第17話 ゴブリン掃除
なんだあの数、明らかに異常だな。
「どうしたんケンちゃん?」
「ああっミミーちゃんの予感、当たってたわ…ジャングルの中に昨日まで居なかったゴブリンが物凄い数いるみたいだ…多分三桁以上以上いるぞ」
「あちゃ~そうか~」
ゴブリンが多いなとか思っていた、しかし余裕を持って倒せるモンスターが多いならそれにこしたことはないと俺は考えていた。
けどあの数はちょっとヤバイ、百や二百じゃきかないぞ。明らかに対応仕切れない程に大量だ。
一体なんでそんな数のゴブリンがいきなり現れるんだ?
なにかしら心当たりがありそうなミミーに話を聞いてみる。
「ミミーちゃん、あの大量のゴブリン達について何か知ってるのか?」
「まあね……多分の話やけど聞いてくれるか?」
「分かった、聞こう」
「恐らくゴブリン達の巣に指揮能力に秀でた特異個体のゴブリンが生まれたんや」
特異個体、ゲームで言えばレアモンとかって呼ばれる稀に出現する普通のモブとは違う大抵は元の個体よりもずっと強かったりするモンスターの事だとミミーに聞いた。
時間のある時には俺も勉強として迷宮やモンスターの事を少しは説明を受けているのだ。
しかしゲームなら何とも思わないレアモンの出現だが、これがリアル迷宮だとシャレにならない事態になるようだ。
「ハッキリ言ってそんな大量のゴブリンを支配下に置けるゴブリンの上位種となるとキングかクィーンしかおらん。けどこんな低ランクの迷宮でそのクラスのモンスターの特異個体が現れるなんて聞いた事がない……これは明らかに異常事態や」
異常事態と言われても、そもそも変な鍵を拾ったらなんやかんやありこんな迷宮ジャングルに飛ばされてる時点で異常事態である。
これまでの旅路を振り返る、異常事態のオンパレードである。今も目の前に流暢に喋る宝箱とかいるんだぞ。
「異常事態か、しかしこんな時は探索者って連中はどうしてるもんなんだ?」
「迷宮の危険度が一気に跳ね上がっとる、普通ならさっさと引き上げる選択肢一択や」
「あの鍵を使えばここから脱出とかって出来るのか?」
「無理や、基本的にキーは一方通行や。だからケンちゃんが元いた世界に戻るには別のキーが必要や」
謎の鍵についても少し話を聞いた。
あの鍵の入手方法は基本的にその迷宮のボスを倒すと確実にゲット出来るらしい、それ以外にも迷宮ガチャでも低確率ながらゲット出来るのだそうだ。
「ならやるしかないじゃないか、勝算とかあるのか?」
「ただのゴブリンでも統率がとられてるとなると厄介やね、普通は頭となるヤツを狙うんやけど…」
「普通大将がいてもそのゴブリンの巣の奥にでもいそうだな」
「そうやねん、ゴブリンの巣の場所なんて把握しとらんウチらは先ずこの広いジャングルからそれを見つける所から始めんといかんねん」
つまりは超大変って事だ。
「多分昨日のゴブリン達は囮か偵察部隊的なヤツらやったんや。ソイツらが帰って来なかった所にはああして大量のゴブリンを送り込んで物量で縄張りを広げていったんやと思う」
「そう言うのは余所でやって欲しいよな」
迷宮のモンスター同士が勝手に潰し合うのならいいが変にオツムを使うタイプのモンスターとか出て来んなよってのが本音だった。
かといってこれまでモンスターコインを大量に得るだけの獲物だったゴブリンに逆に狩られるなんて展開はごめんである。
やられたくないなら……やるしかないか。
俺はマジックガンを出してミミーに言った。
「この聖なる祭壇にゴブリン達が来る可能性は?」
「まずない筈や、連中が幾らいてもこの祭壇が存在する場所にモンスターは足を踏み入れてこんし攻撃もしてこない筈や」
「ならある程度数を減らしたら休憩は取れそうだな」
つまりは心が折れなければ勝ち目は十分にあるって事だ、なら俺は戦える。
「ミミーちゃん、俺は連中を倒して一気にモンスターコインを稼ごうと思う」
「…………フッええで、ウチはケンちゃんのやりたい事をサポートするだけや!」
話しは決まった、俺達は大量のゴブリンが潜む森へと足を踏み入れる。
◇◇◇◇◇◇
マジックガンを撃つ。
既に十体以上のゴブリンを仕留めた、俺の【サーチ】とマジックガンの相性はかなり良いので戦闘に慣れてくればさほど手間なくゴブリンを倒していけている。
モンスターコインの回収はミミーに任せた、俺は戦闘経験が浅いので戦闘に集中したかったからだ、ミミーもまたゴブリンを十体以上は倒しながらせこせことモンスターコインを回収していった。
ゴブリンは棍棒持ちの普通のヤツしか今の所は現れてはいない、しかしミミー曰く、キングやクイーンが出現したのならそれ以外の戦闘力に特化した上位個体が必ず現れるらしい。
ソイツらの戦闘力は油断出来ないと言われた、俺は【サーチ】を常に発動して万が一にもトラ野郎の時みたいな事にはならない様に細心の注意を払った。
………新たなゴブリンを発見、マジックガンを撃つ、頭にヒットして倒せた。
そして次のゴブリンを探す。
「…………いたな」
普通のゴブリンの倍以上の体躯を誇るゴブリンらしきモンスターを発見した。