061-自艦待機命令
まったく、酷い目に遭った。
今のオリオンはひどい状態だ。
いきなりの全力戦闘のせいで、砲身が融解していて現在交換中だ。
セントリードローンはシールドが無いので、撤退するときに一機破壊されて、トラクタービームで回収した。
現状、設計図があるので艦内工場で生産中ではあるが.....
「何より、物資がないんだよな....」
燃料は何とか融通してもらったけど、食材は貰えていない。
ごねたらハイレンスキーとかいう子爵が融通してくれたレーションがあるので、それをやりくりするしかない。
軍はどこも柔軟じゃ無いからなあ。
「それより、相手の話だよな」
事情聴取には俺も参加した。
その上で、敵の情報も聞いているのだ。
当初アステロイド岩塊に潜んでいたと思われていた宇宙怪獣だったが、採掘中に掘っていた岩塊とは関係のない岩塊から大量に現れたという。
しかも、問題は...
「あれで全部ってわけじゃない事だよな」
もし、戦闘で連鎖的にあれらが目覚めるようなことがあれば、星系中が危機に晒される。
当然依頼どころではなくなり、鉱石を売っている場合ではない。
いや、デポジュリアなら或いは買い手はつくかもしれないが...
その時、着信があった。
応じると、ステーションの管理からだった。
『貴艦の修理と保全作業が終了した。出航時は管制に一報を』
要約すると、そんな内容だ。
時間は既に早朝、アルはコンソールに突っ伏して寝ていたので、抱き上げてベッドへと運んである。
流石に俺も疲れたが、眠るわけにはいかない...というか眠れない。
プラド達は無事だが、子爵から「その場で待機」との指示が出ているためだ。
民間人である俺には命令に従う義務は無いが、しかし逆らわない方が賢明だろう。
「まったく...こういう時も、世界は関係なく動き続けるからな」
アルの朝食と昼食を兼ねる炊き込みご飯を炊き、風呂に入って疲れを落とす。
この身体になって感じた事は、髪が長いと乾かすのにとにかく時間がかかる事だな。
そのうちショートにした方がいくらか気が楽かもしれない。
タオルをターバンのように頭に巻き付けて、風呂上がりに水を飲む。
全く眠気が起きないので、お湯を沸かしてお茶を作ってしまう事にした。
「マーケットに変化はなし...か、まだ発表は無いものな」
荷下ろしした鉱石はプラド達に譲渡しているが、向こうはそれどころでは無いだろう。
俺はアストレイとも連絡を取ってみたが、彼に裏があるようではなかったようだ。
『すみません、少し軽率でしたね。...調査隊が入った際は何も起こらなかったため、通常のリストに登録されていたんです』
稼げる手段があり、かつ次の依頼として俺にその同行を依頼する予定であったらしい。
そのための布石としてその話を俺にしたのだが、俺が漏らした事は怒るどころか、自分たちが行く前に危険であることが判明して感謝しているとのことだった。
『現在、採掘組合全体に待機命令が出ています。それだけの事態が起きたのでしょうが、正式発表はまだなはずです』
「あれらを秘密裏に始末できればそれが一番なんですが」
『難しいでしょう、同業者仲間があれと似た個体に襲われたとの話をしていました。外縁部での覚醒と波及し、星系全体で動きがある可能性も考慮しているのです』
...正直、これほどスケールの大きな話だとは思わなかった。
足がすくむ。
宇宙怪獣が暴れ出したら、逃げられるだろうか?
オリオンだけでも逃げて...いや、それはあり得ない。
そのうちTRINITY.が来るはずだ。
それまで耐えれば、あとは宇宙怪獣は死んで終わり、だと思う。
とにかく今は...待つしか無い。
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