048-回想:アルの想い
僕の名前はアル....今の名前は。
お母さんはずっと前に死んじゃって、お父さんも死んじゃいました。
お父さんを殺した人たちは、お父さんの会社が欲しかったらしくて、それが原因で戦争が始まるそうです。
お父さんの敵討ちをしたくても、僕には何の力もありません。
けれど、お父さんの会社には、会社同士の集まりがあって、その集まりが代わりに仇を打ってくれるって、リリーさんが言っていました。
リリーさんは、僕を助けてくれた人です。
目の前でお父さんが殺されて、それでも逃げた僕は、何もできませんでした。
でもリリーさんが現れて、僕を助けてくれたんです。
お金も持ってないのに、それが当たり前だっていうふうに。
『いいか、アル。金というのはあらゆるものの基本だ、優しい人に惹かれるのはそうだが、対価を求めず優しくしてくれる人は危険だ』
お父さんはいつか、そんな事を僕に教えてくれました。
だから、リリーさんを最初は警戒してました。
だけど.,....
『後悔はあとで幾らでもできる――――やるよ』
リリーさんは僕のために戦ってくれました。
僕はリリーさんが傷つくのが嫌で、あの人が戦いが嫌いだって、この目で見て知りました。
だから僕は、リリーさんにこれ以上迷惑はかけられないと思って、リリーさんの船....オリオンを降りようとしたんです。
だけどあの人は、僕のために立ってくれたんです。
『大丈夫だから』
あの人が笑ったのを見て、僕は会った事もないお母さんを思い出しました。
写真でしか見たことのないお母さん。
お父さんが見せてくれた写真の中で、ベッドで微笑むお母さんを。
敵は全部いなくなって、僕はジオランド星系に戻る事が出来ました。
「僕.....もう、一人なんだ」
戻った後、僕はどうすればいいのか分からなくて、ただフィオーネ・エレクトリカルの待合室で座っていました。
だけど、扉が開いて――――リリーさんが来て。
『アル、迷惑だったら断るんだけど...アルベルトじゃなくて、アルとして私の船に乗ってくれない?』
そう言ったんです。
説明を聞かなくても、僕はそれに思いっきり頷きました。
でも、今までみたいに好きには出来ません。
それは分かっていました。
だけど......
僕には何となく、リリーさんがお父さんみたいに見えました。
時折、お父さんと話しているみたいに感じることがあります。
だから、僕は.....リリーさんが言うように勉強します。
「勉強したら.....離れなくてもいいもん」
リリーさんと一緒に寝たいのに、リリーさんはいつも一人で寝ます。
なので僕は、いつも一人で寝ます。
お父さんと一緒に寝ていたので、一人は暗くて、怖いです。
でも、リリーさんが傍にいるって思ったら、不思議と怖くなくなって、眠れるんです。
「置いて行かないで、お父さん!!」
毎晩、毎晩。
僕はお父さんの夢を見ます。
でも、お父さんが....今度はリリーさんも連れていくようになって......
一人になりたくない。
そう思っていた時、リリーさんが「自分が死ぬかもしれない」なんて言ったから、僕はリリーさんを困らせてしまいました。
そうだ、と僕は思ったんです。
リリーさんは、あの人が言うように弱いから。
僕は強くなって、賢くなって。
あの人を守らなきゃ.....守りたい。
「フフフ.....今日のお昼ご飯はハンバーグだよ」
優しく笑いかけてくれるあの人を、僕はいつか守るんだ。
お父さんが言った大人になって、お父さんみたいに殺されたりしないように。
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