112-不穏な艦隊
「食べたねえ」
「お腹いっぱい!」
夜。
俺とアルとペルソナは、傭兵街の端を歩いていた。
傭兵御用達のウッドデッキ風酒場で、料理を沢山食べた後だ。
食べている間、ペルソナはずっとこちらを見ていて気まずかったが、その代わり場を盛り上げる天才だったので、周囲の傭兵とも仲良くなれた。
イメージとは少し違うようで、こういう公の場によく出てくる傭兵は血の気が少なく、職業として見ている節があるようだ。
「カイナビールとシツカハッツが人気でしたね、統計上はシツカピューレが人気なのですが.....」
「酸味が強すぎるからじゃない?」
「酸味ですか....?」
「人間って難しいからね」
酒の好みなんてこだわらないだけ良いようなものだ。
嵌ったら抜け出せない沼そのものだしな。
アンドロイドには決して理解できないだろう。
味覚なんて脳のバグみたいなもんだと俺は常々思っている。
「....ん?」
「どうされました?」
ドックに出た俺は、違和感を覚える。
さっきまで傭兵用の格納庫を埋め尽くしていた様々な種類の艦が居なくなり、代わりに手前から12番までを黒い巡洋艦...か戦艦が埋め尽くしている。
「さっきまで色々いたよね?」
「あっ.....お知らせが出てます、艦隊が入港するので、傭兵艦は全て予備ドックに移動になったらしいです」
「なるほど」
オリオンは輸送艦なので免れたらしい。
だが、何か妙だな。
その時、俺の耳にその辺に立って喋っていた男たちの会話が飛び込んでくる。
「なあ、アレ.....クラータの船だよな?」
「ああ。マクシミリアンで何かやってんだよ」
クラータ.....アルブ・クラータの事だろうか?
そういえばハゾーダってやつが何かやってるという話は聞いていたな。
マクシミリアンというのは何だろうな?
「....リリーさん?」
「あっ、ごめんね」
いつの間にか止まっていた脚を動かす。
この場で止まるのも不自然だ。
「アル、今日は早く寝る事」
「えっ? なんで?」
「いいから。明日早くに騒がしくするから」
「はーい....」
そう言いつつも、アルは眠そうだ。
オリオンの元までたどり着くと、荷物が増えていた。
ドローンが届いたようだな。
「アル、先に中入ってて」
「うん」
「ペルソナ、作業用ドローンだけ先に開封して、とりあえずペルソナにペアリングしておいて。荷物をオリオンに入れたいから」
「はいっ、お任せください!」
俺はペルソナに指示を出し、満腹で動きづらいのでその辺に腰かけた。
暫くすると、ペルソナの管理下に置かれた作業用ドローンが、協力してコンテナをオリオンのカーゴスペースへと移動させ始めるのであった。
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