115-ハナテック・企業エキシビション1
オリオンはインナーリウムⅡの第二衛星軌道上に位置する、ハナテックのエキシビション会場を訪れた。
あらかじめ指定されたワープ地点にワープすることで、エキシビジョンの会場をネタバレされずに済むらしい。
ワープ地点はトンネル状の広大な空間で、殆ど並ばずにオリオンも入港した。
「へええ〜、シャトルに乗って見学できるんだってさ」
「それって...どういうこと?」
「小回りがきくシャトルってことだよ、すごいなあ」
相当高価なものだろう。
シャトル乗り場で、しばらく立って待つ。
順番が来たので、俺たちはシャトルに乗り込んだ。
どうも制御デバイスは旧式のコンソールらしい。
弄りやすい分、ハッキングなどができないようになっているんだろう。
「先に、いいよ」
「うん!」
「では私がハッチを閉じますね!」
俺たちが席に座ってシートベルトを閉める間に、ペルソナは扉を閉めて気圧を調整していた。
本来は自動で行われる作業だが、彼女にとっては訳ないだろうな。
『ハナテック・企業エキシビジョンへようこそ。ここでは、最先端のテクノロジーを活かした我が社の製品である軌道構造物の模型を展示しております。シャトルで上から下まで見回ることができますので、ごゆっくりどうぞ』
そんなアナウンスが流れると同時に、シャトルは外へと飛び出した。
慎重に操作して、俺はシャトルを減速させる。
シールドがあるのでおそらくはぶつかっても大丈夫だがな。
それよりも...
「わぁ、見て見て! 大きい!」
「うん...これは何だろう?」
すぐ目の前には、大まかに三角錐を上下に取り付けたような形状の構造物が見えていた。
俺がペルソナに目をやると、ペルソナはコンソールについていた赤いスイッチを押す。
『小型構造物:対戦争用“エジャスカイ”』
解説が、ホログラムで投影される。
なるほど、こういう仕組みか。
俺はペルソナに礼を言うと、解説を表示したまま構造物の周囲を見る。
「凄いね、武装がこんなに」
「対戦争用ですからね、軍用とは異なり企業戦争や貴族同士の小規模戦争に使用されるものです。堅牢かつ、火力支援に特化しているようです」
ペルソナは常にインターネットや自身のデータベースを参照して教えてくれる。
いい解説役だ。
アルが理解できない内容だが、アルが請えばおそらくは分かりやすいように教えるのだろう。
「この大きさだと主力艦やヘビー・フレイターは入れないかな?」
『はい、多くは外に桟橋を設置するようです』
「ふうん」
メインの武装は大型ミサイルだが、どうもビームタレットも付けられるようだ。
ミサイルで良いような気もするが.....
対艦性能が低いのか?
いや、オリオンではそれはないしな。
何かの迎撃に使うのかもしれない。
「いきなり戦闘用なんだね」
「産業用のブースに行きましょう!」
「そうだね」
シャトルを動かして、戦闘用のブースから産業用のブースへ移動する。
いくつかの構造物を流し見て、辿り着いたそこには、いくつかの巨大な模型が並んでいた。
俺はシャトルを、一番手前の構造物に近づける。
『中型構造物:採掘保管拠点”アヴマール”』
「へえ、畳んで移動させられるんだ」
「はい、拠点としても利用できますし、いつでも移動させられる点で優秀ですね」
これはあくまで保管庫なので、メイン武装はなくセントリーガンを周囲に配置して防衛するらしい。
ただしシールドはあり、戦艦級の防御が見込めるそうな。
これを落とすには、それなりの数が要りそうだな。
海賊は群れることを好むらしいけど、実入りが減りそうな案件には消極的だという。
「このまま産業用ブースを回ろっか、つまんないかな?」
「ううん、全然! 芸術作品みたいでかっこいい!」
アルには好評らしい。
まあ、サイロなどが巨大すぎて外部に露出しているから、なかなか奇抜なデザインにはなっている。
それが彫刻や壺のような奇抜なデザインに見えても別におかしなことではない。
アルが退屈していないのなら構わない、このまま行こう。
↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。