097-服飾店『タキオナリーゼ』2
「うんうん、いいよ、いいと思う」
三十分後。
俺はアルの二着目の服を選んでいた。
アルは何を着せても似合う、素材がいいからだろうな。
やっぱりセーラー服が似合う。
船員みたいなものだしな。
この世界でのセーラー服は全く別の名称で、古いファッションの一環らしい。
ユニセックスなので、アルでも着ることができる。
「子供っぽいし...」
「アルはまだ子供だよ」
「子供じゃないもん!」
とりあえずこれは購入確定だ。
次に俺は、黄色いシャツを選ぶ。
それをアルの姿に合わせて投影した。
「可愛い!」
だぼっとしていて、体のラインが出にくい。
萌え袖みたいになっていて、可愛いと素直に思える。
「僕...もっとかっこいいのがいい!」
「かっこいいのかあ...」
ソート機能で一覧から探してみる。
なんだかんだこうは言ってるんだが、アルは自分から可愛い服を選びに行ったらしく、一覧には児童向けのかわいい服が非常に多い。
それでもないわけではないので、俺は普段着のジャケットに似た服を選んでアルに合わせる。
「わ...もしかして、お揃い...?」
「多分...」
俺の普段着はオリオンの常備服なので、同じ種類のものかどうかはわからないが...
ただ、目を凝らしてみる感じでは、合成繊維のものではない。
全部革か何かでできていて、薄寒いステーションの外周部なんかではそこそこいい服かもしれない。
「これ買うよ」
アルの希望を聞きつつ、俺は次を選ぶ。
こっちは普段着というより正装...きちんとした場に出るための服装だ。
自動採寸らしいので、試着せずに購入する。
「り、リリーさん...」
「何?」
「いつもの服でいいよ...」
「うん、分かってる。でも...これは私のわがままだから」
もちろん、昔は俺も洋服にはこだわりがなかった。
だが、自分で金を稼ぐようになると急にファッションに目覚めた。
そして、同時に親が買い与えてくれた服はしっかりと考えがあって選ばれたものだと理解した。
いつかアルがそれに気づいた時に、俺が考えて購入していたことを分かってくれればいいが。
「はー、買った買った」
服の注文を済ませた俺たちは、店の外へ出る。
総額25万MSCほど。
かなりの高額だが、貯金の残りで充分に賄える。
店から少し離れた俺たちは、人混みを避けて一旦立って休む。
ベンチなどはないので(あったとしても先客がいるだろう)、アルは壁に寄りかかっている。
「お腹減ったね...」
「うん......」
先ほどソフトクリームを食ったとはいえ、腹は空に近い。
俺はあえて歩き出す。
「どこに行くの?」
「レストランを予約してるんだ、行こう」
「えっ!? ご飯食べるの!?」
何を驚いてるんだ?
そう思いつつ、俺は今回向かう先をマップアプリで表示する。
パソマ星系群の地方料理を提供する、デアルータという店である。
ここから近いな、よし行こう。
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