099-レストラン『デアルータ』でのランチ2
というわけで、ランチタイムは終わりだ。
あとはデザートだけ。
俺は「スプイエ(ジェラート)」と「クテラーレ(フルーツケーキ)」を注文し、普通にコーヒーをつける。
ついでに「フスベラ(ヨーグルト)」も頼んでおく。
「たまにはいいな」
コーヒーはこの世界でも普通に流通している。
今までは知らない名前だったが、気付いたらコーヒーという名前に見え、聞こえるようになった。
訳が分からないが、飲み物に罪はない。
俺は運ばれてきたコーヒーを飲む。
あ、砂糖が最初から入ってるやつか....
俺の好みじゃないが、ここは受け入れよう。
「美味しいなあ」
「うん、本当!」
アルは大喜びでデザートに手をつけた。
変わってるのはフルーツケーキくらいで、後の二つは変わらない。
星の環境が変わっても、基本の原理は変わらないという事だろう。
「コーヒー、香辛料、後なんだっけな.....」
「え? 何か言った?」
「何でもないよ」
古代においては.....と言っても地球の大航海時代だが、そういうものは得てして黄金と同じ価値を持っていた。
この宇宙ではどうだろう。
商人をやるなら、そういう事も頭に入れておかなければならない。
まあ、軽く調べただけでは分かりっこない事だがな。
何かのアニメの引用だが、「星はただそこに在るだけ、それに星と名を付けるのは人間自身」だというのがある。
人によって、それに価値を見出すかどうかは全く違うのだ。
コーヒー豆がないと生きていけない種族もいれば、香辛料が雑草のように生えている星もあるんだろう。
地球という狭い世界ではなく、ここには広い宇宙がある。
「(お腹がいっぱいになると、変な方向に思考が傾くな)」
俺はふと、暴走気味だったことを自覚する。
半分ほど残っているフルーツケーキに再び手をつけ、そしてまた考える。
こんなに腹いっぱいで、午後を巡れるのか? と。
午後は携帯端末キャリアに向かって、アルに携帯端末を買ってやらないといけない。
俺の買い替えはまだいいが.....
宵越しの金は持たない勢いで金を使っているから、アルの端末もこだわって選ばないとな。
「そろそろ出る?」
「うん....」
アルは御曹司だし、子供なので知らないだろうが、ここでの食事もそれなりに金がかかっている。
まあ、子供に金の心配をさせるほど、俺も堕ちてはいない。
当たり前のように支払う。
ただ、これに慣れてはいけない。
俺はまだ、そんな高収入という訳ではない。
これはあぶく銭であり、俺は資産家ではないのだから。
せっかくアンドロイドを仲間に加えるんだから、そのうちもっと大きな商売に手を出すべきだろうな。
そんな事を思いつつ、俺はアルを連れて人の波へと足を踏み入れた。
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