054-再びの出発
1週間後、プラド艦隊は出発した。
プラドに伝えたところ、検討すると言って五日経ってからまた連絡があったのだ。
調査を終え、大丈夫そうなので採掘するとのことだった。
気運は充分、滅多にない稼ぎ時に際して、プラド艦隊は目に見えて浮き足立っていた。
「デュラムナイト、ソークラサリウム、デポジュリアの三種が採掘できるらしいから、そりゃ浮き足立つよね」
「レアなの?」
「もちろん! マサドライトほどじゃないけど、本来は国有の衛星資源からしか産出しないらしいよ」
ここもそのうち国有になるかもしれないが、今はただ掘ることができるはずだ。
後で返せとも言われないだろう。
利益を掴むのは、一握りの人間というわけだな。
アストレイがどういう心情で俺にそれを教えたのかはわからないが。
まあ、仲間もいた中での発言だ。
酒に酔って、判断力を欠き部外者がいるのにその発言をしたのかもしれないが。
「でも、なんか話がうますぎるって思うけど...」
「それはまぁ、私も思ってるよ」
何故広く流布されないのかは理解できるとして、何故調査も入っていない?
採掘可能として示されてはいるが、何か闇があるとしか思えない。
それは俺にはわからないので、今はただ輸送艦として任務を遂行するまでだ。
『Prado:今回の採掘は競合他者との接触が予想される。ぶつかり合いになる前にトンズラするから、出来る限り掘りまくれ!』
それがプラドが艦隊用の通信で流した最後のチャットだ。
ぶつかり合いとは、要するに船をぶつけて採掘できないように妨害する行為のことだ。
明確にシールドを破壊しない行為は器物損壊として認められないので、やる人間は多いという。
「ワープが開けたら、すぐに時間との勝負になるってことだね」
「え? う、うん」
俺の独り言をアルが拾って、曖昧な返事を返した。
今のはちょっと悪かったな。
しかし、遠いな。
ワープ一回につき一時間。
星系外周部の未探索領域の入り口も入り口の筈なんだが。
「海賊が出るかもしれないから、今回は全ての艦が戦闘用ドローンを乗せてるらしいね」
「戦闘用ドローン....?」
「あるんだよ、固定砲台型じゃ無いのが」
この艦には載ってないけどね。
代わりに仕組み不明の流体レーザー搭載型セントリードローンが載っている。
市販のものは、展開後その場から動かずに弾を発射するタイプのものと、敵に肉薄し攻撃するタイプ、敵の艦内に突入する陸戦型タイプの三種類がいるようだ。
これらも、次の目的地で買い揃えようと思っている。
「どうして採掘艦には武器が無いの?」
「必要?」
「自分の身を守れないといけないんじゃないの?」
「少なくともここでは――――不要だと思うけどね」
前も言ったが、採掘艦を襲うメリットはキルスコアを稼ぎたい海賊以外には無い。
積んでいる物資はごくわずか、金属は加工するにしても海賊とつながっている所へ持ち込まなければならないし、海賊で輸送艦を所有しているところは少ないと聞く。
船に積める物しか持ち運べない以上、採掘艦を襲ってもしょうがないのだ。
「もうすぐ着くよ、今日のお昼はシチューを温めて食べてね」
「はーい」
いつもの通り、俺はご飯を朝のうちに作って置いた。
俺自身は時間が無いので、ワープ中にお弁当を食べる。
ブリッジの席には、個人用の保温・保冷庫が備わっている。
ここに色々入れているんだよな。
まあ、それは今いいか。
俺は60秒後に迫るワープアウトへ向け、佇まいを直すのだった。
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