041-プラド艦隊同行1
当日。
俺はオリオンを発艦させる。
この時間帯は、アルはまだ寝ているはずだ。
起きたら、冷蔵庫にある炒め物を温めて食べるように言う予定である。
『Prado:リリーさん、準備は出来てるか?』
『Lily:ええ。どこへ向かえば?』
『Prado:ここで集合するのはルール違反だから、事前に渡したアステロイドベルト検索ツールを使って、C-456アステロイドベルトに来てくれ』
とのことだったので、俺はアステロイドベルトを検索し、出てきた座標をオリオンの航行コンピューターに入力してワープを開始する。
「しかし....多いな」
開拓がはじまってから数百年経つだろうに、それでもこの場所には凄まじい数のアステロイドベルトがある。
ツールの使用ルールとして、アステロイドベルトが完全に消滅した場合、消去申請を出さないといけないのだ。
「利権構造が特殊なのかね?」
企業が入り込んでいてもおかしくなさそうな立地だが。
辺境に近いのが原因か?
ワープから抜けたオリオンは、無数の岩塊が乱雑に存在する場所へと出た。
ここがアステロイドベルトか。
とても金鉱には見えないが、ここが無数の利益を生み出す場所のようだ。
航法コンピュータのフィルターに鉱石類の情報をアップデートして、スキャンの阻害をしないように調整した。
『Prado:もうすぐ着く』
「了解、っと」
恐らくワープ速度の速いフリゲートが先行するだろうな。
俺はドローンをチェックする。
作業用ドローンが今回は重要だ。
最大十機の同時操作になる。
タブを退けて、ドローンの操作に集中する事にした。
しばらく待つと、アステロイドに八隻の艦がワープアウトしてきた。
『Prado:到着した、センサーに映るか?』
『Lily:確認しました。採掘を開始してください』
『Prado:了解』
カーゴスペースを減圧して解放、作業用ドローンを発進させる。
戦闘コンピューターの機能を利用して、作業用ドローンのカメラを、スクリーンに投影して、採掘の様子をついでに見る。
「ふーん、そうやって掘るのか」
なんかこういうゲームでの採掘って言うと、ビームを石に当てて掘るイメージがあったが。
アームを下ろし、鉱石をワイヤーで固定してドリルで掘っていた。
この方法だと、かなり時間がかかるな。
フリゲートの方は、三機の採掘ドローンを展開している。
鉱石に張り付いてドリルを差し込むタイプだ。
「流石に時間かかるなぁ」
もう少し早いペースでの採掘を考えていたが、恐らく一度出港したら数日はアステロイドベルトに留まって掘るのだろう。
眠らないように、趣味でも作らないといけないな。
ここならブロードバンドネットワークの範囲内だし、適当にパズルアプリでも入れておくか。
「...おはようございます」
「あ、アル。起きた? 昨日の炒め物の残りがあるから、温めてパンと一緒に食べてね」
「はーい」
アルはエレベーターで戻っていく。
それを見送って、俺は欠伸する。
なるほど確かに、ここには夢があるが...華がない。
傭兵が寄り付かないわけだ。
採掘艦隊の護衛なんて、新進気鋭の傭兵たちには向いてないだろうし。
「音楽でもかけるか」
俺はブリッジに音楽を流す。
オリオンにプリセットで入っている、懐かしいゲーム音楽だ。
それを聞きながら、俺は寝ないように待つのだった。
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