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013-グルメと試しの殺陣

前菜はよく分からない野菜のサラダと、同じくよく分からない出汁の効いたスープだった。

サラダの方は、新鮮な野菜と謎のソースの甘味が合わさって、スープはコク深い味わいの出汁が効いていて、決して不味いわけではない。

しかし、メニューを見ても全然わからない。

「ガラプム・サラダ」と「騎士鰯のスープ」だそうだが...


「今回、取引材料としてマサドライトを指定してきたのは分かっているのですが、相場の理解はしていますか?」

「ええ、していますよ。先日の取引でも役に立ちました」

「既に取引を...?」

「はい」


そして、食欲を削ぐ会話。

俺の正体を暴こうとしてくる二人のギラギラとした目つき。

怪しさ満点の商人だからだろうな...


「勿論、市場に与える影響は理解しています。ですが取引量も少ないので、仮に転売されたとしてこちらがそれより低い金額で提示すれば、全体的な儲けはこちらが上になりますから」


転売して価格を倍にしたとして、それより少し低い金額で売り払えばいい。

市場破壊もいいところだが...

元々売ってないものなのだから好き勝手してもいいだろう。

法律を調べた上では、その辺の法律は甘いようだし。


「ですが、我々とてマサドライトの全需要を把握しているわけではありません。あまり大規模に取引を広げると、企業に目をつけられますよ」

「それは...いいことなのでは?」


コーポレーションとの取引は悪いものじゃないと思うが...だが、そうではないようだ。


「コーポレーションは基本的に長期契約ですから、マサドライトの安定供給を求められるはずです」

「...なるほど」


彼等は俺がマサドライトの出所を明かせないことを知った上で、こうして秘密裏に売却先を斡旋すると言ってくれているのだろう。

そして、全員が食べ終わったのを確認したペールは呼び鈴を鳴らす。

入ってきたウェイターが皿を片付け、入れ替わりに入ってきた紫肌のウェイトレスが料理を並べた。

メインらしい、多分...虫かな?

腹の部分だけを取り払ったもので、殻の中に肉と香草が詰まっている。

虫食に抵抗はないので、ナイフを入れて食べ始める。


「そういえば、王国の地理は把握しておりますか?」

「まだです。資本を確保してから、まずは消耗品の売買で慣れようと思っていますから」

「このベリタンの蒸し焼き、アータイム地方にあるトリテダルト星系、第七番惑星の特定の気候帯でしか生息しない特殊な生物の料理なのですよ。もしこれを生かしたまま積んで運べれば、より良い儲けを出すことができる」

「成程」


ただし、と付け加えてから、ペールは言った。


「アータイム地方とクロマース地方の間には海賊の領域が広がっており、そこを回避するためには遠回りをしなければなりません」

「成程、海賊がマーケットを占拠できるわけですか」

「そうは言いませんが、海賊と手を組めば他人より新鮮かつ大量のベリタンを運べるのですよ」


地理というのは確かに重要だ。


「知らずに最短距離を通った商人は大変でしょうね」

「ええ、最短距離とは必ずしも最短になるわけではないのですよ」


ちなみにベリタンの肉は美味しかった。

岩塩のような深みのある塩味と、口に入るとすぐに崩れる肉。

その儚さを楽しむという点では、素晴らしいメインディッシュだった。


「それで...私を測ることは出来ましたか?」


食事も終わったので、遠慮なく俺は核心に切り込む。


「見抜かれていた、か」

「だから言ったんですよ...」


意外にも反応は良く、ペールもマークソンも嫌悪感を剥き出しにするようなことはなかった。

二人はそれぞれいつの間にか注がれたワインらしき何かを飲み干し、俺を見た。

俺は意識を保っていられる自信がなかったので、それを飲むことはなかったが...


「私はジュディ・マークソンです、貴方を試して申し訳ありません」

「私も君を試すような真似をしてすまない」


これで二人は、俺を騙したという罪悪感を背負ったことになる。

もちろんそんな微々たる罪悪感など、大きな額のやり取りの前ではゴミ同然だが...

しかし、決定打を少し後押しするくらいなら、問題ないよな?


「では、商談は成立ということでも宜しいですか?」

「ああ、構わない」

「我々は十分に信頼がおけると判断しました」


二人は頷いた。

どうやら、第一関門は突破したようだ。

俺は喜びを少しだけ表情に浮かべて、残りの料理に手をつけるのであった。


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