017-輸送任務完了
翌日。
俺はオリオンをポリャニスティムプライム...つまり、ポリャニスティムの首都惑星の軌道上にワープアウトさせた。
そこには、ペリメーターのマーケットハブ程では無いものの、トレードハブがあった。
ポリャニスティムプライムのマーケットの流通を管理する場所でもあり、俺はここで商品を売り捌く。
需要はあるが、生活必需品に比べると優先度の低い商品は値段が高くなりやすい。
俺が今回運んできたものもそれに該当する。
炭酸飲料はパッケージ自体がそこそこ幅を取る他、保存には気を遣わなければならない。
それだけに、ここでの流通量は少ない筈だ。
「こちらオリオン、聞こえますか?」
『感度良好、入港申請ですか?』
「はい」
オリオンを加速させ、トレードハブに近付かせる。
トレードハブには殆ど船が停泊していなかったが、シャトル等は結構見えていた。
ポリャニスティム奥地での行き来が多いのだろう。
『所属とお名前を頂けますか?』
「SELL所属、リリー・シノです」
『記録しました。ガイドビーコンを出しますのでそれに従って入港してください』
オリオンは結構大きい船なので、ガイドビーコンに従ってぶつけないように気をつけてドックに入れる。
奥に進んで、教えられたハンガーに船を着陸させてガントリーで固定する。
ここは酸素はあるけど、慣性制御が働いていない区画だそうだ。
すなわち無重力なので、荷下ろしが楽でいい。
「さて、どうしようかな」
売却はこれからやるとして、直ぐ出発するというのも味気ない。
せっかく苦労して飛んできたんだから、何か形に残る事をしたい。
「んーーーー」
背伸びしてから、再び思案する。
この宇宙は広いんだが、別にその土地特有の何かがあったりは.....あったりは......
「あるな」
俺はオリオンを施錠し、ステーション内に進出する。
多分、来客者向けではない、職員用なら...
「本当にあった...」
食堂である。
古き良き食券スタイルであり、MSCを払って電子チケットを購入する。
見たことのない名前の料理を探して、それをカウンターに出した。
席を探して数分待つこと、
「91番のお客様~」
「今行きます」
番号で呼ばれたので、俺は席を立って料理を取りに行く。
カウンターの上に出された料理を見て、俺は....
「(うわぁ....)」
バカでかい揚げ物なんだが、なんかまだちょっとピクピク動いている。
幸いパンみたいな練り焼きの穀類もあるし、人間が食べる事を想定していない訳ではないようだ。
「.....おいしい」
ナイフもフォークもあったので、それで切り分けて食べてみれば、先入観が無意味なものだとすぐに分かった。
ちょっと筋っぽいが、肉厚で美味しい。
何の肉なんだ....?
調べない方が身のためか。
パンの方は、小麦が原料ではないみたいだが、それでも美味しかった。
原材料はあえて調べない。
食べれるならいいんだ。
「...ん?」
その時、携帯端末にポップアップが出た。
開くと、売却した物資に買い手がついたようで、ステーション内を移送中との事だった。
続けて、SELLの口座に入金があった。
「(移すのは戻ってからでいいか)」
仕入れ金と比較して利益を計算しないといけない。
税とかその辺は、SELLがやってくれるので問題なし。
従業員もいないので、給料分は計算しなくていい訳だしな。
「ごちそうさまでした」
俺は両手を合わせ、名前も知らない生物に感謝した。
そして、プレートを返却口に返して食堂を後にするのだった。
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