第5話 迷宮ガチャ
「何だこれ?」
「ここは聖なる祭壇や、モンスターコインをそこの台座に置いて祈るとそのモンスターコインの価値に相当する物が与えられる場所なんよ」
人の手が入らなくたって何十年と経ってそうな祭壇を前にしてミミーの説明を聞く。
確かにどこか厳かな雰囲気のある場所だとは思うが……。
「それと聖なる祭壇にはモンスターがよってこんけん、今のうちに少し休んだ方がええで」
「そうなのか? それは助かるな」
何気にずっと気を張っていたからかなり疲れた。
祭壇に腰を下ろす、するとミミーが何やらし出した。
祭壇にある台座にこれまでゴブリンを倒して手に入れたモンスターコインを置いている。
「まさかそのモンスターコインを使うのか?」
「当然や、お金は使うときに使わんとね。多分やけどこれだけモンスターコインがあれば水や食料くらい得ることが出来る筈やで~」
マジで?
そんなブサイクゴブリンの顔が刻印されてる銅貨で水や食料が得られると言うのか。
台座にモンスターコインを置いたミミーは黒い手を合わせて何やら無言となる。
すると台座の上のモンスターコインが光となって消えた。
そしてモンスターコインが消えた数秒後、また台座の上に光が集まる。
その光が消えるとそこには……。
「マジか……ペットボトル飲料水とコンビニ弁当が現れただと!?」
「多分ケンちゃんが問題なく食べたり飲んだり出来る物が与えられた筈やで~」
すげぇ、聖なる祭壇マジですげぇ。
神聖だよマジでここは。今後ダンジョンを探索するならマジでこれは生命線になるぞ。
俺は謎のファンタジーパワーにこの時ばかりは感謝した。
そして久しぶりのご飯と水にありついた。
それはもうもりもり食べてゴクゴク飲んだ。
「ゲッフゥ~~~」
「もう、食べ過ぎ飲み過ぎやで。そんなポッコリお腹でダンジョン探索出来るの?」
「ごめん、少しお腹引っこむまで待ってくれ」
「ハアッ本当にケンちゃんはしゃ~ないな~」
ミミーは残ったペットボトル飲料水とコンビニ弁当を自身の宝箱の中に仕舞っていく。
何でもミミーの中に入れとくと食べ物や飲み物が痛んだりしないらしい。
なんかゲームのインベントリみたいなヤツである。
「にしてもこの聖なる祭壇って何なんだ? いくらなんでも便利過ぎるだろう」
「う~ん便利過ぎるって事はないで? 今回はたまたま上手くいっただけや」
「そうなのか?」
「聖なる祭壇はモンスターコインさえ出せば欲しいと強く望む物を大体は与えてくれる。けど余程追い込まれんと純粋に必要な物をイメージなんて出来ひんやろ? そんなんやとわりと望む力が足りんくて変な訳の分からんゴミとかも出て来たりすんねん」
それってある意味運任せの……ガチャじゃね?
俺はどうやら聖なる祭壇こと迷宮ガチャに救われたらしい。
しかし迷宮ガチャか、確かに助かるがガチャだと知るとこればかり頼るのは危険な気もするんだよな。勘でしかないけど。
「これがモンスターコインの使い道ってヤツなのか?」
「もちろん他にも使い道はある、だからまたモンスターコインは集めといた方がええで」
「分かった、それなら今後はどうするかだな」
「ケンちゃんの事を考えるとまだ水や食料は用意したほうがええやろう、ここでしばらくモンスターコインを集めて水と食料を確保しといた方がええで、聖なる祭壇はそんな幾つも迷宮ジャングル内にあるわけやないからな~」
確かに水と食料がないと武器があっても禄に戦える気がしないな。
俺はミミーの提案を受け入れることにした。
「よしっこの聖なる祭壇を拠点にしてゴブリン狩りだな」
「そう言う事やね~」
お腹が膨れれば大抵の事にやる気が湧くものだ、俺達はモンスターコインを求めてゴブリンを探した。
俺が危惧していた遠距離武器持ちのゴブリンはその日は現れず五体のゴブリンを狩った。
そして気がつけば空は夕方だった。
「迷宮にも夜ってあるんだな」
「もちろんあるわ、夜のモンスターは昼間とは毛色が違う。下手に素人が動くと怪我するで~」
「そうか、なら聖なる祭壇で野宿だな。流石に疲れたよ」
「それがええと思うで~」
今日一日、本当に色々な事が起こりすぎた。
考えなければならない事が多々あるが、今は俺自身を生かす事が先決だ、だから余計な事は全て棚上げしておいて取り敢えず寝る。