やれやれ系主人公はバレンタインに泣きを見るのか?
「ロベルト様!これつまらないものですけどどうぞ!」
「ロベルト様!これ私の実家が売り出している高級菓子なんですけどどうぞ!」
「ロベルト様!これ…」
「次期当主はモテモテだな。」
ロベルトに群がる女子たちを見て男子たちが羨ましそうに呟く。
そう。今日はバレンタイン。昔この日になにか感動的な出来事があったのだ。
それからこの日はバレンタインとして好きな人にお菓子を贈るという風習が生まれた。
「まったく、羨ましいぜ。」
男子生徒が呟く。
「そういう男子たちにもお菓子があるよ〜。」
女子三人が彼らにそれぞれ派手な袋に入ったお菓子を手渡す。
「うひょお!いいのか?」
男子は皆喜んでいる。
「やれやれ、こんなイベントにうつつを抜かすとはね。」
オリヴァーは皆にわざわざ聞こえるくらいの声を出す。
一瞬教室内の空気が悪くなる。
「僻んでるの?」
ナジミーが後ろから声をかける。
「そんなことはない。こんなくだらないイベント如きでワイワイ騒ぐなんて子供じみた奴らに呆れてるだけさ。」
オリヴァーは頬杖をつく。
「そう。私もあげようと思ってたんだけど、バレンタインが今日なの完全に忘れてたの。ごめんね。」
「ナジミー?何を言っているんだ?僕は別にくだらない駄菓子なんて欲しくないんだが?」
「私がちゃんとカレンダーを見ていればオリーが卑屈にならずに済んだのに…」
「別に卑屈になどなってないが?というか、周りの奴らが笑ってるからやめてくれないか。」
「オリー、明日なにかあげるから臍を曲げないで。」
「別に曲げてないが?というか、駄菓子など俺の魔術でいくらでも生み出せる。わざわざもらわなくてもいい。」
そう言うとオリヴァーは机の上に虚空からバラバラと砂糖菓子を生み出す。
「オリー?それ寂しくならない?」
「ならないが?」
「そうだ、オリヴァー君も、毎日面白い幻術見せてくれてありがとうね。」
そう言って数人の女子が様々なお菓子を彼の机の上に置いた。
「いや、別に…ありがとう。」
ナジミーの恐ろしい気配を感じて素直にお礼を言う。
「まあいい。風習通り今日もらった分はまた今度返すよ。やれやれ、面倒ごとが増えたな。」
オリヴァーは気だるげに答えた。
「オリヴァー君、すぐ調子乗るね。」
女子たちは笑いながら去っていった。
「今日もらった分はちゃんと返さないとな。」
オリヴァーはなジミーに向かってもう一度聞こえるように言う。
「わかったわよ。」
ナジミーは苦笑いした。