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046-焦燥と美食

「う.....うん」


アルの反応は予想通りのものだった。

だよな、俺にだって分かる。

子供のうちは悠々自適に、尚且つ彼は大企業の社長の息子で、何不自由なく暮らしていけていた。

だけど、いくらその立場から完全には退いてはいないとはいえ――――俺の方針では、ただ居るだけは認めない。

勉強して資格を取ったりするなり、色んな惑星の歴史を知ったりするなど、小学生くらいの子供がやるようなことはしてもらうつもりだ。

それを簡略化して、アルに伝えた。


「.....ぼ、僕....ほんとに、どうしたらいいか分からなくて.....」

「とりあえず、何かやってみたい事はない? 将来何になりたいか、とかじゃなくて」

「......その、昆虫に興味があって」

「いいと思うけど? 昆虫図鑑なら売ってるだろうし、買おうか?」

「でも、お金が....」

「言っておくけど、別にお金に困ってるわけじゃ無いよ。.....無駄にしなければ、なんでも」


俺は普段から金のやりくりが好きでやってるだけで、マサドライトの売却総額から捻出した資本以外の金は普通に貯金してある。

それがあれば、一生.....は無理かもしれないが、一年くらいは遊んで暮らせるとは思う。


「勉強が嫌なら、何か知ってみる機会を増やすのもいいと思うな。過去の偉人の本を読んでみるとか、小説を読んでみるとか」


前者は説教臭くていやだが、後者は別に悪くない。


「僕.........リリーさん、どうして僕をそんなに心配するの?」

「....私が突然死んだりしたら、アルは企業同士の戦いに戻るしかなくなっちゃう。だから、少しでも戦える術を覚えておくに越したことはないと思っただけだよ」


知識も、技術も。

全てが武器になる。


「でも、リリーさんは僕を置いて行かないよね?」

「置いては行かないけど、私は弱いから」


超人的な肉体能力も、一騎当千の超能力も、誰もが恐怖するような対人兵器も、ニュータ○プみたいな察知能力も。

全部持っていない。

だから俺には、腰に差した使い方も分からないピストルしか、身を守る手段はない。

ある日突然、あっけなく死ぬんだ。

そして、これは何となく俺の直感だが。

その場にアルはいないだろう。


「いやだ、絶対僕を置いて行かないで」

「嫌って言われても.....私は死ぬときは死ぬから」

「でも!」


話がややこしくなってきたとき。

ドローンが俺たちの前に割り込んだ。

だいぶ前から席の横にいたが、気付かなかったので知らせに来たようだ。

料理を受け取る。


「......食べよう?」

「うん」

「ごめん、ちょっと不吉な話だったかも」

「ごめんなさい....」


全く、何やってるんだ、俺は。

本音で話すべきなのはそうだが、何故素直に心配していると言えないのだろうか。

それに、俺は”子供だから”という言い訳にもならないその場しのぎの言葉を吐くつもりはない。

蝶よ花よと育てても、彼のためにはならない。

......と思う。


「あ、美味しい....野菜も食べなさい」

「はーい」


俺もそうだったが、男の子ってのはどうして肉から行くか分からないな。

大人にならないと、野菜の良さは分からないものなのか?

うーん、分からないな。

料理はしっかり美味しかった。

また来よう。


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