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067-『オマエノ ノゾミハ …アレ?』

「うーん.....」


どこかで誰かが話している。

その声がうるさくて、俺は目を開けた。

そこは、白い場所だった。


『オマエノ ネガイハ ナンダ?』

「えっ?」


あれっ?

俺は今までどこに....いや、そもそも。

ここは現実じゃないような気もする。


『オマエノ ネガイハ ナンダ?』


また、声がした。

俺は、周囲を見渡す。


「誰?」

『ワタシ ハ――――ダ』


それは確かに名乗ったが、名前は聞こえなかった。

俺は諦め、対話を試みる。


「ここから帰してくれないか?」

『ソレハ デキナイ。――――ネガイヲ カナエル マデハ』

「じゃあ、地球に戻してくれ」

『ソレモ ムズカシイ』

「そうか......願いねえ」

『ナンデモ カマワナイ』


さっき叶えられないって言ってなかったか?

こいつが何なのかは分からないが、少なくとも俺に言える答えは一つ。


「俺の願いは何もない」

『ナニモ.....ナイダト?』

「そうだ、俺の願いは無い。富も栄誉も、力だって必要ない」

『デハ ナニガ、ノゾミダ?』

「何も。俺はこの生活が気に入ってる」


大体、こんなしつこく願いを聞いてくるなんて怪しいな。

相手が本物の神だったとしても、邪神かなんかだろ。

そうだ、こんな奴に願わなくても――――


「俺の願いは自分で叶える、消え失せろ!」

『オマエハ――――』


叫ぶと同時に、俺の足元が崩れた。

白い空間から、俺は闇の中に落ちて行って――――


「はっ!?」


目覚めた。

起き上がると、いきなり誰かに抱き着かれた。

振りほどこうとして、アルだと気付いた。


「リリーさん.....!」

「あ、る....あ、そうだ! リオは?」

「プラドさんたちが、船で捕まえてるって」

「今、オリオンは?」

「船の列に並んでて、警察がもう少しで来るって」

「分かった、ありがとう」


アルがいたおかげで、状況把握が楽だった。

それにしても....さっきの夢は何だったんだ?

この耳鳴りのせいで、気がおかしくなったのかね。


「そういえば、私....怪我は?」

「してないって、ダットナンって人が見てくれたの」

「.....体触られた?」

「あの人は結婚してるから大丈夫だって....」

「そういう問題じゃ.....」


まあいいか。

触られて減るもんでもない。

むしろ怪我を見落とす方が怖いしな。


「まあいいや」

「あ、リリーさん、まだ動かないでって....」

「じゃあ、プラドに伝えてきて.....責任を感じる必要はないって」


リオがどういう事情であんなことをしたか知らないが、まともな精神状態には見えなかった。

だから俺は、彼を許しはしないが――――その責任がプラドにあるとは考えない。


「.............居なくならないって、言っておいてこれか」


アルが居なくなってから、俺はシーツを握り締めて呟いた。

あの子の願いにそう答えたのに、あと一歩で死ぬところだった。

アルを一人にさせないために、俺も俺で何かするべきなのだろうと気付いた。

まあ、次だ次。

生きてるなら、チャンスは幾らでもある。

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