043-プラド艦隊同行3
数時間後。
俺はオリオンをステーションへ向けて移動させていた。
本来は往復する業務なのだが、オリオンの腹にはあの程度の規模のアステロイドでは収まりきらなかったらしい。
「うん、美味しい」
「こういうの、食べたことないけど...おいしい!」
昨日買っておいたハンバーガーを、俺はブリッジでアルと一緒に食べていた。
なんてことはない、有名チェーンのハンバーガーだ。
日本で言うならファストフードだが、上流階級のアルにも美味しいと思えるできらしい。
流石にここまで科学が発展しても、ポテトがシナシナになるのは防げないようだが。
「もう少し長期の任務になると思ってたんだけどね」
「オリオンは採掘輸送艦じゃないのに、なんでこんなに入るの?」
「私もわからないんだよね」
輸送艦オリオンは、SPECIALにおいてはそんなに珍しい船というわけではない。
もちろん始めてすぐ買える船ではないが、輸送屋中堅クラスになる頃には既に購入でき、搭乗に必要なスキルが揃っているはずの船である。
もちろん、多彩なカーゴも魅力的だが...器用貧乏であるはずなのだ。
船の大きさに比べてモノの入らなかったゲームとは違い、現実に則したカーゴ容量となっているということなのだろうか?
「考えてもわからないから、考えてもしょうがないんだよ」
これを建造したメーカーに言ってくれ。
俺はそう心の中で呟く。
アルは欠伸をする音が、ブリッジに響いた。
「ご飯食べてすぐ寝ると太るよ」
「はーい...」
だんだんオカンみたいになってきたな。
俺は別に母親でも父親でもないわけだが。
それでもアルにとっては家族だからな。
「お茶要る?」
「欲しい」
「了解」
俺はブリッジのドリンクヒーターから茶のボトルを取り出し、小物入れからカップを二つ出して茶を注ぎ、アルの席のドリンクホルダーにコップを置いた。
「ありがとう」
「うん」
こうして茶を飲むことで、食後の睡眠欲を抑えるというねらいもある。
今飲んだのはこの世界で広く流通している茶で、カフェイン含有量が多く眠くなりにくい。
下手なエナドリなんかよりよっぽど効くというモノだ。
「今回の報酬は採掘した鉱石が加工側に売れてからの振り込みだから、なるべく多くの依頼を受けたほうがいいってさ」
「この船ならいっぱい入るもんね!」
「そう。なんなら、隣接星系間の鉱石輸送依頼を受けてもいいかも」
この艦は改めて調べた結果、かなりのカーゴホールドを持っている。
だからこそ、本来は定期便で運ばれる鉱石の輸送を引き受けたりもできるわけだ。
そういう依頼は総じて比較的いい報酬でもある。
「まあ、それとは別に...今回の艦隊とも引き続き仕事をしていこうと思ってる」
「なんで?」
「信用がおけそうだからね」
重要なのは信じられるかどうか。
金払いはまだいいかどうかは確認していないけど、SELLを通した依頼だから財布が痛もうが最低報酬は支払わなくてはならない。
彼らは寄り合い世帯で、後ろめたさや傲慢さ、卑屈さがない。
きっとこれからもいい仕事ができるはずだ。
野心はあるけど、人生を狂わせるほどでもない。
いつか金鉱を掘り当てて〜など、人間なら誰しも抱くものだしな。
「もうすぐ着くよ、降りる準備はできてる?」
「うん!」
いい返事だ。
俺は頷き、ワープから抜けるのを待った。
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