038-荷下ろし
うーむ。
やっぱり、惑星表面での消耗品の需要は高いな。
もともと住民が住んでいた惑星ではなく、あとから住めるようにした小規模な都市(それでも東京と比較すれば東京が豆粒のようではあるが)が多く、生産施設がないため完全に外部からの物資に頼っている。
「ただし、儲けを出そうとするのは無理だね」
「そうなの?」
「うん、多分だけど、物資の流通ルートが制限されてる。瓶の首が狭いから、通常より安い値段で売り付けても多くは捌けない」
赤字と黒字の中間で釣り合うように出来ている。
これは、流通に何かしらのコネがなければ、儲けを出すのは困難と言っていい。
張り付いて数年単位で商売をしないと、プラス収支はとても...
「だから、惑星には売らない。あくまでステーションとコロニーに流通させて、稼ぐ」
「流通で強いのって、宇宙なんだね」
「うーん、というか...惑星に下ろす手段が、直接降りる以外で無いからね。今回は降りるつもりはないから、どうしてもそういう手段を使わざるを得なくなるんだよ」
直接降りるなら、多分安価で売り捌けるとは思う。
ただ、長期で張り付くでもないなら少々無責任な振る舞いだとは思うがな。
安く売ることで、上から降りてくる品物を高いと感じるようになってしまったら、不満が溜まっていくことになるだろうから。
「まあ、荷下ろしして現地の流通に乗せよう」
俺は席を立ち、アルと共にカーゴスペースへ向かう。
既に入港は完了しているから、俺はハッチを開けて、カーゴスペースにある荷物を下ろしていく。
既にステーションのレールウェイは到着していて、船の横についているので、その上に荷物を載せていく。
「これに載せるとどうなるの?」
「ステーションの自動配送システムだから、その先で私の荷物としてタグ付けされて、販売用の在庫として処理されるよ」
これでようやく、マーケット販売の準備が整うわけだ。
「あの...」
「ん?」
「次から、僕がやりたい...」
「いいけど、重いよ?」
「大丈夫!」
ジオランド星系で、カーゴ用の滑車台を買ったから多少は楽になったけど。
それでも重い。
「...それなら任せようかな。まあ、そのうち強化外装を買うけど」
強化外装...すなわちパワードスーツ。
まあ、戦闘に使える類のものではないとだけ。
オリオンは白兵戦に弱いし、海賊対策は急務なんだけど...戦闘に使えるようにすると、一気に値段が吊り上がるからな...
戦闘ボットでも買うか?
「今日は買い付けはしないけど、念の為相場は見ておくね」
実は、ダズ・クヴァタコンステレーションに向かう前に、ジオランド星系で鉱物系の相場を見ておいた。
あれを参考にして、儲けが出せそうなものを運搬する。
流石にここでの仕事もあるし、購入はまだ控えるが。
「うーん...トリタニウムは流石に安いか。...ただ、ジオランドでも流通量が多いからなぁ」
安牌はトリタニウムにしても、プオリウム(希少鉱石の一種、レーザー変調クリスタルの材料になる)やクオムダイト(汎用鉱石だが耐熱素材としてよく使われるため需要が高い)なんかも軒並みジオランドより安い。
ここは長居する場所ではないし、田舎と言って差し支えがないので周辺に鉱石を売り捌ける土壌がない。
大型の商隊が定期的に訪れて、大口の買い付けを行うのだろう。
「現地の採掘業者とコネが作れればいいんだけどね」
「コネがあるとどうなるの?」
「知らないの? 鉱石が安定した値段で手に入る」
マーケットに売り払い買い手がつくのを待つより、俺が現金で買い取ってやった方がお得というわけだ。
その方が向こうにとっても喜ばしいことで、現金収入がすぐ入るから働きがいも生まれるって事だな。
まあ、今日はこの辺にして。
「さて」
「...!」
「ご飯にしようか、お昼時だし」
随分待たせてしまったから。
俺はカーゴスペースのハッチを閉じ、アルと共に艦内食堂へ向かった。
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