102-スキマ輸送
二日後。
オリオンはインナーリウムプライムから離れることになった。
と言っても、別にクラリウム星系群を離れるわけではない。
『ベルガータ』からの輸送依頼で、荷物をインナーリウムⅤへと移送するだけだ。
「やりにくいな...」
ステーションから出たいのだが、まず出るのも大変だ。
出入り口が空いてないので、管制室に連絡して空くのを待たなければならない。
「まあ、流石にうちのコンピューターは優秀だけど」
オリオンに搭載された航行コンピューターは、事情を理解した上で出航を遅らせていた。
コマンドは英語入力なのだが、トーシロ英語でも理解してくれるのがいい。
ただ、サブフレームがいないのでもう少し意思疎通ができればいいのだが。
『B-45111、出航許可を受諾した。45番出口より10分以内に出航せよ』
「よし」
ガントリーを解除し、オリオンは重々しく飛び出した。
四つあるスラスターのうち、外側の二つが噴射を開始し、徐行くらいの速度で格納庫内を移動する。
オリオンは中型輸送艦なので、他の艦が避けていく。
比較的機動性があるとはいえ、この狭い格納庫の中だからな。
「ここか」
45番出口を使い、一気に加速する。
行きは前の艦に衝突しないようにゆっくりとだったが、こっちでは充分に速度を上げられる。
出入り口のトンネルの非常灯が、間隔をおいて流れていく。
「出たらすぐワープしろだってさ」
「わかった、シートベルト!」
「その通り」
オリオンはステーションの外へ出ると同時にワープの準備をする。
向かう先は、インナーリウムⅤのベルガータ流通ステーションだ。
アルはここぞとばかりに携帯端末を起動して、ゲームをやり始めた。
俺も、携帯端末を起動してゲームをつける。
ワープ中は本当にやる事ないからな。
「(次の星系に行ったら、今度は仕事を大量に入れないとな)」
流石に金を使いすぎた。
運転資金には問題ないが、生活費がな...
諸経費にも使われているからこそ、稼ぎは重要だ。
あの報酬はアルの身柄を預かるだけでなく、「何かあった時のため」だと昨日気付いた。
急いで補充しないといけない。
考えることは多いが、何も考えなくて良くなったら俺は多分...
二度と、進めなくなるだろう。
『ワープ終了まで、残り30秒』
「おっと...ボスは一旦お預けってことで」
「はーい...」
15分程度でワープは終わる。
俺は携帯端末を一旦閉じて、コンソールに向かった。
『ワープ終了まで、残り5秒』
「あ、こっちはそんなに人いないのか」
どこも人で溢れている様子だったが、流石に流通ステーションに人は集まらないようで、船はまばら程度だった。
入港許可を求めると、アンドロイドの音声だった。
人はほとんどいないか、管制室はアンドロイドの制御なのかもしれない。
まあ何にせよ、荷下ろしして報酬を受け取ればそれでいい。
俺は船をステーションへ近づけるように指示を出すのだった。
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