第9話 ミミー、語る
「…………はい?」
このミミックは突然自分を人間だったと抜かし始めた。俺は速攻で詐欺師を見る目でミミーを見た。
その視線にミミーがムッとする。
「なんやねんその視線は~ウチは本当に元人間で探索者やってん、それも将来有望な美少女探索者としてブイブイ言わせとったんねん」
「……ウソを塗り重ねるなよ? 真面目な空気が台無しになる」
「台無しにしてるのはケンちゃんやで、いいから変なツッコミは無しで聞き」
「わっわかった……」
「いいか? まずっミミック族なんて話はウソや、ウチは元は人間で美少女探索者やってん」
俺はツッコミを我慢した。ミミック族の話は嘘だったんだな。
「若手のホープと言われたウチは数々のダンジョンを攻略しては富も名声も欲しいままにしておったんや、けどとある難易度高ランク迷宮に挑んた時……ヤバイ敵と出会ったんや」
ミミーは小さく震える、宝箱なので表情とか一切ない(目玉あるけど表情まではそこまでな)。トラ野郎と出会う前の俺ならこれはミミックの貧乏ゆすりなのかと思ったかも知れない。
しかし今の俺になら分かる。
アレは拭えない恐怖で身体を震わせてるんだと。
「………ミミー」
「何も出来んかった。気がついたらボロボロにやられていた、そんで最後に見た光景はソイツが何かの魔法をウチに向かって発動した所までや」
ミミーにも今の俺と大差ない経験があったんだな。
「気がついたらウチはあの馬鹿デカい塔だけがある迷宮におった。持っていた荷物は大半が傍に落ちとったけど新しい迷宮に移動するための迷宮の鍵だけが全て無くなっとったんや」
迷宮の鍵、俺が拾ったアレか。
「おかげでウチはず~とあのモンスターも出ない塔で空を眺めては朝と夜が変わるのを見とった。本当に退屈で死にそうやった……」
ミミーが俺の方を向いた。
「ウチはいつか、迷宮の鍵を持った探索者が来る筈とずっと待っとったんや……そしてケンちゃんが来た、どれだけ嬉しかったか分かる? あまりにも嬉しすぎて変な小芝居をしてしまったんよ」
あの石像へのアテレコは小芝居だったのか。
「あの時に決めたん、ケンちゃんはウチの恩人や。そんでかなり困っとる。だから出来るだけ助けたいってな」
ミミー! 俺は自分を恥じた。
見た目完全にモンスターだから、いつか必ず裏切ると思ってた。
マジックガンとかを貸して恩に着せて何かヤバイ仕事とかさせてくるかもと思ってた。
助けられながらも信頼しきれない自分がいた。
他人を信じて、心や身体が痛い目を見た経験も一度や二度じゃないからとミミーを信頼する事を恐れていたんだ。
「ミミー……俺は……!」
ミミーは黒い手を出してぐっと親指を立てた。
「何も言わんでええねん、ウチらに言葉は不要やで!」
ミミーーーーーー!
「あっ話しは終わりました? はいこれっ『確定チケット』です。それでは商談も終わったので私はサヨナラ~~」
視界の端で熱い展開についていけない薄情女が光となって消えた。瞬間移動かなんかしたんだろう。
まあんな事はどうでもいい、確定チケットとやらを受け取った俺はミミーと固い握手をした。
「この恩は、必ず返すぞ」
「なら聖なる祭壇で最高の当たりを引いてもらわんとな!」
仕方ないな。
俺の中のガチャ運よ! マジで何とかお願いしまぁあーーーーーーーす!
俺は祭壇の上にマジックチケットをバァンと叩きつけた!
「こぉおいっ! 超絶怒濤のアルティメットレアな大当たりがぁああーーーーー!」
俺が叩きつけた聖なる祭壇にビシビシッ! とヒビがいきなり入った。
「……………え?」
「……………は?」
凄まじい光の柱が祭壇から放たれる。
それと同時に聖なる祭壇が粉々に砕け散った。
なっなんだとぉおーーーーーーーーーーッ!?