096-服飾店『タキオナリーゼ』1
というわけで、俺はこの先来るかもわからないような店を訪れた。
ショッピングモールのど真ん中に店を構える、オーダーメイド可能な服飾店『タキオナリーゼ』へと。
ヴァンデッタ帝国のアサカイⅣに本店を持つ店で、今は中立とはいえ敵対国家に店を構えてる時点で相当な大型店だ。
「いらっしゃいませー!」
人間の店員の元気な声に出迎えられた俺たちは、店内の様子に驚きを隠せなかった。
服が陳列されてるかと思ったのだが、実際にはボックス型のスペースが並ぶ場所となっていた。
「すみません、こういう店は初めてで...」
「初めてのお客様ですね!」
店員に話しかけ、俺はここの使い方を聞いた。
店員は俺から、誰の服を買うのか、他店舗の利用歴はあるかなどを根掘り葉掘り聞いた。
「洋服店が初めてとなると...まずはデータの入力からになりますね」
「どうすれば?」
「こちらのコードを読み込んでいただいて...お客様の個人データと連携していまして、同じような体型かつ年齢の方がよく購入されるお洋服の一覧の中から十着選んでいただければ大丈夫です」
「分かりました」
ようは傾向を測るということなのだろう。
俺は手順に従い、そしてアルにも手渡した。
「...え?」
「アルの服も買うんだよ?」
「えーっ!?」
何言ってんだ、アル。
俺だけ服を買ってアルだけ市販品なわけないだろう。
アルの方が立場は上なんだから、よそ行きは良いものを着てもいいはずだ。
「いいの選んでね」
「はーい...」
大人しく服を選ぶアル。
アルベルトの利用歴はあるのだが、それを利用すると足がつく。
服を選び終わった後、俺たちはボックスの前に立った。
「ホログラムによる試着ができますので、好きな服をお選びくださいね」
「ありがとうございます」
というわけで、この店に服は一着もないそうだ。
ホログラムにより、服のデータを読み込んで試着。
個人データを参照して、自動で採寸してオーダーメイドで発注、後日船に届くそうな。
「こういうドレスとかどうかな」
「綺麗...」
「いやちょっと露出多いな」
俺は変態ではないので、なるべく素肌は出したくない。
重ね着してもいいわけだが...
「青いドレスはいいかな、ちょっと乗馬服みたいだ」
「レースの服は?」
「着てもいいけど、私がそれやると本格的に痴女だよ」
胸が邪魔なんだ、胸が。
大抵のボーイッシュな服装はこの胸のせいで台無しになる。
サラシで隠せればと四苦八苦したが、結果は乳圧にサラシが負けた。
どうあっても、俺はこの脂肪の塊を強調する服装にならなければいけない運命にあるようだ。
「まあ、これでいいか」
俺は、とりあえず五着選ぶ。
青いチャイナドレスのようなものと、前述のレースを使った白と黒の入りじまったドレス、薄いベージュのネグリジェ、胸を阻害しないオーバーオールと下に着るためのボーダーのシャツ、最後に白いワンピースを購入した。
ワンピースの端には小さく花の刺繍がされていたので、喜んで購入したのだ。
これで、俺の普段着は揃ったことになる。
「じゃ、次はアルね」
俺は嫌そうなアルを、試着ボックスへ押し込んだ。
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