244-Clown
パーティーはホールではなく、帝城の内部で行われることとなった。
立食形式らしい。
まだ立たせる気か....
「アル、ビュッフェ形式だってさ」
「ホント!?」
「.....」
育ちがいいのに、食べ放題に喜ぶアル。
それを見て俺は、もっと普段から食わせた方がいいかと考える。
足りてないんじゃないか.....? 言い出せないだけで。
「ペルソナ、アルって普段からお腹空かせてる?」
「いえ」
「そう」
やはり言い出せないだけかもしれない。
育ちがいいのが逆に....という訳か。
「それにしても、誰も寄ってこないね」
「いえ、寄ってきてはいるようですよ?」
「どうかな」
絶対に、俺の後ろの壁で壁に寄りかかり、闇に同化している宰相のせいだとは思うが。
そう思っていると、人波を越えて一人の青年が現れる。
誰も近寄れないと思っていた中、彼だけは見えない壁を越えてこちらへ来た。
「どうも」
「どうも」
帝国式の男性の挨拶である、右手を胸に当てて礼をする青年。
俺も、女性式の挨拶であるスカートの裾を摘まんでのカーテシーで応じる。
帝国でも、服装が基軸になっているだけあってカーテシーだけは存在する。
「エキラ・ハソーマ・ウドタルク・カイマネスです、カイマネス伯爵とお呼びください」
「伯爵.....」
「ああ、気にしないでください。僕は大した権限を持ちませんから、今日お会いしたのも、ハフニマル英雄爵殿を救ったお話を聞かせて頂きたいだけなのですから!」
急に目を輝かせるカイマネス伯爵。
そして、遠巻きにこちらを見ていた人たちが、少しずつこちらににじり寄ってくる。
何だ? そんなに、つまらない話に興味があるのか?
........ハフニマルを通じて、クーデターの事は国内にも知れ渡っているはずだ。
それなら、話しても構わないか?
「ペルソナ、話しても大丈夫?」
「はい、問題ありません。ただし重要な部分は省いてください」
問題ないなら、いいか。
俺は口を開く。
「いいでしょう、それなら――――」
「よおーー!!」
話を始めようとしたとき。
列を割って、ナスカが現れた。
顔が赤い、酔ってるのか?
「リリー、面白そうな話してんな! 俺も混ぜてくれよ」
「ちょっと、ナスカ....」
俺が制止しようとしたとき、耳に小さな声が入り込んできた。
「また、シラルド殿下よ.....」
「目に余るな」
「しっ、聞かれたらどうする」
「やはり蛙の子は蛙....」
俺にだけ聞こえるという訳ではないだろう。
この距離なら、ナスカにも聞こえているはず。
だというのに、どうしてナスカは、態度を改めないんだ?
「おい、カイマネス伯爵」
「は、はひ!?」
カイマネス伯爵が顔を歪める。
嫌悪と、恐怖半々といった様子だ。
「あまり、近づくな」
「.......っ、殿下の関わる事ではないのではないでしょうか!?」
脅迫するナスカ。
止めようと思ったが、二人の関係が分からない。
「この場で斬り殺されたくないなら、大人しく退けよ」
「.....分かりましたよ」
カイマネス伯爵を突き飛ばすナスカ。
なんだ?
何でそんな事をする?
「リリー、話しようぜ」
「う、うん」
怖かった。
まともじゃない、そう思った。
だから俺は、ろくに食欲もわかないまま、ナスカの話に耳を傾けていた。
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