002-経緯
俺の名前は篠原達樹。
ゲーム好きな大学二年生である。
特にこれと言って悩みもなく、かといって楽しみもない平均的な大学生だ。
そんな俺でも、熱中するモノがある。
それは、ある時見つけたゲーム、
『SPACECIAL』。
略してSCL。
オンラインのゲームではないが、しかし流麗なデザインの宇宙船を駆り、戦闘、採掘、探検、そして――――交易を楽しめるゲームである。
情勢は常に変化し、プレイヤーはそれによってゲーム中での金策手段に影響が出る。
戦闘であれば、義勇軍や国家に所属して他国と戦ったり。
採掘であれば、普段のアステロイドベルトの危険度に影響したり。
探検であれば、有用な部品を見つけてきて国家の発展に協力したり。
交易であれば、常に変動するアイテムの価格を睥睨しつつ、儲けを出したり。
「~♪」
さて、そんな事は関係なく。
その日の俺はアルバイト帰りで、購入した酒とおつまみを片手に道を歩いていた。
「っ、何だ!?」
不運にも、俺はそこでトラックに撥ねられてしまう。
.....まあ、運転手は至って正気らしい、トラックに。
最後の瞬間、慌てた様子でハンドルを横に切っている運転手が見えた。
あの様子だと、俺を躱して自損事故にしようとしたようであった。
それはうまくいかなかったが.....
数時間後。
俺はようやく、オリオンを回頭させていた。
カーゴホールド.....つまりは、モノを入れるための倉庫の状況を見たところ、大型と小型は空、中型にはエネルギー化合物が満載されていた。
ガスと素材カーゴホールドは空で、鉱石カーゴホールドと燃料カーゴホールドは満載状態である。
即ち......
「直ぐに商売が始められる」
俺はまだこの国の情勢について全く知らない。
だが、手持ちのモノを二束三文で金に換えることはできる。
そして.....
「小銭からの商売は経験済みだ」
交易について俺はよく知っている。
これは、かなりのアドバンテージだろう。
「えー....ここにはステーションはないのか、じゃあ...」
ジャンプドライブで適当に.....と思っていた俺は、「スターゲート」なる存在を発見する。
もしかして、これを使えば別の星系まで一瞬で行けるのか?
「よし、とりあえず行ってみよう」
モノは試しだ。
俺はオリオンをそちらへ向けて回頭させる。
これがどう転ぶかは分からないが....
『ワープベクトル開始........成功』
『ワープドライブ、アクティベーション』
システム表示が出た直後、オリオンはほぼ速度を出していない状態から一瞬でワープトンネルと呼ばれる超光速移動空間へと入り込む。
このワープ中はたった一瞬の出来事で、中にいる俺のような人間だけが正しい時間を過ごす。
「だから、待ち時間が発生するんだよな」
どこぞの宇宙戦艦のように、ワープ中は時間が止まればいいのにとは思うが。
それがルールなので仕方ない。
「そうと決まったら、船内探索だ」
喉も乾いたしな。
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