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6.

 体中傷だらけで魔力も体力も一割を切ったセイブンにはなすすべもない。



「くっ! 畜生!」



 セイブンは死を覚悟した。それでも笑って攻撃を放ったサルク・リバーを睨みつけ続けるのは男の意地のようなものだった。しかし、その意地を込めた顔が驚愕に変わった。



「そ……そんな、ヘルメイト!」


「ぐ、ぐふっ!」



 なんとヘルメイトがセイブン庇って骨の槍をその身で受け止めたのだ。その結果、ただでさえ危険な状態にあったヘルメイトは、両肩を貫かれてしまったのだ。そして、そのまま倒れ込み意識を失った。



「へ……ヘルメイト、そんな、そんなっ!」


「ちっ、殺す順番が変わりましたか」



 意識を失って倒れてしまったヘルメイト、最悪死んだのかもしれない。目の前で戦友がそんな目に遭ったセイブンはそう思った。



(アンゴール王国は……滅んだ……俺達、俺が、間に合わなかったから……そのせいで、多くの人々が……そればかりか、ヘルメイトまで……! 俺が、俺が、俺が! もっと、強ければ! もっと、力があれば!)



 セイブンの心にかつてない激情が生まれた。同盟国アンゴール王国を救えなかった悔しさ、一国を滅ぼした大元帥に対する恐怖、二人して一人の大元帥に翻弄される屈辱、戦友を傷つけられた絶望、そして何より無力な自分自身に対する激し怒り。



「うおああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」



 あらゆる感情がセイブンに限界を越えさせる。それは、無いはずの力で立ち上がらせ、かつて師匠から受け継いだ聖剣を強く握らせて構えさせるほどに。そして、それが奇跡を起こす。聖剣の覚醒を促すほどに。



「なんだ!? 聖剣が、熱い?」


「な、何だ!? 奴の手元の聖剣が輝いている!?」



 セイブンの握る聖剣が光りだしたのだ。まるで、セイブンの激情に呼応するかのように。そして、セイブンにも変化が起こる。



「聖剣から、力がみなぎってくる……! これなら戦える!」


「何!? このタイミングで覚醒したというのか!?」



 セイブンは立ち上がり、聖剣を構える。そして、失ったはずの魔力が戻り、そのまま聖剣に込めたのだ。反撃のため、逆転のため、倒れた戦友のために!



「くっ! 骨魔法―――」


「させん! 『聖剣ファイヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』



 聖剣から放たれるは魔法の炎。セイブンは幾度も聖剣を触媒として魔法を使ったり、魔法を纏わせた聖剣で戦ってきた。ただ、今放たれた『聖剣ファイヤー』は今までの比ではなかった。それはまるで巨大な炎の剣となり、サルク・リバーを一気に飲み込んだのだ。



「うぎゃあああああああああああああああああああ!?」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」



 骨魔法を繰り出す暇もなく、聖剣の炎に焼かれるサルク・リバーの絶叫が響く。それでもセイブンは一切の躊躇などしない。相手は魔王軍大元帥、それぐらいしなければならない相手だとこれまでの戦いで理解しているし、サルク・リバーの非道な行いも許せないのだ。アンゴール王国の王都の人々の全てを、誰一人残さず殺してしまった非道をセイブンは許せなかった。



「うらああああああああああああああああああああああ!!」



 聖剣の覚醒により魔力と体力がいくらか回復したセイブンは、残っている全ての力をぶつける。



「こ、こんな……この、わたし、が……まっ魔王様ああああああああああああああああああぁ…………」



 覚醒した聖剣の力を前に、魔力と体力が二割しか残っていなかったサルク・リバーはなすすべもない。抵抗することもできず焼き尽くされていった。



 戦いが終わった後、人類側の援軍が駆けつけてきた。そこにあったのは、滅ぼされたアンゴール王国の王都の前で満身創痍の状態で倒れる二人の勇者だけ。激戦をしたと思われる跡があったように思われたが、戦っていたと思われる魔族の姿は無かったという。


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