076-お風呂の中で
夜。
俺は更衣室で服を脱いでいた。
いつものお風呂だが、今日は少しセンチメンタルって気分だ。
適当に下着を籠に入れて、タオルを片手に浴室へ入る。
「はぁ~」
シャワーでまずは体を洗っていく。
最初のうちは備え付けのシャンプーを使っていたが、この身体は男の時と違って色々と面倒だ。
この世界のインターネットに頼りつつ、今はそこそこ高いシャンプー、リンス、コンディショナー、ボディソープなどを使っている。
原材料は知らない方が幸せだろう。
「思い切って切っちまうのもいいな」
俺は呟く。
髪が長いメリットがあまりない気がする。
髪は女の命とは言うが、俺は心は男だから構わないか。
とにかく.....
「長いと洗うのが大変だ」
浴槽に身を沈めるのは癒しだが、例え入るのが俺一人でも体を洗わずに風呂に入るのはマナー違反だ。
髪は細かい一本一本がまるで布のように見えるほどに束ねられたものだ。
それを理解すると、髪を洗うという行為がどれだけ大変かよくわかるだろう。
髪を洗って、体を洗って。
何か若干ヌルヌルしてんなと思いつつ、浴槽へダッシュする。
「ふはぁ~......」
この世界に風呂の文化はあるんだろうか?
いや、無いわけではないだろうが......
風呂に毎日入る文化は無いと思う。
ヨーロッパに浴槽に湯を貯めて入る文化が無いのは、日本と異なり水が潤沢ではないからだ。
この世界でも、宇宙では水が貴重だしな。
「正直この設備も、オリオンだから出来る事だしな」
オリオンは分類上中型輸送艦だが、例えばこのプールくらいはある浴槽を満たす水なら一か月は毎日張り続けるくらいには貯蔵できる。
おまけに、風呂くらいの汚れなら完全濾過できるしな。
湯を手で掬って、こぼれていく湯を目で追った。
「正直、俺だけではこの性能を活かせない」
アドバイザーというか、サポーターが必要だ。
買い付けも今は輸送依頼か、雑貨が中心で殆ど大きな価値を持つ商品を積んでいるわけでは......いや。
嫌な言い方をするが、アルはフィオーネ・エレクトリカルと企業同盟にとっては「大きな価値を持つ荷物」かもしれないが。
「アンドロイドだよな.....」
人を雇うのも考えたが、同じ船内で暮らす以上男は信用が置けない。
信用が置ける人間を探すのも、大変だ。
逆に女性なら、アルを誑かして消えるんじゃないかとすら思える。
人間は信用できないというのは、常に思う事だ。
となれば、アンドロイドだ。
「少なくとも、人間よりは賢いしな」
彼ら彼女らは、感情で動かない。
所詮ロボットと見て扱えば裏切るだろうが、100%に限りなく近い勝算が無ければ裏切る事もしない。
従業員として雇うなら、最適というほかない。
何なら、裏の事情を知っても問題ない人材ともいう。
「そろそろ上がるか」
俺は風呂から上がる。
ああ、身体を乾かすのも大変なんだよな.....
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