242-帝国の中央
「ふう.....」
車両が駐車場で停止した所で、ようやく俺は息を吐き出した。
注目されるのは、やはり苦手だ。
車から降りると、ジャミアンが待っていた。
「リリー様、お疲れ様です」
「ええ」
ただ、一難去ってまた一難。
それどころか、まだ地獄の一丁目だ。
パレードが終われば、次は城内のホールで歓迎式典が開かれ、俺はそれに参加しなければならない。
全く、こんなに面倒なら帝国行きは諦めていたんだが...俺は思慮が足りないから、半ば諦めている所はある。
「控室にご案内します」
「ありがとうございます」
エスカレーターに乗り、上へ上へと向かう。
何だか、違和感が強い。
城の中にエスカレーターがあるという状況が、俺の常識を超越していてむしろ面白く感じるのだ。
生活に必要なのだからあって当然なのだが、そもそも現代において城そのものが珍しい。
よって固定観念とのギャップが違和感を生むのだろう。
「注目されているようですが」
「大丈夫です」
時折、メイドらしい格好をした女性などにすれ違う。
彼女らは、俺を見て何やらひそひそと話している。
それが何であるかは気にする必要もないだろう。
「お!」
目を伏せて歩いていた俺は、前から飛んできた声に顔を上げる。
そこには、ペルソナとアルを連れたナスカの姿があった。
どの面下げて、そう言おうとしたが、ここは彼の実家だ。
むしろ俺たちは招かれた客人、家のルールにどうこう言える立場ではない。
「シラルド殿下、お会い出来て光栄です」
「な、お、おい」
俺は頭を下げる。
こいつの知人のフリはもうやめだ。
今日から赤の他人だ。
「行くよ、アル」
「え、でも...」
「行くよ!」
こいつは俺たちを騙したんだ。
それで悪びれもしなかった。
だから、敵と変わらない。
「...殿下と、何かあったのでしょうか」
「答える必要がありますか?」
「...いえ。心中お察しします」
彼が何を勘違いしたかは、俺の知る所ではない。
ただ、今はまだナスカを許せない。
それだけだ。
「こちらが控室になります、メイドが外に待機しておりますので、呼び鈴を鳴らしていただければ、軽食や飲み物の類をお持ちしますので」
「ありがとうございます、お忙しい中」
「私などは暇ですよ、救世主殿」
そう言うとジャミアンは去っていった。
俺とアル、ペルソナは控室のソファに腰掛ける。
口を閉ざして時間を待つ俺に、アルが見上げるように話しかけて来た。
「...ねぇ、ナスカさんを許してあげて」
「なんで?」
身分を明かさず堂々としていたやつをどうして?
お小遣いとか、馬鹿馬鹿しい。
かけた同情は全て無駄だった。
そもそも、本来は契約関係にあるだけだった。
俺が勝手に親しみを感じていただけで、元の関係に戻るだけのことだ。
「シラルドさんは、身分を隠してうちの船に乗ってただけだよ。それ以上の関係なんて最初からなかったんだから」
「リリー様...」
ペルソナが俺を見つめる。
大人気ないとでも言うつもりか?
いや、俺もそう思う、ただ...嫌なだけだ。
俺はこの男が嫌いなんだ。
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