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027-影の中で揺れ動く

こうして。

平和主義をなるべく主張したかった俺は、ロー・セキュリティ宙域...『ハナセラ』へと入るのだった。

ゲートを潜ると、その先にはいつもと変わらない宇宙が広がっていたが――――


「ステーションが....」


少ない。

全部で二つしかなく、広大な星系であるにもかかわらずその二つしかないのだ。

急いでワープをかける。

広域レーダーには今のところ、ゲートの周囲に夥しい数配置されたセントリーガンしか映らない。


「.........アルベルト」

「? はい?」

「今から危険な宙域を通過するから、ブリッジにいて」

「分かりました」


戦闘中は、ブリッジが一番安全だ。

戦闘にならないのが一番だけどな.....

ロー・セキュリティ宙域に誘導された以上、確実に襲われる。

頭をガンガンと打ち付ける、恐怖の感情を飲み込んで俺は席に凭れ掛かる。

ゲートにはセントリーガンが設置されているものの、相手なら無力化する手段を持っているかもしれない。

そうなったら単独で.......あ~っ!

考えたくない。


「(今はただ待つしかない)」


何も何十ジャンプもするわけではない。

たかが2ジャンプだ。

光陰矢の如し。

悩んでいるうちに、昼の時間がやってきた。


「.....何か、食べたいものはある?」

「リリーさん」


俺が気を紛らわすように言うと、アルベルトはいつになく真面目な様子で俺を見上げてきた。


「大丈夫ですか? 顔色が悪いですけど...」

「大丈夫」


壁に手を突いて、俺は立ち上がる。

大丈夫だ。

せめてこの強い子の前では、俺は大人でいなくちゃいけないんだ。

......それがエゴだとしても。




◇◆◇




その頃。

ハナセラと隣接するロー・セキュリティ宙域にて。

海賊達が徒党を組み、艦隊となって合流していた。


『それで? 今度の獲物は?』

『おう、”企業”からの依頼さ』

『そりゃ、スゲーな』


海賊は主にフリゲートと駆逐艦で構成されており、旗艦として戦艦が一隻と、巡洋艦が二隻居た。


『前金で凄い金額だ、見ただろ?』

『ああ』

『それに、獲物の船長は女らしいぜ』

『乗り込んでとっ捕まえれば、俺たちのモノって事か!』

『そういうわけだ』


今回の依頼内容は、『ロー・セキュリティ宙域を通過中の輸送艦を襲え。どんな手を使っても構わない。中にいる子供を殺害すれば、報酬を十倍に上乗せする』というものであり、海賊たちが生業を放棄し暗殺業に精を出すのには充分な仕事であった。


『そんだけ金があれば....俺も戦艦に!』

『バカ言え、戦艦が必要な相手なんてそうそう居るかよ』


海賊の首領はそう言い放つ。

輸送艦など、ワープ妨害器で捕まえてさえしまえばコルベットだって撃墜できる。

.....もっとも、ワープ妨害器といってもシステムを誤認させる程度のモノなので、相手が対策をしていれば逃げられてしまうが。


『楽な仕事だ、とっとと片付けようぜ』

『胸がでけぇ女だといいな』


海賊たちはもう勝ったつもりであった。

当然のことである。

ソロで飛ぶ輸送艦など、防御手段といえば広く流通している戦闘用ドローンだけであり、そのドローンも脆弱かつ、シールドを抜けないほど弱い。

襲撃側がコルベットとフリゲート艦の艦隊であれば、善戦するか程度の戦力しか持たないのだ。

輸送艦は確かに強固な防御力を持つ艦船だが、武装と引き換えであり――――こういった大型の海賊団相手に対しては棺桶にしかなりえない。


『ヒーローごっこがやりたかったのかは知らねえが、フリゲートかシャトルの方がまだ生存確率はあったんじゃねえの』

『企業様に逆らう奴なんて、脳みその中身が空っぽなのさ』


海賊艦隊は宇宙を行く。

確かな勝利の気運を高めながら。


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