100-携帯を買おう
俺とアルは、ステーションの割と端にある携帯端末キャリア『ベルガータ』のショップへ向かう。
ステーションは環状線が存在していて、中央から少し歩けば端から端に移動できるのが便利だな。
『南中央駅、南中央駅でございます』
「降りるよ」
「うん」
パイプの中を走る車両は、とても速かった。
意外にも客はいなかったので、俺はアルを連れて駅のホームへと出る。
7-α番出口から出て、目の前にベルガータのショップがある。
『15番のお客様は4番カウンターへどうぞ』
『受付番号20番のお客様、メインカウンターへどうぞ』
店に入ると、そこにはよく見た携帯電話ショップがあった。
まあ、ホログラム映像が投影されているくらいか?
この辺はそんなに変わらないんだな。
俺は受付で整理券を携帯端末に転写し、ソファに腰かけて待つ。
「アルはどんなのがいい?」
「えーと....色が白なのがいい!」
「それだけでいいの? 性能とか....」
「僕わかんないし...リリーさんが決めて」
まあ、それなら構わないが。
俺は機種一覧を見る。
現状選ぶなら三種類、重くて性能が低いが頑丈な「デルトラム」か、軽くて性能もいいが衝撃に弱い「アジルカ」、その中間の「ドラン」のどれかになる。
俺は持ち運びならデルトラムかドランだとは思うが、アジルカならアルの望む性能を持っているとは思う。
おまかせと言われた以上は、ドランを購入するべきなんだろうな。
『27番のお客様、8番カウンターまでお越しください』
「...29番だね」
にじゅう...まで聞こえたところでアルが顔を上げるが、俺たちの整理券番号は29だ。
そして順に呼ばれるわけでもない。
まだまだ時間がかかりそうだな。
しかしこのショップ、キッズスペースとかないんだな。
不親切がすぎるような気もするが...
俺とアルは、チェスのようなゲームをダウンロードして遊ぶことにした。
互いに初心者だったが、なかなか勝負がつかずに苦戦していたら、
『29番のお客様、4番カウンターまでどうぞ』
呼び出しがかかった。
俺とアルはカウンターへと向かう。
そこにはアンドロイドが座っていて、俺たちに用件を尋ねた。
「新しく携帯端末を購入したいんですが.....」
『どちらのお客様のものでしょうか?』
「この子のを」
『ええと、お客様は既に携帯端末をお持ちのようですが......プランはどうしていますか?』
アンドロイドに問いかけられて、俺は固まる。
プラン? そんなのあったか?
「すいません、分かりません」
『お教えしますね.....多くの携帯端末は、購入さえすれば利用は自由ですが、通信費がかかります。我々携帯端末キャリアの役割は、お客様によりお得なプランを提供することになります』
「なるほど」
つまり、デフォルトで通信費が微小ながらかかっているようだ。
月替わりに時折挟まる謎の請求はこれだったか。
本当に大した額ではないので、今まで完全に無視していた。
「どんなプランがあるんでしょうか?」
『現在提供中のものですと、例えば......『月決め決済』プランで、一か月の通信費が固定になりますが、星系間通信のみ24時間までになるというものと、『傭兵支援』プランで、契約しますと”ゴールド傭兵”への依頼を三回まで当社が50%負担するものになります』
ゴールド傭兵というのは、要するにかなりのエリートだな。
アイアン、ブロンズと上がって行って、下から四番目。
それなりの信用を持った傭兵って事だ。
それに依頼するときに、半額負担は確かに大きいな.....
ただ、三回までだしな。
月決め決済の方がよさげではある。
「料金表を見せてください」
俺はより良いプランを選ぶべく、アンドロイドに向けてそう言ったのだった。
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