第16話 ゴブリン増殖?
「………おかしいで」
「? 何がだミミー」
ゴブリンとの戦闘を終えたタイミングでミミーが何やら違和感を覚えた様子だ。
俺はモンスターコインを回収しながら聞いた。
ここジャングルだから小さいコインとか直ぐに見失うので直ぐに回収するのが鉄則だ。
「いくらなんでもこうもゴブリンばっかりしかいないって言うのはちょい妙や、普通はゴブリン以外にもゴブリンと大差ない戦闘力のモンスターが出て来る筈や」
言われると確かに、ゲームだと初期のステージとから出て来る敵は限られる。
しかしそれでもゴブリンだけしかでないステージとか早々ないだろう。
そんなのあったらとんだ手抜きゲーだ、他にも青いプルプルとか角が生えたウサギとかデカイイモムシとか、俺の想像する雑魚モブの代表格は幾つかあった。
ソイツらが全くいない迷宮なのか?
いやっ以前ハクがジャングルを広範囲に吹き飛ばした時は確かに他のモンスターのコインもあった筈だ、ならやっぱり他のモンスターもいる。
「俺達は今、迷宮をどんどん進んで行ってるだよな? なら普通はもっと強いモンスターが出て来る様になったりするもんなのか?」
「確かにそれもある、ウチが知る情報ならそろそろ狩りやすいゴブリンが生息するエリアは抜けて大きな虫型や大型の獣型のモンスターが出て来てもおかしくない筈なのに」
「あのトラ野郎を相手にするくらいなら、まだゴブリンの方が遥かにマシだけどな」
「けどゴブリンばかりやといつまでもレベルアップせえへん、モンスターコインも最低ランクの物しか集まらんねん」
ゴブリンのモンスターコイン、最低ランクなのか……流石にその扱いに不憫を覚えるぞ。
「まさかゴブリンがその虫型とか獣型のモンスターを狩って生息するエリアを拡大してるってのか?」
「………可能性としてはあるで」
「ゴブリンがどうやって格上相手に勝んだよ、やっぱり棍棒以外の武器を持ってるゴブリンが沢山いるのか?」
「それもあると思う……けどもしかしたらそれ以上に厄介なのがゴブリンの後ろにおるかも知れんで」
「…………」
俺はなんか嫌な予感がした。
その日は更に三度ほど複数のゴブリンを発見して倒した。モンスターコインは全て回収して聖なる祭壇へと帰還する。
ミミーとの話し合いでモンスターコインはしばらく貯める事にした。
何でも強力な武器とかマジックアイテムには大量のモンスターコインが必要らしい。
生活物資にはまだまだ余裕がある、これらを上手いことやりくりしてモンスターコインを貯めていきたい。
その日も風呂に入り休む、流石に酒盛りはしなかったぞ。
そして翌日、俺は自身のステータスを確認した。
【名前:矢守ケンジ】【種族:人間】
【性別:男性】【職業:無職】
【レベル:5→6】
【筋力値:19→21】【魔力値:63→67】
【器用さ:42→45】【知力:27→28】
【俊敏値:25→28】【幸運値:20→22】
【保有スキル:サーチ】
知力の伸びが……ウソだろう? マジで俺の脳はこれ以上の成長が見込めないってのか?
だっだが他は概ね成長してる、やはりアレだけゴブリンを倒せばレベルアップしてもおかしくないと思ってたんだ。
しかし未だに一番高い魔力値を生かせる攻撃魔法系のスキルを得られていない、マジックガンがあるから一応は魔力値の高さは生かされてる筈だがもう少しステータスに見合ったスキルがいい加減欲しい所だ。
ミミー曰くスキルの取得は才能とか運の世界なので気長に期待するしかないらしい。
【サーチ】があるだけでもありがたいと考えるべきなんだろうな。
朝食はインスタントのカップラーメンとコーヒーを準備する、お湯はミミーにお願いした。
栄養バーとかも幾らかゲット出来ていたのでそれで栄養方面は補給しておく。
何気にインスタントコーヒーがミミーには一番受けが良かった。
しかしミミー的にはまだ香りが弱いとも言われた。
「ウチが知るコーヒーはもっと気品のある香りが特徴的だったんやで~」
「……コーヒーとか嗜むタイプの人間だったのか?」
「当たり前や!」
あまりそういったイメージがなさ過ぎたのでつい余計な事を口に出してしまった、反省である。
個人的にはそこまでコーヒーとか好きでもない、眠気覚まし的なヤツとして飲んでるだけだ。
それに朝にコーヒーとか飲むと何となく優雅な気分になれるのである、今度迷宮ガチャをするときは高級なインスタントコーヒーをゲットしてこの宝箱の鼻をあかしてやりたいもんだ。
そんなやりとりをして再び迷宮探索へと繰り出そうとした時だった。
不意にミミーが俺に言った。
「よしっそれじゃあそろそろ……」
「…ケンちゃん待って」
「ん、どうかしたのかミミーちゃん」
「な~んかやな気配がすんねん、ケンちゃんのサーチでジャングルの方を確認してくれへん?」
「? 分かったよ」
俺は【サーチ】を発動した。
「…………ッ!?」
そして驚愕する、何とジャングルの至る所からゴブリンの反応がしていたのである。
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