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第11話 鞘をつけたまま一閃した

 ハクが右手を上に伸ばす、すると何もなかった空間にいきなり太刀が現れた。


 派手な装飾がされた黒い鞘の太刀だ、和風ファンタジー系のゲームで強キャラが振り回してそうな感じのヤツだな。


 しかし問題は太刀よりもトラ野郎である。

「トラ野郎はまだジャングルから出て来ないな」


「恐らく自分が見つかっとるなんて考えてないで、ヤツはジャングルにこっちが突っ込んで来て確実に仕留められる時が来るまで待ってんねん」


 なんてトラ野郎だ、強いんだからもっと余裕とかこいてジャングルから悠々と出て来いってんだ。

 しかしジャングルは静まり返っている、本当にさっきの雄叫びの主がこちらを見ているのか?


 完全なる雑魚である俺には全くヤツの存在を認識する事が出来ない。


「さてっそれじゃあ行くよー」


 ハクが宙に浮いた太刀を掴む、てっきり鞘から太刀を抜くかと思いきやその鞘に収めたままハクは構える。


「───フンッ!」


 ハクが太刀を振るった、鞘をつけたまま一閃した。

 すると太刀から強烈な爆風が向き起こった、ゴオッと言う音がしたと思ったらジャングルに向かってその爆風が叩きつけられた。


 なんつー光景だ、まるで圧縮した嵐をそのまま撃ち出したかの様な何かがジャングルを蹂躙していく。


「なっ何だぁっ!?」

「太刀を振るって魔力を飛ばしたんや、それにしても……とんでもない威力やね」


 確かに、爆風はジャングルの一部を易々と薙ぎ払い木々を吹き飛ばした。

 目の前のジャングルが地面ごと消滅して土煙を上げているのだ、ミミーの言うとおりとんでもない威力だな。


「ハッハク……」


 話しかけようとしたらハクが消えた、光ってはいなかったので魔法的な何かによる瞬間移動とかじゃないと感じた。


 まさか普通に速く動いただけとでも?

 もしそうならやっぱりとんでもないとしか言えないな。


 するとまた一瞬で姿を現した。

 その手には何故かモンスターコインが何枚も握られていた。


「はいこれっ多分この中にそのトラ野郎ってモンスターのコインが混ざってると思うんだけど」

「まさかあの一撃で倒したん!?」


 あ然とする俺とミミーだ。

 ハクは当然だとばかりに話す。


「そりゃあそうだよ、何となく居場所が分かったんなら後はその辺りをまとめて消し飛ばせば確実に倒せるでしょ?」

「「……………」」


「あっ当然鞘はそのままにしたのは理由があるよ、加減したからジャングルを全部消し飛ばせしたりはしてないでしょ? そう言う所はちゃんと考えてるんだよワタシってさ!」


「「……………………………」」

 コイツ、規格外過ぎるわ。

 ハクからモンスターコインを受け取る、ゴブリンのコインがあったが他にもよく知らないモンスターのコインもあった。


 その中にトラの顔が刻印されたモンスターコインが確かにあった、つまりはあのとんでもないトラ野郎は姿を見せる事すらなくハクに倒されてしまったって事だ。


「あっちなみにワタシがモンスターを倒してもケンくんの魔力はちゃんと強化されてる筈だよ?」

「そうなのか!?」


 どうやら経験値はパーティーで分配制らしい、それはとても助かる話だ。


「……まあ、ずっとワタシにおんぶに抱っこって訳には行かないんだけどねぇ」

「……え?」


 するとハクの身体が光になった。

 その光はハクが手にしていた太刀に吸い込まれる。

 どっどうなったんだ!?


「まさか、魔力切れやないの?」

「魔力切れ?」


「そうや、ハクは聖なる祭壇を使ってケンちゃんに召喚された召喚従魔サモンサーバントの一種やと思う。そして召喚従魔は契約した相手の魔力に応じた力しか振るうことが出来んねん」


「まさか鞘をつけたまま攻撃したのも」

「恐らくその制限を意識して出来る限り攻撃力を抑えたんや」


 つまり俺がハクの予想以上に弱っちい魔力しか持ってなかったからハクは消えたのか?


「アハハッ別に消えて無くなった訳じゃないからね?」

「ハク! 大丈夫なのか?」

「ハクちゃん!」


 俺は咄嗟にハクの太刀を持ち上げる、思いのほか軽いな。

 間違いない、この太刀からハクの声が聞こえた。


「大丈夫だよ~ちょっと張り切り過ぎただけ、少しこの状態で眠れば直ぐに復活するからさ」

 それだけ言うと太刀からハクの声は聞こえなくなった。これが眠ったって事か?


「ケンちゃん、ハクは直ぐって言ってたけど多分数日は目覚めんと思うで?」

「マジかよ、やっぱりいきなり無理をさせすぎたって事か?」


「いいや……単純にハクは人間に姿を変えても人間やなくて龍や。人間とは時間の感覚が違うってだけや」

「そっそうか……」


 ミミーがそう断言するならそうだと進じよう。

 しかしここから先を考えると憂鬱になる。


「んで……これからどうする? モンスターコインがあっても聖なる祭壇がパーになってんじゃな…」


「ならまた新しい聖なる祭壇に移動するで、こんだけ大騒ぎ起こしたら迷宮ジャングル中から好奇心旺盛なモンスターが集まってくるかも知れへんからね」


「分かったなら直ぐに移動だな」

 目下の危険は取り除かれた、しかしまだまだ危険なジャングルサバイバルは続きそうだ。



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