていたけど先に俺が死んじまうなんてなぁ............親不孝モンのサイテー野郎だよ。ああ、忙しくて帰省もあまりできなかったしな」


 そう言いながら涙が頬を伝う。忙しいと何も考える余裕が無い、だが一旦落ち着くと全ての不安がドッと押し寄せて来る。それは殆ど誰しもなるだろう、だがヒカリは今を生きているが世界が違う為に絶対に会えない人達。それを考えると泣かずにはいられなかった。


 そして下ではライラが悪夢に魘され苦しんでいた。


「お母さん、お父さん............私のせいで、最悪な人生を............」


 そう呟き枕を濡らす。アッシュは2人の声を聞いていた。


「............」

 

(違うっ最低最悪なのは............)


 罪悪感で押しつぶされそうになる、だがここで潰れてしまっては贖罪のチャンスを与えてくれたライラに顔が立たない。今は歯を食いしばりひたすらは拳を握るだけだった。

 休まらない夜が明ける、出発の時だ。

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