第31話 ブラックガール
空に現れた無駄に大きな黒い魔法陣、どう見ても食料やら何やらが出て来る感じのヤツじゃないなあれは。俺達はあ然としながら空を見上げた。
魔法陣から何かが現れる。それは以前のハクとも違う竜だった、ハクが東洋に出て来るヘビに近い胴長の龍であるならあれは形的にはゲームに出て来るワイバーンに近い。
両腕が羽根と同化しているコウモリ的な感じと西洋のドラゴン的な身体や脚を持ち長い尻尾も持っていた。しかしもっとも特出してるのはそこじゃない。
コイツ、まるで銃を使ってワイバーンを造形したんじゃないかって感じに身体中が銃なのである。頭もリボルバーみたいだし羽根の所にも尻尾の先にも砲身がある、全身黒々とした機械竜だ。
あと龍だったハク並みにデカイ。
「あれっ本当に俺達を攻撃してこないよな?」
「アレに襲われたらウチらじゃ勝てる気せんね」
「大丈夫! ワタシが守るよ、何よりワタシが復活させた祭壇を破壊したのは許せないし!」
あっそっちが優先なの?
そんなしょうもないやり取りを黙って見つめていた黒い機械龍、するとその巨体が光に包まれた。
知ってるぞこの流れ、そして光か徐々に小さくなり俺達の目の前に着地する。
光が消えた後には静かに立つ1人の美女がいた。
黒を基調としたシックな装いで所々に銀色の装飾品を身につけている、下は黒のタイトなロングスカートと黒のロングブーツ。
長い黒髪を左右でツインテールにしている、瞳の色は深い蒼色をしていた、知的に見えるのは眼鏡を装備してるからなのだろうか?
ハクの事があるから何となくそうなのかと思っていたら再び女性キャラの登場である。
女性はこちらを視認すると口を開く。
「わたくしの名はコクヨウと申します、召喚者の求めに応じ顕現しました。そちらの人間、貴男が召喚者で間違いありませんか?」
何か普通に聞いてきたな、てっきりハクみたく無駄に偉そうなキャラ付けとかしてくると思ってた。
「何か普通に話しかけて来たで、てっきりハクちゃんみたく我は的な事を言ってくると思っとった」
「あんなのその場のテキトーなノリだよ~!」
「……俺は思ってない」
何となくウソをついておこう。ハクはともかくミミーは少し慣れたのかあのビビり倒してた感じはなくなっている。俺も同様だ。
俺は数歩前に出て対応に当たった。
「ああっ先ずは自己紹介をさせて欲しい、俺は矢守ケンジ、こっちのミミックはミミーでそっちの白い刀はハクだ」
「よろしゅうなコクヨウちゃ~ん!」
「よろしくコクヨウ!」
「……………よろしくお願いしますわ」
挨拶を済ませるとおもむろに動くコクヨウ、何故か俺のマジックライフルを手にした。
「随分と無茶な使い方をしましたね? 素人が魔力を無理矢理注ぎ打ち込んだのでしょう、銃が痛んでいます」
「……マジか」
流石にゴブリン軍団との死闘があったからな、無茶をさせたのは事実だ。
「もう少し銃を労ってあげて欲しいですね」
「悪いな、今回の戦いではそこまで余裕がなかった。次からは無茶を控える様に努力する」
幾ら連射する機能があるからといってもやり過ぎればそうなるよな。ここは素直に反省するのみだ。
「……少し意外ですね、こんな小言を真に受けるなんて」
「そうか? 俺は銃に全く詳しくないからな、ならそれを知ってそうなヤツの助言を聞くのは当たり前だろう」
むしろあのリボルバードラゴンみたいな外見で銃に何の思い入れもありませんってヤツならそっちの方が呆れるわ。
「フフ~ン、ケンちゃんは素直ないい子なんやで~」
「そうだね~変なプライドとかないもんね~」
黒いクモ脚やら黒い手やらを生やしてる謎宝箱とその手に握られた喋る奇怪の太刀がなめた事を言ってるが無視した。
「…フッまあ良いでしょう。それでは我が召喚者よ、わたくしは何をすればよろしいのでしょうか? 如何なる障害もこのコクヨウが取り除いて差し上げますわ」
微笑を浮かべ語る彼女にあるのは自身の実力に対する絶対の自信か。俺みたいな普通の人間なんぞにはまるで測れない力を有しているんだろうな。
「あっちなみにコクヨウを召喚してしまったから魔力的な余裕がまた無くなったみたい。ワタシはまたしばらく休むからね~」
そう言ってハクがまた無言になる、ミミーがハクの太刀をブンブン振っても反応がないところを見ると本当にお休みモードって事か。
「ミミー、刀を振るのをやめなさい」
「分かったで~」
「コクヨウ、取り敢えず俺達の今の状況について話す。まあ見てのとおり迷宮を探索してる訳だがな」
「ええっお願いしますわ」
コクヨウと言う規格外の戦力の加入は大きい、しかしその結果として食料やら飲料水の補充が全く出来なかった。
ここは慎重に今後の迷宮探索を見当しないと詰むことになりかねないな、気をつけて行こう。




