036-ダズ・ハイア星系の星空にて
「ダズ・ハイア星系に到着っと」
俺はコンソールをちょちょっと押し、船をワープさせる。
この辺は採掘の名地だし、そこまで警備も厳しくないと思ったのだけれど、
「税関がしっかりあるとはね.....」
カーゴホールド内の情報を参照して、しっかり税金を取られた。
まあ、手持ちはまだまだ余裕があるんだけど、それは船の行動資金であって、活動資金ではない。
マサドライトの売値の残りや、アルを預かる依頼費などは別の口座に分けられていて、活動資金としては扱っていない。
「ま、大方盗掘か税金逃れが多いんだろうな....」
ただ、問題はない。
何故かというと、今回は積んでないけど、大抵の採掘された資源は製錬後、大型のインゴットに加工されて、型番コードを刻印される。
刻印が無く、なおかつ形が不ぞろいなインゴットは買いたたかれるか、最悪足がついて捕まる。
よく出来てるなぁと俺は思った。
「まだ朝早いのか.....」
流石にアルを夜要員にするわけにもいかないので、俺はステーションに船を寄らせながらオリオンで航行している。
そのうち、アンドロイドとかを雇えればいいんだが。
流石に買うのはムリだしな。
「いや、ユーティリティととらえれば......」
輸送任務ではなく、生活のサポートも兼任するような形でなら、アンドロイドを買ってもいいかもしれない。
そんな事を考えていると、エレベーターが動いて、アルが上がってきた。
「おはようございます」
「おはよう」
俺たちは挨拶を交わし合う。
同時に、俺は席を立ってアルの横を通る。
「少し見てて。朝ごはんを作ってくるから」
「はい!」
俺はエレベーターで下に下がり、食堂に行って食事を作る。
フードジェネレーターがあるが、この手で作るのが楽しく感じるうえ、時間つぶしにもなる。
最近は、戸棚の奥にあった包丁とかも使うようにしている。
まあ、この宇宙という時代において、カットされずに売っているものなどそうないんだが。
まあハムくらいか。
専用のセラミック製ハムカッターが激安で手に入るので、本来はそれを使うらしいが、せっかく肉厚で美味しそうなので、包丁で切らせてもらう。
「ん? そういえば......」
宇宙で水や飼料を多く使う畜産なんてできるんだろうか?
俺はそんな疑問を抱いて、ハムのパッケージを読む。
「ハルタコーポレーション製....培養...肉....培養肉なのか」
地球でも理論は確立されてたけど、あんま食欲が湧くもんでもなかったな。
こんなに美味しそうに、しかも量産できるのか。
そうなると、
「惑星に降りるのもアリだな.....」
培養肉、これが実現してるなら多分人造肉もあるんだろうが、やはり地上産というだけで価値は跳ね上がるだろう。
そして得てして地上では安く買える物。
ただ、需要があるかどうかは分からないが。
「こういうものって、安く売ると同業者から村八だよな....」
この世は結局どんなに複雑に思えても人と人とのつながりである。
こういうものを買って高く売る、簡単そうに思えても、それなら惑星産の物品はもっと安く取引されているものだろう。
だから、何かしらのルールがあって、高く売らなければならず、採算を取るのが難しいんだろうな。
そんな事を考えていたら、
「あっヤベ」
目玉焼きを焦がした。
俺は反省しつつ、焦げた方を自分の皿に入れるのだった。
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