051-アストレイ艦隊同行3
採掘輸送艦の仕事もだいたい終わりかけてきた頃合いだ。
流石に大艦隊だけあり、アステロイドを消費するのが早い。
ここは超巨大なアステロイドベルトの一角に過ぎないが、一つの岩塊ですら消費し切るのは至難の業であることは、前の採掘艦隊から見ても明らかだ。
事前に決められた鉱石を採掘するのだが、規模が違う。
あの採掘艦隊は2~3個程だったと思うが、この艦隊は六十個ほど。
忙しすぎるのも、この六十の鉱石をたった一日で掘り切ってしまう速度ゆえだろう。
「なんというか、暇だね」
「うん.....」
「まあ、そういうもんなんだけどね」
採掘艦隊への同行は、稼ぎにはなるがあまり好んでやりたいものでもないな。
彼等にとっては生業だが、俺たちにとっては何でもない事だ。
前の彼らにもう一度同行したら、次の星系群に移動するのも手だな。
「どう、進んでる?」
「うん、はいこれ」
「お、基礎はもう全部終わってるんだ」
なんかチグハグに感じるんだよな。
俺ですら驚くような教養を感じさせるアルだが、精神性は幼いし、俺が居なくなったら嫌だと言う。
藁にも縋る、という表現があっているかは分からないが。
どういう教育してたんだ....? いや、悪い意味ではなくだ。
無論父親が生きていれば、アルは父親のもとで過ごせたのだが、引継ぎをしてほしくなるな。
アルの利用している教材はインターネットで適当に見繕ってきたものなので、後でしっかり学べる教育システムを契約するつもりだ。
「そういえば、ここが終わったらアルはどこに行きたい?」
「えっと.......その、リリーさんが何かしたいなら、そっちでもいいと思います!」
「何かねえ......」
何かといえば、オリオンの装備は色々不便だ。
不便というか、性能が標準だ。
今使っている作業用ドローンだって、金さえ出せばもっと扱いやすいものを揃えられる。
以前にユーティリティとしての購入を検討したアンドロイドだって、そこに行けば買えるだろう。
うーむ、そっちの方がいい気がしてきたな。
「実は、色々オリオンの設備を買い揃えようと思ってるんだ」
「どこに行くの?」
「オスト星系だね」
話には聞いている、中央のオルトス星系の周辺にある星系、オスト星系。
そこの第一番惑星であるオストプライムへ向かえば、割とあらゆるものを揃えられる。
「えっ、でもあそこ.....危ないってお父さんが」
「危ないの!?」
「悪い人たちもそれなりにいるって」
「そうか......」
俺だけならともかく、アルを連れてそこに行くのは危険だな。
となると、また独自に探す必要があるな。
「よし、終わったみたい」
チャットに採掘修了の文言が記載されている。
俺は作業用ドローンを下がらせ、指示を待つ。
今のうちにとカーゴスペースのハッチを閉じ、作業用ドローンを自己メンテナンスに出しておく。
『Astrey:採掘終了だ、今日の所は帰還する』
『Lex:輸送部隊は先に帰還して大丈夫だ、俺たちは足並みをそろえて連動ワープする』
その指示が出た途端、戦闘コンピューターがマークしていた輸送艦の回頭を報告してきた。
先に帰っていいって事だな。
俺もオリオンに回頭指示を出し、ワープまでの短い時間でアンドロイドの買えそうな場所を検索するのだった。
↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。