018-動き出す者たち
オリオンはゲートを通過し、ペリメーター星系に帰ってきた。
俺は船を第二ステーションにワープさせ、早速飛んできたメッセージに即応する。
『Judy:お元気でしたか?』
『Lily:はい』
『Judy:買い手は集まりつつあります。コーポレーションの目も届いていないようですので、眼を付けられる前に終わらせてしまう必要があります』
『Lily:分かりました、それで....期日はいつですか?』
『Judy:こちらの準備に三日かかります、それが終わればいつでも...』
『Lily:では、四日後でどうでしょうか?』
『Judy:了解しました、後ほどペール様にも連絡を入れておきますので、メッセージでのやり取りをお願いします』
『Lily:分かりました』
船をステーションに入港させ、俺はSELLの口座にアクセスする。
口座から引き出した金を自分の端末に送信し、その金をどう使うかを考える。
「まず、燃料だよな」
この船はヴァリアブルドライブ......つまり複合機関で動いているわけだが、その燃料は水素だ。
この世界でも水素は別に平凡な燃料という訳ではなく、ガソリンくらいの感覚で取引されている。
ようは、これに予算を割かないといけないわけだ。
幸い、価格はあまり高くない。
今回の儲けで買える。
「殆ど残らない.....か」
今回の稼ぎから色々差っ引いて、残った金といえば、3000MSC。
ちょっと高いディナーで消し飛ぶ金額だ。
「目標には届かないな」
今のところは食料庫にある食料で食いつないでいるが、いくら保管技術が高いからといっても、食材が痛み始めているのは知っている。
メシを買えるくらい稼がなければ生きていけない。
それでも、俺にはある考えがあった。
「生活するだけの金を求めるだけじゃ、目標には辿り付けない」
明日も稼ごう。
普通の運送依頼だけでも、日銭だけじゃなく、俺の目標に辿り着けない。
『折角だから貯めたお金でSF世界を満喫しよう』
という目標の為に。
俺はブリッジの椅子に深くもたれ掛かる。
「疲れたな.....」
風呂でも入りに行くか。
俺は席を立ち、ブリッジの電気を消した。
燃料は貴重だからな、節約節約。
マサドライトの存在は、各星系中に知れ渡っていた。
あくまでも噂程度のそれに、コーポレーションが動くことはない。
だが、物好きな資産家たちは希少金属の話に飛びつき、電灯に群がる蛾のようにペリメーター星系へと集結しつつあった。
そして、それに合わせるように....
海賊達も同時に、動き出したのであった。
↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。