082-カマロイア・シップヤード見学3
外側へ出た俺たちは、宇宙を服を着たまま小型艇に乗っていた。
小型艇といっても、気密を保つタイプではなく、観覧スペースが下についているドローンのようなものだ。
『すごい!!』
アルが叫んでいるのが聞こえる。
大型艦に含まれるのは、巡洋戦艦、中型輸送艦、特殊巡洋艦、戦艦、大型輸送艦、フレイター(超大型輸送艦)だ。
現在見える限りでは、戦艦とフレイターが見えている。
『あちら、一番外縁部にあるのが、現在建造中のフレイターです』
『輸送艦乗りとしては、憧れないわけじゃないなあ.....』
『お値段は1.7億MSCとなっております』
『高いなあ.....』
流石に今は手が出ない。
ああいうタイプのフレイターは、恐らく安めのタイプのものだ。
オリオンの様な居住性を求めるなら、もっと値段は高くなる。
そうそう買える物じゃない。
買ったとして、それで何を運んで売るんだ? って話だ。
そういう準備が出来てから、運用するべきモノだ。
『あちらは?』
『ああ....ネメシス級型ですね』
『ネメシス級?』
『ええ、とあるお客様がシップメーカーに依頼して作成されたものを、交渉して設計図を買い取ったのです。雷撃戦に強く、船体が安定して頑丈なため、注文が増え始めてますね』
『そうか.....そういう事もあるんですね』
『我々にはできない考えが、出来る人間もいます。....主に傭兵ですが』
優秀な機体が量産されるように、優秀な艦もまた量産される。
そういう事なんだろうな。
『ねえ、アレは?』
『あー.....現在、戦艦の受注が増えてまして、一部の艦船は素材不足で建造を停止しているんです』
『ダズ・クヴァタ星系群以外からは輸入していないんですか?』
『少数ではありますが供給があるはずなのですが.......在庫をまとめて買い上げてしまっている所があるようで、中々資材が回ってこないのです』
うーむ、商売のチャンスなんだろうな.....
俺は、最低賃金と共にプラドたちから渡された「追加報酬」を思い浮かべる。
あれを使う時が、いずれ来るかもしれないな。
『軍用の戦艦もありますね、軍からの受注依頼を?』
『いえ、あれは軍事企業から民間用に転用されたものですね。攻撃に特化しているため、傭兵が利用することが多いんです』
戦艦は流石に大きく、見慣れているからこそ、違いが判る。
星系軍が利用していた戦艦に近い形状の船が、あちらこちらに見えていた。
なるほど、元軍艦もこうして戦術のアップデートに取り残されたとしても、民間で再び使われる。
世の中は意外と面白く回っているんだな。
「本日は見学に来ていただいて、ありがとうございました!」
「はい、こちらもいい話を聞けて、参考になりました。」
「かっこいい船がいっぱいだった! ありがとう、お姉さん!」
そして、俺たちは造船所を後にした。
てっきりアンケートを書かされるかと思ったのだが、そういうのは特になかった。
なので、売店スペースで純金製シャトルの模型があったので、それを買っておいた。
この世界では、金はそこまで希少性のある金属ではないが、目を楽しませるという意味では価値があり、こういう土産物に使われている。
世界のギャップというものを、嫌でも感じさせられる......
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