命と尊
「姉ちゃん。」
静かな暗い森の中。そこには微かな水の流れる音と、小さな息づかいしか聞こえない。
「……何?」
冬の森では悴むのであろう小さな手を擦る。
「死んだら普通はどこに行くの?」
幼い声が森の中を通り過ぎる。
「……さぁ、わからない。何もないのかもね。」
興味がないとでもいうような声色で答える。
しかし、微かに震えている。
「もう、無理かもね。」
その少女は少し悲しげに言った。
その後、少女は立ち上がり、少年を連れて水の流れる音のする方に向かった。
その間中も、裸足の足では何も守れず、瞬く間に傷だらけになっていった。
それでも歩くのをやめない。
「痛い、痛いよ、姉ちゃん。」
「もうすぐだから。」
もうすぐでこの痛みもなくなる。
そうして歩いているうちに、音の根源である川にたどり着いた。
その川は流れが速く、とても深く思えた。
「死んだらどこに行くのか、確かめてみよう?」
どうせ死ぬのなら早めに、痛みを終わらせるために。
少女と少年が川に飛び込む。
流れに乗って、沈んでいく。
もう、服が重くて上がることはできないだろう。
命は尊い。なのに何故、何故死ななければならないのだろうか。
せっかく、あの地獄から逃げ延びたのに……。
あの"地獄"から……。