第2話 ミミックのミミー!
「……それで、結局アンタは何なんだ? アンタが俺をこんな所に連れて来たのか?」
「そんな訳ないやん、ウチはここで新たな探索者が来るのを待っとっただけやで~」
「探索者?」
「そうそう、迷宮に向かう命知らず達の事やで~」
命知らず……俺はどちらかと言うと命は大事に派閥の人間なんだけどな。
「さっきも言ったけど、俺は帰りたいんだけど」
「元の世界に帰る方法ならさっき言ったやん、結局は迷宮に挑むしかここで何かを得る方法はないんやで~」
この喋る宝箱の言うことを信じろと?
しかしなら他に当てがある訳でもないし……結局はなるようにしかならないって事か。
「………ならその迷宮って所にはどうやって行くんだ?」
「簡単やで~あんさんがここに来るときに、なんか変わった物とか拾わんかった?」
「……これのことか?」
俺は謎の鍵を見せた。
「あっそれやね、それを手に持ってこっちについてきてや~」
言われるがままについてく、宝箱は六本の脚を器用に使って歩いていった。
宝箱の向かう先には石像とはまた違った物があった。
それは扉のような物だった、但しあるのは形だけでドアもドアノブもない。石を積んで作られた扉のモニュメントととでも言えばいいだろうか。
「この変なモニュメントがどうしたんだ?」
「ふふん、良いからその鍵を近付けてみぃ~」
何だってんだよ…。
俺は鍵を持って更に近づいた。
すると鍵が光り出したぞ。
「……ッ!?」
謎の鍵から溢れた光、それがモニュメントに向けて放たれた。
するとモニュメントのまん中の空洞に光が広がる、扉の中に光の通路が現れた。
「……なんじゃありゃ」
「アレが迷宮へと続くダンジョンポータルや、アレを開けれるんはキーとなるアイテムに選ばれた人間だけなんよ~」
「…マ、マジか。なら本当に迷宮とやらに行けっての? 俺もうくたびれたアラサーだぞ、冒険とかしたら死んじゃう系の」
「死にはせんで、何しろここにはウチがおるからな!」
宝箱が開いた、そこには真っ黒な闇があるだけだった。
その闇の中から何かがムニムニと出て来る、それは真っ黒い手だった。
人間の手を少しはデフォルメされたような手だ。
その黒い手には何かが握られていた。
「それは……拳銃か?」
「一番ランクの低いマジックガンや、けど魔力さえあれば幾らでも弾を撃てる代物やで。迷宮のモンスターと真っ向勝負とか無理無理ってあんさんにはうってつけの代物や!」
………エッ!? いんのモンスター!?
もしかしたらいるのかな~と思いながらもいたら嫌なので全力でその話題に触れないようにしていたってのに!
「それにこのマジックガン、射つのに魔力がいるのか? そんなの俺が持ってる訳ないじゃないかよ」
「何言うてんねん、魔力ない人間がここに来れる訳がなにやろう」
えっそんな設定なの?
しかし仮にこのマジックガンとやらが使えたとして、そもそも……。
「いきなり変な場所に放り込まれた上に、モンスターとかいるのはダメだろう。どこまでおっさんを殺そうとしてんだよこの場所は……」
「何言ってんねん、だからこそこの心優しきミミーちゃんがあんさんのサポートをしてやってんやで~」
だからお前、不意打ちとかで騙し打ちてくるタイプのモンスターじゃん。
そんなん信用出来……あっそう言やどう見てもコイツもモンスターだったわ。
俺は既にそう言う世界観に捕らえられていた事を理解した、抵抗なんて最初から無意味だったのだ。
「………アンタもモンスターじゃね?」
「しっ失礼な! ウチは由緒正しきミミック族のミミーちゃんやで! 迷宮に巣くう知性も理性も禄にない化け物共と一緒にせんといてやーー!」
どうやらこれから行くことになる迷宮のモンスターは知性も理性もない化け物共らしい。
お願いだからそこは交渉とかで良い感じになる設定が欲しかったわ。
「ハァッ……つまりここから先は化け物だかけの迷宮で、そこを進まないと日本に帰れる方法は分からない。だからこのマジックガンとやらで戦えって?」
「その通りやで~気ぃ抜いたらマジで死ぬから気をつけないかんで~」
なんてあっさりとした口調で死ぬとか言うんだこの宝箱は……。
まあさっさと日本に帰りたいのは本音だ、その為にやるしかないのなら……行くか。
「ハァ~~~、分かったよ流石に食料も水もないこんな所で餓死とか勘弁だからな。行ってやるよそのヤバイ迷宮って所に!」
「流石ウチが見込んだ男やで! ならさっさと出発進行や~~~!」
こうして俺は迷宮とやらに行くことになった。
この時は知る由もなかったが、日本までの道は………まだまだ遠い。