060-生還!しかし...
「各艦連動! 既に対象が艦船ではないと報告が入っている! 救難用の生体フィルターを使って敵を掌握しろ! 包囲されている輸送艦に対しては援護射撃にとどめるんだ!」
到着した星系軍は、通常のフリゲート三隻と巡洋艦二隻の構成ではなく、駆逐艦七隻と巡洋艦八隻、指揮型の装甲戦艦一隻の構成となっており、これを行ったのはたまたま勤務中であったハイレンスキー・トリュエル子爵による指示であった。
彼は指揮官としての従軍経験があり、長く発令されなかった救難信号に対して火力に重点を置くことを指示したのだ。
なお、装甲戦艦は彼の持ち船であり、彼自身が戦場に出て来たのだ。
「くっ、何と気色の悪い.....これ程の数では足りるかもわからんな....各艦の判断に委任する! 聞こえているか、司令部! 救援を要請する! 私が死ねば困るのだろう! 責任は私が取る、緊急シフトで巡洋艦艦隊を寄こせ!」
そして事実、駆逐艦の出力では小型宇宙怪獣の装甲を抜けない。
表面に接触すると同時に、吸い込まれて消えたのだ。
逆に、巡洋艦の一撃は小型に直撃すると同時に、装甲を溶解させ、数秒かけて貫徹、貫通せずその場で爆発した。
だが、足りない。
手数が圧倒的に。
『こちらリーダーのプラドだ、難破者の収容が完了した! 離脱する!』
「了解! 輸送艦にも発令しろ、撤退する! 回頭しろ、司令部! 巡洋艦艦隊はそのまま待機、敵が追撃して来た際の直掩に回す!」
ハイレンスキーが下した判断は、撤退であった。
駆逐艦が素早くワープアウトし、戦艦が回頭し切るまで巡洋艦が援護、回頭と同時に連動ワープで離脱した。
「逃げていいの!?」
「どのみち単騎じゃ何もできない、今は逃げるしか......」
オリオンはシールドを張ったまま、回頭しワープで離脱するのであった。
結局、中型には全くダメージが入っておらず、宇宙怪獣たちは再集結を開始するのだった。
二時間後。
牽引されて来た「ザビオラ」と、他の艦隊もまた、ダズ・リベラⅣのステーション前に到着していた。
全ての艦がボロボロになるまで被弾しており、シールドは破損。
入港できる状態ではなく、外側の桟橋に係留し、乗員だけ脱出するような状態でいた。
それを、ステーションの外側でオリオンが静かに見つめていた。
「これから、どうなるんだろう....?」
「分からない.....」
オリオンも被弾しているが、軽微でありこれから入港するところであった。
ステーションも臨戦態勢であり、外側のセントリーガンが全て起動状態になり、今か今かとやって来るであろう敵を待ち構えていた。
「こちらオリオン、戦闘により被弾、エア漏れなし、修理の為に帰港したい、使用可能なドックを教えてほしい」
『こちら第四軍事ステーション、民間人用ドック六番を開放する、六〇〇秒以内にドックに入港せよ』
「了解!」
オリオンも速度を上げ、ステーションへ向けて微速前進を開始するのであった。
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