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第14話 アラサー野郎と乾杯

 この迷宮ジャングルに来てから俺はお風呂に入れていない、基本的に毎日風呂に入り頭と身体を洗うのが当たり前だっただけに汗かきまくった初日にお風呂に入れなかったのは地味に地獄だった。


 ここがジャングルな上にモンスターとか出て来る異常な場所だからこそ何も文句は言わなかっただけで内心はストレスマックスだった。


 しかしお風呂は無理でもペットボトル飲料水の水をケチケチ使えば頭や身体は洗えるだろう。

 俺は……アラサー野郎だ、それでも清潔でありたい、加齢臭を否定出来なくなり始めた年齢の上にこれ以上の異臭を放つ事態になっては俺の心が死んでしまう。


 身だしなみはミミーのおかげでゲットしたガチャアイテムの装備でなんとかするにしても中の男は身綺麗にしとくにこしたことはない。


 俺は身体を洗う、それも今すぐにだ。

「やっぱりこの風呂が使えればな~」

「それ風呂なん?」

「そうだ、これに大量の水を入れて熱してお湯にすればお風呂タイムが出来るんだけどな…」


 本音では全然お風呂を諦めきれない、この迷宮ジャングルの何処かにはジャングルなんだし大きな川とかあるんじゃないか?

 そこで水を汲んでお湯を作れれば…とかついつい考えてしまう俺がいた。


「大量の水ならあるで!」

「いやっあるけどあれは飲める貴重な水だからさ」

「何言うてんねん、ウチの中の水が貴重なのは分かってん。そうやなくて……コイツを使うんや!」


 ミミーが自分の中から何か取り出した。

 それは何かの木の杖だ、先端に青い宝石みたいなヤツがくっ付いている。

 そんな杖で何を……。


「まっまさか……その杖は!」

「まあ見とき~」


 更にあの風呂まで中から……それどうやって出した?

 なんかあの青いロボットのあのポケットから大きめのヤツを取り出す時みたいに出て来るアイテムの形が歪みながら出て来たぞ。


 そして出て来ると普通に元通りという、まさかあのアニメの感じをリアルで目にする事になるとは。

 凄まじいショックを受けてる俺を尻目にミミーは風呂に近づき杖をタクトのように振るった。


「湧け、恵みの水よ!」


 風呂を見ると底からいきなりこんこんと水がマジで湧き出ていた、なんつーファンタジーだ。

 まさか杖の一振りで何もない所から水が出て来るとか、本当に何でもありだな。


 少し待つと風呂には大量の水が入っていた、これなら問題なく風呂に入れる。


「こんな所やね、後は温めればええねん?」

「あっああ……けどこの量の水をか?」

「余裕やね、ガチャアイテムは無敵やねん」


 無敵ではないと思う。

 今度は赤い宝石が付いた杖を取り出したミミー、また杖を振るった。


「火よ、起これ!」


 風呂の上に火の玉が一つ現れる、その火の玉がそのまま風呂の水にダイブした。

 ジュワジュワブクブクと火の玉が風呂の水を熱していく。

 まさかこんな力技で……。


「フフフッ驚いたん? この杖はそれぞれアクアロッドとファイアロッドって言う属性魔法が使えんヤツでも杖が対応した初級の属性魔法が使える杖やねん」


 マジか、そんなのがあれば俺でも魔法が使えるんじゃないか?

 まさに夢の装備じゃないか。


「凄いな、本物の魔法の杖か!」

「そうやで~まあ強力な魔法は無理やけどね、綺麗な水を出すとか松明代わりの火の玉出すくらいならウチでも出来るんよ」


 いいな~魔法の杖とか俺も欲しい。マジックガンも悪くないがやはり浪漫なんだよ魔法って。

 こうして俺の目の前にお風呂が現れた。

 心の底から嬉しい、生きてて良かった。


 そして俺はお風呂タイムを堪能した。

 しかしアラサー野郎のバスタイムなんてお呼びではない事は百も承知、オールカットである。


 シャンプーとボディーソープで全身の汚れとアカを全て落とし、アラサーは綺麗なアラサーへと進化した。

 ミミーも宝箱ながら身綺麗にしたいと言うので一応洗う。


 すると思いのほかご機嫌になった、どうやらボディーソープはお気に召したみたいだ。

 シャンプーは頭髪なんてないので無視していた、そして洗う時は宝箱ボディの所々についてる目ん玉には泡が当たらないように気をつけるように言われた。


 目ん玉を洗う時はしっかり目を閉じている時に洗うようにと念を押された。

 そしてお湯が緩くなるとさっさと上がってタオルで身体を洗った、このタオルもガチャアイテムだ。


 そして心身共にリラックス出来たので……。


「それじゃあコイツで一杯やるか!」

「なんなんその銀色のヤツは?」


「これは缶ビールだ、飲むと幸せになれるある意味魔法の飲み物だな」

「へえ~そうなん?」


「飲んでみるか? ここならモンスターも来ないんだし」

「ええで~ウチは飲まず食わずでも生きていけるけど食い物や飲み物の味は分かるんよ~」


「そうか、なら……ほれっ」

 俺は缶のビールをミミーに渡す、そして乾杯の作法について伝授した。

 お互いに乾杯の言葉を言って軽く缶を当てるのだと。


「それじゃあ……乾杯!」

「乾杯や~~!」

 本当に久しぶりのお酒である、俺は心の底から幸せを感じた。


「…………うわっ何これ、にがっ!」


 フッお子様かよ、ミミー。


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