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095-小休止

というわけで、発注は完了した。

あとは買い物をして帰るだけなのだが...


「まだお昼前なのに、食べられなくなってもいいの?」

「うん!」


アルのたっての希望で、ショッピングステーションの中央にある軽食スペースでおやつを食べることになった。


「意外と安く済んだし、まあいいか...」


注文をつけまくったアンドロイドだったが、5000万MSCで済んだ。

予想していた億越えとはならず、中型採掘艦二隻程度の値段となったからだ。

オリオン強化計画案の予算内で収まるので、もっと他の装備の質を上げられるだろう。


「何が食べたいの?」

「あれ!」


アルが指し示したのは、ソフトクリームだった。

子供はやはり、そういうものに惹かれるのだろうか。

俺は内心思うところはあったが、アルと共にソフトクリームスタンドへ向かう。


「ソフトクリーム、アサランドイチゴ二つ」

「あいよっ」


いちご味にしておいた。

流石にこんなところまで来てソフトクリームを食べる人種は居ないようで、並ぶことはなかった。

携帯端末で10MSCほどを支払い、適当な席へ座った。

ありがたいことに、コーンを立てるプラスチック製のスタンドももらっている。


「おいしいね」

「うん!」


俺は上を見上げた。

ステーションに中央部に位置するこの場所は、四方を水場に囲まれていて、橋で出入りする。

天井はステンドグラスで、幻想的な光が降り注いでいた。

同時にリミナルスペース的な雰囲気が、人混みの喧騒に混じり静かな不安を胸に波立てる。


「...そういえば、アルは宇宙生まれ?」

「ううん、ジオランドで生まれたよ?」

「そっか」


ずっと旅を続けているが、自然豊かな惑星には巡り会えていない。

俺も段々、地球が恋しくなって来た。

知らない言語で書かれた看板に囲まれ、知らない文化、知らない種族が。

きっと好奇心あふれる人間なら、望郷の念など忘れてしまうのだろうが...

疲れる。

そうだ、疲れるんだ。

目を合わせれば、俺の能力か、この体の記憶なのかはわからないが、文字は日本語になるし、打つときや書くときも、言語として認識できる。

だが、俺の心は、俺の魂はここから来てはいない。

そう感じるのだ。


「リリーさん、溶けてる」

「あっ」


異世界のソフトクリームでも、溶けるという宿命からは逃れられなかったようだ。

ここは宇宙ではないので、溶けたアイスクリームほど悲惨なものはない。

俺はアイスクリームを一気に頬張る。

残ったコーンを、一口ずつかじって行った。

貪欲か、それとも先を見通せるかは判別できないが、アルは既に食べ切っていたので、俺のように味わう暇もない憂き目には遭わずに済んだらしい。


「ふはぁ〜...行く?」

「あと5分くらい待って...」


アルのたっての希望で、俺は暫しの空白期間を嗜んだ。

喧騒は止むことはなく、天井からパターンを微妙に変える光が降り注ぐので、とてもリラックスできた。

よかった。


「よし、行こう!」

「うん!」


ダストボックスにコーンの包み紙とスタンドを捨て、俺たちは軽食スペースを離れる。

いろんな食事を楽しむ人たちを横目に。


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