056-プラド艦隊同行5
採掘を始めてから六時間が経過した。
というのも、今回は軽量の鉱石が含まれているから、鉱石用カーゴ以外も開放している。
デポジュリアの分だけカーゴスペースが空き、二時間で満載、二時間で往復してまた満載、二時間で往復の繰り返しだ。
ただ、ここまで繰り返すと採掘する側も疲弊する。
だから、一度休憩に入っていた。
『今日でかなり稼げたな』
『お、マジか』
『一人当たりで計算しても、200万は行くぞ』
『おおおお!』
『やったな、採掘艦を新しくできるぜ』
通信の方は皆が喜んでいる。
普段の採掘では、燃料費や艦の維持費、人間としての暮らしに必要な金を差っ引けば大した金額にはならない。
だが今日は、もしかしたら明日は。
もっと稼げるかもしれないと、息巻いているのだ。
「ギラギラしてるなあ」
俺は会話をミュートしている。
というのも、リオが同じようにミュートで参加しているからだ。
何を言われるかわかったもんじゃないしな。
俺も進んで殴られに行くほど趣味が悪いわけじゃない。
『Prado:すまないな、リオのことで気を遣わせてしまって。彼は疑り深いし、許されない言動をした。だが、今後こうならないように気をつけるから』
プラドからも謝罪をもらっている。
本人のいる場所で謝らずに、こうして謝るのはどうかとも思うが、少なくともリオは俺が嫌いなのであって、プラドが嫌いなわけではないだろう。
他の面々に対してもそうだ。
リオは皆が俺の恐ろしい謀略(笑)に巻き込まれるのではないかと危惧しているだけだ。
確かに、俺の佇まいは怪しいが、好きでやっているわけではない。
男としての本音を隠さなければいけないからだ。
「中性くらいの身体だったらよかったけど」
「?」
或いは男装して男として振る舞うこともできただろうな。
しかし、この体では胸だけは隠すことが出来ない。
サラシでどうにかなる大きさではない。
実際に肩が凝るから普段はコンソールの上に載せているほどだ。
さて、俺の愚痴は程々にして。
「アル、次の目的地なんだけど...クラリウム星系群にしようと思うんだ」
「クラリウム...もしかして、技術系のコーポレーションがたくさん集まってるって言う...?」
「よく知ってるね?」
「うん、フィオーネ・エレクトリカルも進出してるって前にお父さんが言ってたの」
成程。
クラリウム星系群であれば、最先端かつ利便性のある商品を揃えられる。
今回は金鉱も見つけたわけだし、ここで一気に稼いでおきたいのは俺も同じだ。
「それに、クラリウム星系なら何を買って持って行っても価値はあるよ」
「リリーさんって、どうして輸送業者になろうと思ったの?」
あ、それを聞くか。
話すと長くなるが――――まあいいか。
「話すと長くなるけどね、まあきっかけは簡単だよ。それはね.........」
俺はアルに向けて、その話――――何故俺がスペーシアルにおいて、輸送艦による商人プレイを楽しむことになったのかを始めるのであった。
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