第26話 切り札
「ゴッゴブッ!」
ゴブリンジェネラルが右手の戦斧を盾に、そして左手の戦斧を投げつけようと構えた。
だが流石にその動きは遅すぎた。
「これで終わりだ」
チャージしたマジックライフルの撃つ、ドッと言う音と反動、ライフルの銃口から放たれたのはかなり大きな青いビームであった。
その光がゴブリンジェネラルの巨体を一瞬で呑み込んだ。
そして光が消えていく、舞い上がった土煙が晴れるとそこには上半身が無くなったゴブリンジェネラルがいた。
ゴブリンジェネラルが消滅する。
「………俺達の完全勝利だな」
「そやね! ウチらの勝ちや!」
土煙が完全に晴れた。
………………ん?
「なあっ何でゴブリンジェネラルが消滅したのにヤツの戦斧がまだ残ってんだ?」
「は?」
見るとヤツが持っていた戦斧の片方が地面に突き刺さっていた、場所はゴブリンジェネラルが立っていた場所から斜め左側の後方である。
まさかヤツは投げると見せかけてあの戦斧を後ろに投げたのか?
何でだ? 自分が死ぬのに今さら武器なんて残して何の意味があるって言うんだよ。
その時、戦斧が赤い光を帯びた。
大きな魔法陣が地面に描かれる、何となくだがあれと似たような物を俺は知っている気がした。
「あっあかん! あれは……召喚魔法や!」
「………マ~~ジかよ」
どうやら俺は、まだファンタジーをなめてらしい。
まさか武器にんなふざけた魔法が付与されてるとか思わないじゃん、或いはそう言う魔法武器だったってか?
ふざけてるな、マジでふざけてる。
赤く輝い巨大な魔法陣からせり上がる様に出現したのはこれまたゴブリンだった。
しかしデカイ、ゴブリンジェネラルよりも倍以上デカイぞ。マジで身長十メートル以上あるじゃないか?
殆ど巨人である、ゴブリンジャイアントとかか?
しかし赤色の豪華なマントを羽織り、頭には王冠、そして金色に輝く大剣を持っているぞ。
どう見てもゴブリンジェネラルより偉そうなヤツである。
「なあっまさかアレって」
「あっあれは……間違いないで、ゴブリンキングや……」
キ~ング、ゴブリンキ~ングか……。
ほぼ間違いなくいつぞやミミーが言っていたゴブリンがやたらと勢力を増している原因の特殊個体のモンスター、それはコイツだと思われる。
だってキングだしなキング、そんなのが誕生すればゴブリン達がやる気になるのも仕方ないって話だ。
ど~して俺がいきなり迷宮に放り込まれたタイミングでそんなキングなモンスターが誕生するかね?
俺の迷宮サバイバル、何かに呪われたりしてるのだろうか?
ただただ呆然とゴブリンキングの巨体を見上げていた俺達である。
すると俺達に声をかけてくる者が現れた。
「フフフッまさか、我々の悲願を人間とミミックの珍妙なコンビに阻まれるとはの~」
女の声だ、ゴブリンキングは口を開いていない。
ならば別の何者かも召喚されたのか!?
「気をつけろ、ゴブリンキング以外にもいるぞ!」
「誰やっ!?」
見るとゴブリンキングの頭上に魔法か何かで浮いている女がいた。
黒いサラサラのロングヘアーと金色の瞳、身長は普通の人間の女性の大差ないと思う。
服装は赤いドレス姿でヒールまでしていた、手には豪奢な金色の杖を持っていた。
しかし肌が緑色だと……いやっそもそもさっきまであそこには誰もいなかったぞ。
「気をつけるんやケンちゃん、アイツはテレポートを使ったんやと思う、もしテレポートが使える上に戦闘能力もあるならかなり高位の魔術師の筈やで」
そりゃそんだけ出来れば高位の魔術師だろうな。
「ってかあの女、肌が緑色してるがまさか…」
俺の疑問の声が聞こえたのか緑色の肌をした女が答えた。
「我が名はゴブリンクィーンのゼネリア、いずれゴブリンの王国をこの密林に建国する存在である」
「ご丁寧にどうも、俺は矢守ケンジでこっちのミミックはミミーだ」
「フンッ人間やミミックの名前などどうでもよいわ実に下らん! よくも我が軍勢を壊滅させてくれたな、その罪……死を持って償わせてやる!」
軍勢って……流石にそこまではなかっただろう。
偉そうに語る建国作戦もスタートしたばかりだったのか戦力も俺達でどうにか出来る程度のレベルだったし。
「何が罪だよ、こちとら普通にこの迷宮ジャングルから脱出出来れば良いってのにその邪魔ばっかりしやがって!」
「黙れっ! 我らの邪魔する者は全て死刑じゃっ!」
なんつ~独裁国家を作る気だよこのゴブリンクィーンのゼネリアってヤツは。
こりゃ建国なんて阻止して正解だったな。
そうっ言っては何だが俺達は既にそんな阿呆な国の建国作戦なんて潰せるつもりでいた。
コイツらはゴブリンジェネラルよりも強い、そんなのは見れば分かる。
しかしな、こっちにも切り札があるんだよ。
「聖なる祭壇での仕事を終えたんだし、アイツなら直ぐにこっちに来るよな?」
「多分来ると思うで? スキルで確認し~」
【サーチ】を発動する。
やはりもう直ぐそこにいた。
「………何? 貴様ら、何故そんなに余裕でいられると言うんじゃ!」
キレるゼネリア、キレられる俺とミミー。
しかしヤツの言葉に答えたのは俺達じゃなかった。
「そんなのさ~ワタシがいるからに決まってるよね!」
「ちっ新手か!?」
そうっ俺達の最強の切り札、ハクさんのご登場だーーーー!




