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023-彼の事情

数時間前。

アルベルトは、父親であるクレイドルと共にペリメーターⅡを訪れていた。

フィオーネ・エレクトリカル.....通称F・Eの社長である彼は、護衛数人と息子を引き連れ、ここペリメーターⅡに旅行に来ていた。

勿論旅行という名の商談でもある。

息子を溺愛するクレイドルは、息子であるアルベルトに様々なものを見せたがっていた。

同時にアルベルトもまた、世界中の色々なものを見たがった。


「ここで待っているように」


そう告げたクレイドルは、会議室の中へと足を踏み入れた。

そこで待っていたのは、ビアトール・インダストリアルの若社長、デュール・タストレンであった。


「ようこそ、ペリメーターへ」

「ああ、少し雑多だが、悪くない土地ですね」


お互いに社交辞令を交わし、二人は机を挟んでソファーに腰かけた。


「それで、今日は何の用事でしょうか?」

「簡単な事ですよ、フィオーネ・エレクトリカルの買収についてです」

「....それは以前にもお断りしたはずです」


クレイドルは、デュールが切り出したその提案に眉を顰め、きっぱりと言い切る。

しかしデュールは、厭らしい笑みを浮かべて続きを口にする。


「困っているのでしょう? 私どもがあなた方の下請け工場を全て買収し、契約を破棄させましたからねぇ」

「自社工場でも十分賄えますよ、それは断らせていただくという事で合意したはずです」

「いやぁ....それは困るんですよ、素直に譲っていただかないと、こちらも随分手を痛めましたからね」

「とにかく、その程度のお話であれば私は帰らせてもらいます」


不快感をあらわにしたクレイドルは、席を立とうとする。

その時。

いや、既にというべきか。

護衛は死んでいた。


「な.....」

「心配しないでください、あなたの後釜は既に用意してある。大企業に逆らったことを悔やむと良い、クレイドル社長殿」


背後からそんな声が聞こえる。

クレイドルの顔から血の気が引く。


「ああ、子供の事なら心配しないでください、労働施設送りで「永久就職」ですが、衣食住や子孫も残せます」


「永久就職」。それは、思考を制御するインプラントを植え付けられたうえで、死ぬまで企業の下で労働力として働くことを意味する。

王国において、奴隷は違法である。

だが、宇宙という広い世界でそれを守らせることは不可能に近い。


「アル....!」


息子、アルベルトの名を呟き、クレイドルは急いで外に出ようとして――――

鋭い音が響いた。

クレイドルは、自分の左肩に眼をやり、


「ぐ、ああああ!?」


そこに空いた穴を見た。


「おや? 気道を潰すつもりだったのですが......」

「あ、アル.....!!」


クレイドルは、肩から血を流しながら扉を開ける。

次の一射で、クレイドルは胸を撃たれる。


「お、お父さん!?」

「逃げ....ろ.....アル....!」


血の海に沈み、クレイドルは、それだけ言ってこと切れる。

恐怖に歪んだ表情で震えるアルベルトに対して、部屋から出てきたデュールは、その襟首を掴んで持ち上げる。


「ガキのために、ここまでしぶとく生き残るとは思えませんでしたが....これであなたも終わりですね」

「......ぐっ!」

「ち、っ、このガキが!!」


アルベルトは恐怖に震えながらも、デュールの手首を噛んで地面に転がり、そのまま脱兎のごとく逃げ出した。


「チ....お前ら! 高い金を払ったんだ、あのガキを捕まえて殺せ! TRINITY.に逃げ込まれたら面倒な事になるぞ! ジオランドにも戻すな!」

「「「「了解!!」」」」


警察はすでに買収されている。

だが、TRINITY.だけは不可能だ。

彼等を買収するなら、貴族ならともかく大企業程度の財力では....というわけである。


「ガキが.....」


デュールは、憂さを晴らすようにすぐ傍のクレイドルの死体を何度もレーザーガンで打ち抜き、レーザーガンを打ち捨ててどこかへ去っていくのだった。


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