058-宇宙怪獣?
大変な事になった。
大変なんてレベルの話じゃない。
ステーションでの荷下ろし中に、プラドから連絡が入ったのだ。
『ヤバい、戻ってきてくれるなら戻ってきてほしい、正体不明の敵に襲われてる! ザビオラが沈んだ! 星系軍には通報したが間に合うかわからん!』
慌てて荷下ろしを中断して、再度ワープをかけた。
既に星系軍が向かっているとはいえ、出来ることはあるはずだ。
アルは眠っていたが叩き起こした。
一番安全なのはブリッジだからだ。
「そんなに相手は強いのかな?」
「わからない」
ワープ中は通信できない。
だから、相手の正体もわからないだろう。
現在ワープしてから五十分、残り十分でワープを抜ける。
帰りが分からないため、ワープ・ブースターを使用するのは避けた。
「だって、正体不明って事は船じゃないって事でしょ? 真空で生きられる生物か何かって事? そんなの居るのかな」
「僕も知らないよ.....」
とにかく相手を見ない事には何とも言えない。
喋ってる間に、五分経った。
俺はアルに指示を出す。
「アルはとにかく席に座ってシートベルトを締めて。この船のブリッジは絶対に安全だから」
”ブリッジ狙えばよくない?”のアンサーなのか、この艦のブリッジは固い。
とにかく、ワープ直後に攻撃に晒される可能性がある。
シールドを張る準備はしておかないと。
『ワープ終了まで残り二分』
俺は目を伏せる。
もし辿り着いて、全滅していたら?
敵がまだその場にいたら、狙われる。
いや、とっくにワープで逃げだしているかもしれないが。
そもそも.....ワープで逃げなかった理由は何だ?
敵はワープを阻害する手段を持っている?
分からない。
分からないことだらけだ。
「今回も平和に終わらないか.....」
いや、そもそも――――
アストレイが俺にこの話をしたのは、果たして偶然だったんだろうか?
分からない。
分からないから――――
『ワープ終了まで残り10秒』
「戦闘準備! アル、私がビビッて気絶したら――――後はよろしく!」
戦うのは今でも怖い。
命を奪う事だけじゃない、死ぬのも怖い。
緊張が怖い。
「...うん!」
アルが頷いたのが見えた。
だが、その声は空間を切り裂く轟音にかき消された。
「直撃!? ワープ位置を読まれた!?」
すぐにシールドを張るが、装甲部への被弾が警告表示として出ている。
アーマー防御をオンラインにしていなかったとはいえ、三枚ある装甲板のうち一枚を貫徹する威力。
どう考えても、ビーム兵装としか.....
「違う、無機物じゃない! 生体フィルターをかける!」
オーバービューに攻撃者が映らない。
艦隊はまだ残存していて、フィルターをオンにした瞬間に敵がオーバービューとHUDに映る。
「何だこの数!?」
小さいのが80、中くらいのが2、3くらいだが.....
確かに生物だ。
高い熱源を感知しているのに、艦船としてスキャンが検知していない。
「虫みたい......」
ズーム機能を使って敵を見ていたアルが呟く。
まさにそんな感じだ。
アステロイド岩塊に潜んでたのか.....?
だとしたら、ダズ・クヴァタ星系の惑星が砕けた理由は――――
「全員こっちに来た! 武装展開! 戦闘コンピューターを使うね!」
採掘艦隊から離れた敵が全員こっちに来た。
とりあえず今は「宇宙怪獣」とでも呼ぶか。
今はとにかく、星系軍が来るまで時間稼ぎをするしかない。
↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。