079-ウルブレン・ワープドライブ工場見学3
リフトが進んだ先は、組み立てラインだった。
三つのラインが一つとなり、フレーム材に接触しないように合体、その後に溶接されていた。
溶接材も特殊なものらしい。
『ワープ中に接合が溶けてはいけませんので、あれは仮止めになります。接合が完了すると、あのように――――穴を開けてボルトで固定します』
そりゃそうだな。
電子基板ではなく、よく稼働する部分に重要部品をはんだ付けしていたら、正気を疑われるだろう。
それと同じことだ。
『フレーム部品に充填装置とサブ・プロセッサを接続し、これらもボルトで固定します』
その後、内部に緩衝材を固定し、外装を取り付ける。
最終的に、入り口で見たオブジェとよく似た形になった。
やはり、完成系は一番最初に出来たものなのだろうな。
高度過ぎる技術を扱うと、実は完璧を目指した先が最初の形状になる....なんて事は、そんなに珍しい事じゃないだろうからな。
リフトは次の場所へと映る。
そこでは、大小様々なワープドライブがラインに載っていた。
『小型機用から、主力艦用など、様々なワープドライブが製造されています。.....あちらの停止しているラインは、主力艦用の超大型になります。』
「なるほど」
主力艦についてはあまり聞かないが、少なくとも一隻数京MSCはするという。
そうそうワープドライブが必要になる事は無いのだろう。
『ワープドライブは艦の製造時に組み込まれ、後から編集されることは殆どありません。そのため、たった一つの欠陥があればそれだけでその艦はしばらく動けなくなってしまうのです』
責任重大だ。
俺はそう感じる。
『アンドロイドの導入率が高いのは、それだけ重要な仕事という事でもあり、人間には任せられないのではなく、人間の消耗率が高すぎるからなのです』
「ありがとう、参考になった」
完全にアルを置いてきぼりにしてるなと思っていたが、アルの方を見ると、ライン上を流れていくワープドライブに夢中になっていた。
彼が楽しめたようでよかった。
『これにて、ウルブレン工業、ワープドライブ工場の見学体験を終了します。よければ、アンケートを書いていただければ、小型のワープドライブ模型を進呈いたします』
三十分後。
俺とアルは、先ほどの受付にいた。
あの後、ワープドライブの試験などを見て、リフトの乗降口に戻り、そこからここへ戻ったのだ。
とりあえずはアンケートに答え、アンドロイドに手渡した。
『.....これはガイドアンドロイドからの情報なのですが、あなたはアンドロイドの購入を検討しているそうですね?』
「はい、ええ.....なんで知ってるんですか?」
突然関係ない事を聞かれ、俺は困惑する。
『我々は集合意識から取り出された人工人格を利用しているため、ほぼ完全に同質と言えます。......ですが、もし本当に―――アンドロイドを利用するのであれば、自律型人格アンドロイドを購入することを推奨します』
「御忠告どうも」
『ええ、同時に――――アンケートにお答えいただきありがとうございます。では、こちらをお持ちください』
小さな箱を手渡される。
振ってみると音がする。
ようするに、これが入り口の模型の小型版という事だろう。
俺はそれをアルに手渡し、神妙な面持ちで工場を後にするのであった。
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